気持ちに寄り添うこと

 

 

 

 

私があるセミナーに受講生として参加したとき、登壇していた講師のAさんから、とても印象に残るお話をうかがいました。

 

 

 

Aさんは以前、コンサルティング会社に勤務していたのですが、当時は就業規則に反して、こっそりバイク通勤をしていたのだそうです。

 

 

 

ですが、運悪くバイク事故でけがをして入院し、約1カ月間会社を休むことになってしまいました。

 

 

 

出社後、部長に呼び出されたAさんは、叱責されるのを覚悟しました。

 

 

 

就業規則を破った上に、1カ月も仕事に穴を開けたのですから、叱られても無理はありません。

 

 

 

 

 

 

ところが部長は、叱るどころか、Aさんに”救いの言葉”をかけたのです。

 

 

 

「お前も大変だったな」

 

 

 

それだけではありません。

 

 

 

「これで美味しいものでも食べろ」

 

 

 

といって、”退院祝い3万円”を渡してくれたそうです。

 

 

 

Aさんは事故の直後から、自分のミスを認め落ち込み、十分に反省していました。

 

 

 

部長は、Aさんの様子を見て、そのことがわかっていました。

 

 

 

ですから、ダブルパンチを食らうようなことはしませんでした。

 

 

 

猛省をうながすことよりも、”Aさんの気持ちに寄り添うこと”のほうが、Aさんの今後の成長につながると判断したのでしょう。

 

 

 

部長の心づかいに感服したAさんは、「もう絶対にバイク通勤はしない。二度と部長に迷惑はかけない。この人について行こう!」と強く決意したといいます。

 

 

 

折れた心を立て直してあげる

 

 

 

私も「この人についていこう!」と思った経験があります。

 

 

 

販売員時代のことです。

 

 

 

レジで、お支払い方法をクレジットカードの分割でお切りしたいところを、お客様のカードを一回でお切りしてしまったことがありました。

 

 

 

幸い、お客様は怒ることなく、「大丈夫ですよ」と許してくださいましたが、休憩時間を迎えても、私の心はざわついたままで、小さな心の痛みが残っていました。

 

 

 

 

 

 

休憩中のとき先輩は、同席していた後輩に、こんな質問をしたのです。

 

 

 

「今日は工藤さんがクレジットカードの切る回数を間違えてしまいました。ですが、

お客様はまったく怒りませんでした。なぜだと思いますか?」

 

 

 

後輩が、「工藤さんがミスをしても、お客様に誠意を持って対応したからだと思います」と答えると、先輩は私を見てから、

 

 

 

「その通りですね」

 

 

 

とやさしく頷いてくれたのです。

 

 

 

私は、あきらかにミスをしました。

 

 

 

それで私は、落ち込み、反省していました。

 

 

 

先輩はそんな私を見て、「この子はすごく反省しているな。原因を追究するよりも、折れた心を立て直してあげるほうが成長するはず」と察してくれたのだと思います。

 

 

 

ですから、私のミスを咎めるどころか、その後の私の姿勢を褒めてくださったのです。

 

 

 

私は、先輩の言葉に救われ、「この人についていこう!」と思いました。

 

 

 

先輩の「救いの言葉」を思い出すたび、今でも感謝の気持ちがあふれてきて、先輩のような女性になりたいと思います。

 

 

 

 

 

ミスをして落ち込んでいるときほど、声をかける必要があります。