さて、U君の進路問題の話に戻りましょう。

点字紙リサイクルの就労体験がうまくいったU君、ご両親も含めて、卒業後はそちらの施設に通いたいという希望が出てきました。

確かに子供の頃から慣れ親しんでいるというか、唯一のコミュニケーション手段である点字を使った仕事なら、末永く続けて行かれそうだという期待が膨らんだのでしょう。

さっそく受け入れの調整がはじまった頃、私はU君より一つ年上で卒業してしまったので、その後の詳しいやり取りはわかりませんが、盲学校を卒業したU君は無事、リサイクル工房で働けることとなったようです。

私はその工房から時々、点字紙リサイクルのカレンダーやポチ袋などを買っています。その時にU君にも会うことがありますが、元気そうにしています。

U君の生き生きとした姿を感じると、盲ろうに限らず重度な障害者でも、本人の努力はもちろん、周囲の理解と協力があれば、必ず活躍できる場所はあるのだなぁと考えさせられます。

ただそうは言っても、運よくそういう人や環境にめぐり合うことができなければ、せっかくの才能も芽を出すことができずにうもれてしまうのです。

盲ろう者の6割以上が引きこもりという実態からも、それは明らかでしょう。

目が見えて、耳も聞こえる健常者からしたら、盲ろう者が引きこもりだと言っても、あまり問題を感じないというか、そもそも関心すらない人がほとんどでしょう。

むしろ、盲聾者なんだし、引きこもっていてもしょうがないと思っている人もいるかもしれませんね。

逆に、盲ろうの人々の中にも、人生をあきらめてしまって自分から引きこもっている人も多いことでしょう。

このあたりは、盲ろう者側も、健常者側も考えを変えなければいけない部分もあるように思います。