3月12日の朝日新聞の「教育」のコーナーに、大切な人を失った経験をした人や自殺予防教育に取り組む高橋聡美さん(56歳)が紹介されていました。

 

 「グリーフ」は悲嘆だけでなく、愛惜や怒りなどの複雑な感情を含みます。子どもは、周囲からの圧力などにより自ら感情にふたをしてしまうことがあります。

 

「さとみ先生、ここに来ると大好きなパパのことが話せるの。」高橋さんは子どもに安心感を与え、子どもの思いや感情を吐露する「場」を提供しています。

 

 また、学校などに出向いて生きづらさを感じている子どもたちのSOSの受け止め方やセルフケアについて伝え、自死予防の啓発に努めています。

 

 活動の原点は、看護師時代の経験と父親との関係性にありました。看護師の臨床の経験から予防的な取り組みの必要性に気づき、自殺予防教育や震災遺児の支援に取り組むようになりました。

 

 そうした中、自分の中にある「生きづらさ」の原因が父親にあることに気づきます。父親は、戦争で父を亡くし母子家庭で貧困に苦しみ、アルコール依存になっていたからです。震災で親を亡くした子を前に「父のような苦労をさせてはならない」と決意を固めました。現在、高橋さんの支援を受けた震災遺児たちがボランティアとして高橋さんの活動を広めているそうです。

 

 今、生きづらさを感じる子どもたちも増えています。春香も思うように生きられなくなった時、何度も「死にたい」と叫びました。家族全員で抱きしめて受け止めることしかできませんでした。もし、専門家の助言があれば、家族の負担は少し軽くなっていたかもしれません。こうした支援の仕組みが広がっていくことを願っています。