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その時のレポートはこちら。
はじめに知っているようで、意外に知られていない国際映画批評家連盟賞について。
まず、世界約50カ国の映画ジャーナリスト&映画批評家で組織される国際映画批評家連盟(FIPRESCI)があり、日本は日本映画ペンクラブが加盟団体となります。
その各団体から推薦を得て、FIPRESCIの事務総長の承認を得たメンバーが各映画祭に派遣されるのですが、どの映画祭にも国際映画批評家連盟賞があるというワケではありません。連盟が協議したカンヌ、ベルリン、ベネチアなどの主要国際映画祭と重要とされる映画祭です。とはいえ審査員を招待するのは映画祭側なので、賞の価値を理解し、予算的にも余裕があるところでないと厳しいというのが現実でしょうか。
その代わりに審査員を務めた批評家は、自身の媒体で記事を執筆するのはもちろん、期限内にレポートを提出しFIPRESCIの公式HPで公表することが義務付けられています。批評と広報的な役割を担っていると言ってもいいでしょう。ちなみに日本では、東京国際映画祭を筆頭に国際映画批評家連盟賞を設けている映画祭はありません。
そして毎年1本、全メンバーの投票によって国際映画批評家連盟賞グランプリが選ばれます。9月にスペインで開催されるサンセバスチャン国際映画祭のオープニングで授賞式が行われ、2022年には濱口竜介監督『ドライブ・マイ・カー』が受賞しました。
⚫️濱口竜介監督が国際映画批評家連盟賞グランプリ受賞に感謝!サンセバスチャン映画祭
審査するのは各映画祭で異なり、金馬奨では全ノミネート作品の中から新人監督が対象です。
国際審査員の構成にも規定があり、3人以上9人以下で、それぞれ出身国が異なること。50回で筆者と共に審査員を務めたのは、地元台湾の批評家アルフォンセ・ペロケ、イタリア出身でベニス国際映画祭やカンヌ国際映画祭監督週間などのプログラマーを務めているパオロ・ベルトリン、フランス・リヨンのルイ・リュミエール国立学校で映画研究を行なっているエリーゼ・ドムナック、香港映画批評家協会副会長のセシリア・ウォン。筆者はパオロ以外は初顔合わせでした。
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ノミネート作は下記の9本です。
⭐︎チャン・ボールイ監督『志気/Step Back To Glory』(2013。台湾)
⭐︎フローラ・ラウ監督『越境/Bends』(2013。香港)
⭐︎アンソニー・チェン監督『イロイロ ぬくもりの記憶』(2013。シンガポール)
⭐︎ビッキー・チャオ監督『So Young 過ぎ去りし青春に捧ぐ』(2013。中国)
⭐︎チャーリー・ヤン監督『Christmas Rose /聖誕玫瑰』(2013。香港・中国)
⭐︎リョン・ロクマン&サニー・ルク監督『コールド・ウォー 香港警察 二つの正義』(2012。香港)
⭐︎シュイ・チャオレン監督『トゥギャザー』(2012。台湾)
⭐︎ヤン・リーナー監督『春夢 Longing for the Rain』(2012。香港)
俳優や歌手から初監督に挑んだ者がいたり、9人中4人が女性だったり、シンガポール作品もあって中華圏の広さを実感したりと、改めて振り返ってみても充実のラインナップ。
私たちは西門のIN HOUSE HOTELに泊まって、映画祭会場の一つである日本植民地時代の元ビール工場を商業・文化施設に甦らせた華山1914文化創意産業園区内にある光點華山電影館で鑑賞しました。
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というワケで私たちが選んだのは、香港で歌手として活躍しているジュノ・マック監督『キョンシー』。中国返還以降、映画産業にかつての勢いがなくなっていた香港で、1980年代のキョンシー映画にオマージュを捧げたジュノ監督に、期待を込めて授与しました。
金馬奨本体の授賞式は國父記念館で盛大に行われますが、国際映画批評家連盟賞の授与式は、本賞の前夜にリージェント台北ホテルで開催される金馬奨ノミネート作品・人が集うパーティーで。台北金馬映画祭の主席を務めていた侯孝賢監督を筆頭に、『グランド・マスター』(2013)のウォン・カーワイ監督とチャン・ツィイー、『郊遊<ピクニック>』(2013)のツァイ・ミンリャン監督とリー・カンション、シルヴィア・チャンetc...中華圏の映画人大集合です。
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そんな中で完全アウェーな無事に任務遂行。ジュノ監督も受賞を喜んでくれてホッ。
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気が楽になった筆者は、せっかくなので台湾料理を堪能させていただきました。
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あれから10年。
ジュノ監督はその後も歌手・俳優として活動しており、2010年には蒼井そらと共演した『復讐の絆 Revenge: A Love Story』に出演。また監督として、金城武主演『風林火山』を制作し、撮影も終えているようですが、公開が延び延びになっている模様。なんとか頑張っていただきたい。
そしてアンソニー・チェン監督は、今年の金馬奨でアン・リー監督らと並んで審査員を務めています。
審査員仲間の面々とも付き合いが続いており、映画学校で教師を務めているエリーゼは、山形国際ドキュメンタリー映画祭にフランスから生徒を引率しつつ参加。
セシリアは香港から台湾に家族と共に引っ越しましたが、変わらず香港映画界のために奮闘。本年度の東京国際映画祭ではトークイベントに登壇していました。
たかが10年。されど10年。
改めて、私たちは激動の時代を生きているのだなと実感します。