「終わりよければすべてよし」ということわざがあります。

 

 

 

 


これは、「ものごとは最後の結果さえよければ、その過程での失敗などは問題にならない。いろいろな経緯はあっても、最終的によい結末を迎えたときに、ほっとした気持ちで使われる」という意味です。

 

 

 

 


実はシェイクスピアの戯曲「All's well that ends well」のタイトルのフレーズでもあり、生活の中でもよく使われるフレーズです。

 

 

 

 

 

 

「終わりよければすべてよし」とはつまり、絶頂(ピーク)にミスや不運があったとしても、結末(エンド)がよければよいイメージを作ることは可能だということです。

 

 

 

 

 

 

  ピーク・エンドの法則とは

 

 

ものごとの判断基準には、もっとも感情が動いたとき(ピーク)と、一連の出来事が終わったとき(エンド)の記憶だけで、ある経験についての全体的な印象が決定されることを「ピーク・エンドの法則」といいます。

 

 

 

 

 

 

みなさんは「高校時代を振り返ってください」といわれたら、なにを思い出しますか。

 

 

 

 

 

多くの人は、文化祭などもっとも印象深いできごと(ピーク)や、受験や卒業式など高校生活ラストの思い出(エンド)を思い浮かべるのでないでしょうか。

 

 

 

 

 

その「ピーク」と「エンド」という2種類の記憶が、高校生活全体の印象に大きな影響を与えるのです。

 

 

 

 

 

たとえば、「文化祭がすごく楽しかった」記憶が「ピーク」として、「志望校に合格して最高にいい気分だった」記憶が「エンド」として残っている場合、だいたい「ものすごく良い高校生活だった」という評価になるはずです。

 

 

 

 

 

 

もちろん、悔しい思いや苦しい思いもたくさんしたはずですが、「ピーク」でも「エンド」でもない細かい記憶は、大まかな印象にほとんど影響を与えないのです。

 

 

 

 

 

 

反対に、「いじめに遭っていてすこぶる苦しかった」記憶が「ピーク」として、「受験に失敗して散々だった」記憶が「エンド」として思い浮かぶ人は、「くすんだ高校生活だった」という全部ひっくるめた評価を下すでしょう。

 

 

 

 

 

この場合も、3年間で起きたほかの楽観的なできごとは、「ピーク」でも「エンド」でもないため、全部まとめた評価にあまり影響を及ぼしません。

 

 

 

 

 

このように、過去の経験が「ピーク」「エンド」という2点で印象づけられる、という現象をパターンにはめたものが、ピーク・エンドの法則なのです。

 

 

 

 

 

  ピーク・エンドの法則の実験

 

騒音を用いた実験

2000年の論文では、騒音に対する不快感の変化が調査されました。

 

 

 

 

 

実験の流れは、被験者を2つのグループに分け、最初のグループにはむしずが走る騒音を大音量で8秒間聞かせます。

 

 

 

 

 

もう一方のグループには、最初のグループと同じ騒音を8秒間聞かせたあと、「いくらかまだ良い音」をさらに8秒間聞かせました。

 

 

 

 

 

その結果、やはり最後に「まだしも救われる騒音」を聞いた2つ目のグループのほうが、ひとつ目のグループよりも不快度が低かったのだそうです。

 

 

 

 

これも、ピーク・エンドの法則によって最後の「好ましい騒音」の印象が強く残り、結果的に全体の不快度が低くなったものと考えられます。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピーク・エンドの法則の例

 

 

たとえば、あるレストランのサラダに虫が入っていたとしましょう。

 

 

 

 

 

 

食事の最中(ピーク)に気分が晴れない思いをしたことは、どうしても記憶に残ってしまいますが、そのあと、退店するまでに店側がどんな対応をするかで結末(エンド)も変わってくると考えられます。

 

 

 

 

 

みなさんが今後また、店を利用したくなるようになるには、誠意ある謝罪はもちろんのこと、デザート1品サービス、次回の割引など、相応の対応が必要でしょう。

 

 

 

 

行列に並ぶ

 

人気の飲食店などに行くと、おいしい料理を食べるには長い行列ができています。

 

 

 

 

 

 

人気の飲食店なら少なくとも1時間、長いものでは2~3時間に及ぶことも珍しくありません。

 

 

 

 

 

しかし、せっかく2時間ものあいだ並んでも、おいしい料理を食べる時間はせいぜい10分程度。冷静に考えれば、とても不合理に思えます。

 

 

 

 

 

 

なぜ私たちは、たった10分間の楽しみのために、膨大な時間を行列に捧げてもいいと思えるのでしょうか。

 

 

 

 

 

じつは、そこにもピーク・エンドの法則が隠れています。

 

 

 

 

 

 

「長い行列に並んでおいしい料理を食べる」という一連の体験において、おいしい料理を食べている10分間はもちろん「ピーク」であり、同時に「エンド」にもあたります。

 

 

 

 

 

つまり、行列に並んでいるあいだの苦痛や退屈は、すべて最後の10分間によってかき消されてしまい、ほとんど記憶に残らないので、全体としては高い満足感を得ることになるのです。

 

 

 

 

 

 

実際にみなさんがおいしい料理を食べたときのことを思い出してみてください。

 

 

 

 

 

 

おいしい料理を楽しんでいる10分間の記憶は鮮明に思い出せる一方、並んでいたあいだの記憶は薄いのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

おいしい料理を食べた喜びがピークかつエンドの体験として残り、並んでいた時間に味わった苦痛を圧倒するため、「並んでよかった」といういい思い出だけが記憶に残るのです。

 

 

 

 

 

 

ピーク・エンドの法則の具体例は、日常のいたるところに見つけることができるのです。

 

 

 

 

 

ビジネスや人間関係においても、いろいろな局面で参考になることわざですね。

 

 

 

 

ピーク・エンドの法則の活用法

 

 

対人関係

 

 
 
 
 

ピーク・エンドの法則は、人に好ましい印象を与えたいときにも利用できます。

 

 

 

 

 

特に「エンド」の部分、つまり「別れる間際」の行ないに気を配ることが大切です。

 

 

 

 

 

なぜなら、どこを会話の「ピーク」だと捉えるかは相手しだいですが、「エンド」の印象ならばコントロールできるからです。

 

 

 

 

 

レストランの例でも述べましたが、店員が送り出すときに深々と頭を下げてくれると「心からおもてなししてくれているんだな」と誠意を感じ、その最後の印象が強く残りますね。

 

 

 

 

 

反対に、見送りがずさんだったり、無愛想だったりすると、「これまでの接客は作りごとだったのかな」と残念な気持ちになってしまいます。

 

 

 

 

 

別れ際は、その人の印象を大きく左右する、とても重要な場面なのです。

 

 

 

 

 

別れ際に良い印象を残すためのポイントを3つ

 

 

 

急いで立ち去らない

 

 
 
 
 

用件が終わったからといってすぐに立ち去ると、早く相手のもとを離れたいかのような印象を与えるため、「この場にいるのが我慢がならないのかな」と思われてしまいます。

 
 
 
 
 
別れるときには、帰るのがとても立ち去りがたいという様子を見せながら、最大限丁寧にあいさつをして立ち去るようにしましょう。
 
 
 
 

 

入り際は腰を低く、去り際は堂々と

 

 
 
 
 
 

別れ際には、できるだけどっしりと構えて振る舞いましょう。

 

 

 

 

 

 

相手が顧客や目上の人だと、ついおべっかを使い下手に出てしまい、弱々しい印象を与えてしまいがちです。

 

 

 

 

 

相手がどんな人であれ、帰り際にはきちんと胸を張り、上品な振る舞いを心がけましょう。

 

 

 

 

 

一方、相手と会って会話を始めるときには、警戒心を抱かせないよう、なるべく腰の低い立場を取るのがより良いです。

 

 

 

 

 

感謝の気持ちを伝える

 

 
 
 
 
 

言葉で感謝の気持ちを伝えます。

 

 

 

 

 

 

ただあいさつをして別れるのではなく、ちょっとしたことでもいいので、相手への感謝や褒め言葉を伝えるようにしましょう。

 

 

 

 

 

 

「相手や相手の会社などについての好きなところ」「相手の話で心を震わせたこと」などを具体的に伝えるのを奨めています。

 

 

 

 

 

 

「○○さんのファンになりました!」など、会話の中で感じた素直な気持ちを伝えることも効果的です。