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蛍の光。
もう聞きあきたな。どうせ帰れないし。
うちの会社の終業時間を知らせる蛍の光。今年でもう十年も聞いてる。
でも、この曲聞いてすぐ帰ったことなんて一回もない。
ここからが本当の始まりだ。
私、ミスズ。32歳。使い古された表現でごめんだけど、お肌の曲がり角なんかとうに過ぎちゃってる。
もう少ししたら女の曲がり角も過ぎそうだ。
恋なんてもう4年くらいしてない。好きな人ももうできないし、ちょっといいなって思ったらもう結婚してるし。そういう年。だよ。
え、結婚?友達の売れ残り、もう二人くらいかな。独女会、そろそろ結成か!?って、集まるたびに話してるけど・・・シャレにならない。
子供産むこととか、いろいろ考えるけど、考えるだけ。日々生きてくだけで精一杯で、それどころじゃないし。そもそも恋に冷静になっちゃうし。ていうか、・・・恋ってなんだっけ??
あ、仕事しなきゃ。また妄想しちゃったよ。
「・・・ミスズさん」
う、こいつ苦手だよ。いっつもメガネに猫背でさ、後ろになんかとりついてるんじゃないかっていう、くらぁいオーラ。ホントに25歳か?誰かが面白いこと言ってみんなが笑ってんのに、絶対笑わないんだよ。
一回笑ってるの遠くで見たことあるけど、その時一人だったし。こわっ。下の名前なんだっけ?全く思い出せない。
「なんですか?」
・・・思わず敬語になっちゃったよ。
「あの・・これ、次回の企画書です・・・」
「あぁ、はい。後で目、通しておきます」
・・・やべっ、また敬語になっちゃった。
「あと、・・あの・・・」
・・・あー!もっとはっきりしゃべれないのか!!
「ミナモトさんたちと話してたんですけど・・・今日、一時間くらいで残業切り上げて、・・前回の企画通ったお祝いに・・・飲みに・・・」
・・・もう限界だ
「打ち上げってことね!?わかった、あとでミナモトたちと話しとくから!」
・・悪いけど、こんなで時間とられてたら仕事終わんない。
「・・・・・・・・・はい。」
ちょっと言い過ぎたかな。「・・・」がちょっと多かったしな。後でちょっと謝っとくか、飲みの時でも。
ぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴぴ
アラーム音。一時間経ったな。誰かのケイタイ鳴ってる。
さて、飲みに行くかー!!
