闘病記『春の香り』は、春香が亡くなる2020年12月20日までのことが書かれています。それは、「記録に残して」という春香との約束であり、「人の役に立ちたい」という春香の願いでもあったからです。

 

 その後のことは、皆様にお伝えしてきませんでしたが、7月22日の朝日新聞「声」の記事を読んで、春香の骨上げの風景を思い返してしまいました。

 

 「お母さん半世紀の間ありがとう」と題された東京都の吉田浩二さん(52歳)の投稿には、今年5月に最愛の母が亡くなったことへの悲しみや深い母への愛情、感謝の念が綴られていて胸を打ちました。

 

「ついさっきまで握っていた手が、最期を迎えて、冷たく硬くなる。棺に入れ、炊きあげられて骨になり土にかえる。」頭では分かっていても心が受け入れられないと述べられていました。

 

 春香の遺体はエンバーミングを施し、化粧をして、春香のお気に入りの服を着させました。最期の別れの際にも拭いても拭いても涙がとまりませんでした。火葬が終わり、春香の骨上げの際、春香の頭蓋骨には手術の痕がはっきりと残っていました。「よく頑張ったね。」と自然と声が漏れると、再び涙がとめどもなく溢れました。

 

 そんな生前の春香の頑張りが書いてある『春の香り』。この夏休みに、春香の同世代の中高生の皆さんにも読んでいただけたら嬉しいです。