松本さんは著書「遺書」の中で、この時のやすしさんを痛烈に批判していました。

この映像には無いようですが、「チンピラの立ち話やないか。」と言われたことに恨みを持っており、「あの時殴っておけばよかった」とまで書いています。

「チンピラの立ち話聴いたら、おもろかった。それでええやないか!」。

 

松本さんの表現の印象では、やすしさんにえらく怒鳴られて、その勢いに負けて大島渚監督はダウンタウンに票を挙げなかったみたいな話だったと思います。

でもその映像を見ると、そんなに怒っているように見えませんね。どちらかというと諭しているよう見えます。

「笑いには、良質な笑いと悪質な笑いがある。君たちはこれが新しい笑いと思っているかもしれないけど、この悪質な笑いの漫才は良くない」と。

テレビで何度かこの時の事を喋っていましたけど、悪質な笑いを指摘されたとは言ってなかったと思います。

 

松本さんは多分笑いの中に「良質な笑い」と「悪質な笑い」があり、

「悪質な笑い」は表現すべきではないのだという事が理解できなかった。

「おもろかったらそれでええやないか!」という声が今にも聞こえてきそうです。

だからその後の「ごっつええ感じ」にも悪質な笑いがふんだんに盛り込まれていました。

 

今、松本さんの評価は一連の報道によってがらりと変わってしまいました。

文脈が変わるってやつです。

今までは笑いの文脈で見ていたけど、あの極端に毒々しく、暴力的な表現は松本さんの本質だったのねと。

 

私も「ごっつええ感じ」は好きで見ていましたけど、時折不快なコントがありました。

私が覚えているのは、夕暮れ時に2匹のかわいいぬいぐるみがかわいらしい声で会話をしていると、1匹が急に血を流して倒れます。銃で撃たれたらしい。そしてすぐにもう1匹も倒れてしまいます。するとおもむろに猟銃を持った東野さんがやってきて、「晩飯が出来たぞーい」などと言って2匹を担いで去っていくのです。これ笑える?

 

 

横山やすしさんの死期を早めたと言われた「やすしくん」。

当時から笑えませんでした。

 

だれか「ひとしくん」をやればいいのに。笑えなくてもいいよ。