1月17日の毎日新聞「水説」のコラムには、東京で訪問歯科クリニックを営む萩野礼子さん(46)が、訪問歯科医を目指したきっかけとその後の経緯が紹介されていました。

 

 萩野さんは、高校2年生の冬に阪神大震災を経験します。神戸市須磨区の自宅で被災しますが、自宅は無事であったため、食事を配るボランティアに参加します。弁当をもらっても途方に暮れるお年寄りに気づきました。早朝の地震のため、入れ歯を持ち出すことが出来なかったのです。2月に家族でよく行ったレストランでポトフを注文しました。一匙のスープが心を温めました。「食べることは人を元気にするんだ」と歯科医師になる決意を固めました。

 

 大学病院で経験を積み、41歳で訪問診療をメインにしたクリニックを開業します。その人が何を食べ、何に困っているかを知るには、自宅で診る方がよいと考えたからでした。

 

 発作によって精神が錯乱する中でも、複視によって片目に眼帯をしていた春香もシュークリームを食べることで生きている価値を再認識することができました。「食べることは、生きること」です。

 

 被災者の皆さんに、温かい食べ物が届くことを願わずにはいられません。