※あくまでも趣味で書いているだけなので、文章に誤字や脱字、文の重複などがあります。ご了承ください

 

 

魔法のドリンク屋四つ葉④

登場人物:三条心(さんじょうこころ)四つ葉の店主。

       三条津希(さんじょうつき)心のお姉ちゃん。

 

「心、起きて!ねえ目を覚ましてよ!」

津希の大きな声がカウンターに響く。津希は心から夢の神様に会いに行くので手伝いにお店に来てと言われて来たものの、こんな状況だとは思いもしなかった。心はたぶんお客さんの身代わりとして呪いを受けたのだろう、ピクリとも動かずに二階の心の部屋のベッドに横たわっていた。

「お店の看板は…出さなくていいわね。そうだ、学校の先生を呼んで助けてもらった方がいいかしら」

津希がそうつぶやいた時、お店の方からカランコロンというベルの音が鳴った。

(お店がやっていないのにお客さんが来ちゃった!?)

慌てて一階のお店の方に行くと、スーツを着こなした30代くらいの女の人が立っていた。

「すみません、今日はお店をやらないんです」

津希が申し訳なさそうに言うと女の人は優しく笑った。

「私は三条さんのクラスの担任をしているのよ。あなたがお姉さんの津希さんね?」

「そうですけど、なぜ私のことをご存知なんですか?」

「よくね、三条さんからお姉さんのことを聞いているのよ。優しいって。それからよく手紙のやり取りをしているということも聞いているわ」

津希はそのことを聞いて急に恥ずかしくなった。

(ずっと厳しいお姉ちゃんだって思っていると考えていたけど、優しいって思われていたんだ)

その気持ちに気づいたのか、先生はこれ以上何も言わずにドリンクを作り始めようとしていた。

「待ってください!私もドリンクを作りたいです」

「え、でもドリンク使いが作るドリンクは特別な魔法があるから…」

きょとんとしている先生の言葉をさえぎって津希は言った。

「ドリンク魔法なら、使えるようになっています。よくその日に習ったことを手紙で教えてもらうんですけど、その魔法が必要に感じたので詳しく調べたんです」

「すごいわね!」

先生は津希の言葉に感心しているようにそうつぶやいた。

「ねえ、よかったら津希さんもドリンク使いを目指してみない?きっと、立派なドリンク使いになれるわよ」

一瞬答えに困ったものの、

「ごめんなさい、私は心みたいに頑張れないと思うので」

ときっぱり答えた。

「そう…」

先生は少しがっかりしているようなそぶりを見せたが、気持ちを切り替えたようにパンっと手を叩いた。

「さて、ドリンク作りを始めましょう。津希さんも手伝ってくれるなら心強いわ」

「はい!」

津希は元気にそう答えると、さっそく魔法の呪文を唱えた。

「アタ・トゥ・アドリンク」

すると、津希の頭の中にまるで文字が流れるように次々と浮かんできた。

[ドリンクの材料・・・チューリップの花の蜜を2滴、林檎を1つ、マンゴーを1つ、温めた牛乳を少量]

「津希さんは林檎を切る作業と牛乳を温める作業をお願い」

「分かりました」

津希がもう1度頭の中で材料を確認すると、作り方まで説明があることに気が付いた。

[作り方・・・林檎を細かく切って、マンゴーとミキサーにかける。次に牛乳を温め、そこにチューリップの花の蜜を2滴入れる。最後にカップへ全て注いだら完成]

マンゴーとミキサーにかけるのならば先に林檎を切ってしまう方がいいかもしれない、という考えまで頭に浮かんできた。

ドリンク魔法のおかげなのだろうか、普段あまりやらないような作業もスムーズにこなしていくことができ、完成はあっという間だった。

最後に、調理したものを全てカップに注ぐ。トロトロ、サラサラとカップに流れていく様子はいつまでも眺めていられるくらい落ち着くようなものがあった。

ピチョン、という音がしてやっと最後の1滴がカップに落ちた瞬間、津希は声では表せないような不思議な心地になった。作り終えたことへの達成感や安心などのいろいろな気持ちが心の中で混ざり合う。そんな、満たされた気持ちは先生の1言で崩れていった。

「このドリンクを心さんに飲ませてあげなくちゃね」

(そうだった。心は今、倒れているんだった。)

津希は気持ちを切り替えると、心が寝ている2階へドリンクを持って行った。心の部屋に入ると、勉強でもしていたのだろうか、机の上にはノートやペンが散らかっている。もともと狭い部屋に、机や椅子・タンスを置いたのだからものすごく狭いはずなのに、今の津希にとっては広すぎてむなしく感じた。倒れて力が抜けているせいか、口を小さく開けて寝ている心に一口一口、スプーンですくってドリンクを飲ませていく。

(心も、大きくなったんだな。私よりもたくましくなっているし。)

そんなことを考えながらひたすらドリンクをすくっては口へ運ぶ動作をしていると、とうとうカップの中身がなくなった。

「今日は、もう大丈夫よ。これから一週間このことを繰り返せばいいわ」

先生はそう言っているけれど、津希にとっては全然大丈夫に聞こえず胸が少しざわざわした。

(大丈夫、先生がそう言っているのだから、、、。)

ひたすら自分にそう言い聞かせ、津希は気にしないことにしたのだった。

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それから毎日先生がいらっしゃるようになって一週間、毎日同じことを続けていくと、だんだん心の顔色が良くなっていき、ついに七日目の朝が来た日。津希と先生で様子を見守っていると心がうっすらと目を開けた。

「心、起きたの!?」

津希の大きな声にビックリしたのか、心が勢いよく起き上がって眠たそうに目をこすりながら言った。

「ふわあ。お姉ちゃん、いつの間に来たの?、、、っえ先生もいらっしゃっていたのですか。声をかけてくれれば、しっかりとおもてなしができたのに」

「だって、心倒れていたじゃない。もう、めっちゃ心配したんだから!」

半分涙目になっている津希を見て、心はやっと今までに起こったことを思い出したみたいだた。

「心配かけてごめん」

心はうつむいてそう言うと、大事なことを思い出した。

「先生!私の試験はどうなったんですか!?」

「そういえば、今日が結果発表の日だったわね。もちろん、合格よ」

あまりにも先生がさらりと言うので、心も津希も気が抜けてしまいました。

「おめでとう、心さん。本当は午後からだけれど、早速卒業式を始めてしまいましょうか」

「えっどういうことですか?」

「心、あのね。いつ心が目覚めるか分からなかったから今日まで学校はお休みにしていたの。ごめんね、卒業式に出席させてあげられなくて」

すると、心の顔が少し嬉しそうになりました。

「学校だとお姉ちゃんに見てもらえないからよかった」

そうつぶやいたのが聞こえて、津希はほっとしました。

「髪の毛が乱れているから直すね」

津希は、ベッドから起きて立ち上がった心にそう言いながらシンプルな黒いゴムで髪の毛を1つにまとめた。そのまま先生の前に立つ心を後ろからそっと見守る。

「三条心さん。ドリンク使いの資格を取得し、見事ドリンク使い育成学校を卒業したことをここに証する。おめでとう!」

先生から礼儀正しく受け取った後礼をすると心はとても嬉しそうにしばらく賞状を眺めていた。

「心、よかったね。卒業おめでとう」

「ありがとう。お姉ちゃんのおかげだよ」

そして、と心は先生の方を振り向いて続ける。

「先生もありがとうございました。本当に、最後までお世話になりました」

「心さん、あなたの成長がこうして見られて良かったです。これからも、風のうわさであなたのことを聞けることをとても楽しみに待っていますよ」

先生はいつも通りの優しい笑顔でそういうと移動魔法の呪文を唱えて戻って行った。

「心、これから新しいお店をやるんだよね」

「そのつもり。どこかいい場所があるといいんだけど」

「なら、私に任せて!早速いい場所を探したいからお店に来てよ」

「速くない!?別にいいけどさあ」

2人は優しく手をつなぐと移動魔法の呪文を唱えた。

「アタ・トゥ・リバイタン」

誰もいなくなったお店に、優しく声が響いた。終わり