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球場の名称を決める「ネーミング・ライツ」


(mlb.jp  2014/06/20 13:09)からの転載記事

 メジャーリーグの球団が本拠地としている30球場のうち、2014年の時点でネーミング・ライツ(命名権)の契約を交わしている球場は20を数え る。2014年2月にはテキサス・レンジャーズが保険会社と契約し、球場の名称を「レンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントン」から「グローバルラ イフ・パーク・イン・アーリントン」と変更した。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙のデビッド・ビダーマンによれば、メジャー・スポーツにおける最初のネーミング・ライツの契約は1973年だ という。食料品会社が権利を買い、当時はアメリカン・フットボール・リーグ(AFL)に所属していたバッファロー・ビルズの本拠地を「リッチ・スタジア ム」と名づけた。

 それよりも昔から、企業名や商品のブランド名を冠するという発想はあった。1953年にセントルイス・カージナルスのオーナーとなったガシー・ ブッシュは、球場名を「スポーツマンズ・パーク」から「バドワイザー・スタジアム」に変え、自身の持つビール会社の商品を宣伝しようと考えた。この案は ナ・リーグ会長に却下されたものの、ブッシュは球場を「ブッシュ・スタジアム」と改称し、それに合わせてブッシュ・バーバリアン・ビールを売り出した。

 ファミリーネームであれば、シカゴ・カブスの「リグリー・フィールド」のような先例があるので、問題にはならない。ちなみに、「リグリー・フィー ルド」は球団オーナーの名前からつけられた名称で、現在でもネーミング・ライツの契約を結んでいない10球場の一つだが、オーナーはリグリー・チューイン グ・ガムという会社を経営していた。

 メジャーリーグでネーミング・ライツ時代が幕を開けたのは1995年だ。この年にコロラド・ロッキーズの本拠地としてオープンした球場は、ビール 会社とそのビールの名前をとって「クアーズ・フィールド」と命名された。以降、ネーミング・ライツの契約は増加の一途を辿っている。

 なかには、企業の事情によって球場名が変わることもある。ヒューストン・アストロズの本拠地は2000年に「エンロン・フィールド」としてオープ ンしたが、30年間のネーミング・ライツを持っていたエネルギー会社が2001年12月に倒産したため、「アストロズ・フィールド」と名乗ったネーミン グ・ライツなしの数か月を経て、2002年6月より「ミニッツメイド・パーク」となった。また、同じ年にオープンしたサンフランシスコ・ジャイアンツの本 拠地は、企業の買収に伴い、「パシフィックベル・パーク」「SBCパーク」「AT&Tパーク」と改称を繰り返している。

 現在、メジャーリーグの球団が本拠地とする球場のネーミング・ライツを持つ企業は、金融業(銀行など)と飲料メーカー(ビールやジュースなど)が 5社ずつで最も多く、他は保険業が4社、小売業と通信業(携帯電話など)が各3社という内訳になっている。小売業に関しては、それぞれディスカウント・ス トア、ネット通販、ペット用品販売で、業務内容に共通点は少ない。

 契約内容は、マーケットの規模や締結の時期によって異なる上、公表されていないものも多いが、ニューヨーク・メッツが本拠地とする「シティ・ フィールド」の20年で計4億ドルという破格の契約を除くと、だいたい期間は10~30年、年平均は100~750万ドルに収まっている。20年で年 300万ドル前後といったところがボリューム・ゾーンだ。

 今後も、ネーミング・ライツの契約は増えていくだろう。オークランド・アスレチックスの新球場計画はなかなか前進しないものの、すでにネーミン グ・ライツの契約はネットワーク企業から取りつけており「シスコ・フィールド」と名づけられることになっている。アトランタ・ブレーブスも、2017年に オープンする新球場のネーミング・ライツを売りに出す予定だ。

 ワシントン・ナショナルズとマイアミ・マーリンズが、ネーミング・ライツなしの「ナショナルズ・パーク」と「マーリンズ・パーク」でプレーしてい るのは、好条件の契約を待っているに過ぎない。レンジャーズは2007年に「アメリクエスト・フィールド」と名づけていたネーミング・ライツの契約を解消 し、新たな契約を得るまで、ネーミング・ライツなしで7シーズンを過ごした。

 ただ、30球場すべてがネーミング・ライツの契約による名称になることは考えにくい。仮に、ボストン・レッドソックスの「フェンウェイ・パーク」 とカブスの「リグリー・フィールド」が寿命を終えても、ロサンゼルス・ドジャースの「ドジャー・スタジアム」やニューヨーク・ヤンキースの「ヤンキー・ス タジアム」などがネーミング・ライツなしで残っている。全球場の3分の2の名称がネーミング・ライツの契約という割合は、北米4大スポーツ(MLB、 NFL、NBA、NHL)のなかでは最も低い。


(Text by Natsuki Une)



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