【設問】契約更新のさい、地主から更新料の支払いを求められています。更新料は必ず支払わなければならないのでしょうか。また適正な更新料の算定方法はあるのでしょうか。

 

 【解説】

一借地契約の更新がなされる場合に、借地人から地主に対して、契約更新の対価として支払われる金銭更新料という。

更新料は、賃料の補充という意味をもつほか、争うことなく合意で更新することのできる利益の対価という意味をもちます。実際上多くのケースで、契約更新のさい、更新料の支払いが行われています。よって、地主は当然のこととして、借地人に対して更新料の

支払いを求めることが多いのですが、借地人としては必ず更新料を支払わなければならないのでしょうか。

  

 二  問題は、地主が借地人に対して、更新料を当然に請求できることが、商慣習ないし事実たる慣習として成り立っているかどうかです。判例の中には借地人に慣習に基づく更新料の支払いを認めたものもありますが(東京地判昭49・1・28)、最判昭51・10・1は否定しています。rf「東京都区内では、宅地賃貸借契約における賃貸期間の満了に当たり、賃貸人の請求があれば当然に賃貸人に対する賃借人の更新料支払い義務が生ずる旨の商慣習ないし事実たる慣習の存在は認められない」(判六民92条7」百選ⅱ65)。

    よって、借地契約の締結時に更新料支払いの特約が存在しない以上、借地人に更新料の支払い義務はありません、地主としては、契約の更新時に更新料の支払いを求めたいと考えている場合は、必ず契約書に更新料について定めておかなければなりません。

   rf 「第●条 (更新料)

     本契約が更新される場合(法定更新を含む)には、乙は契約更新がなされた日から1ヶ月以内に相当額の更新料を支払う。」

 

 三 なお、更新料支払いの特約がある場合に、借地人がその支払いを行わないときは、更新契約を解除できるかどうか問題ですが、更新料の支払いが更新後の賃貸借契約の重要な要素として組み込まれ、当該賃貸借契約の当事者間の信頼関係を維持する基盤をなしている場合は、更新料の不払いは上記基盤を失わせる著しい背信行為になるといえ、賃貸借契約自体の解除原因になると解せられます(最判昭59・4・20判六民622条後Ⅴ2」)。

 

 四 更新料の額   更新料の法的性格が一義的なものでないため、個々の契約によって事情が異なり、更新料の額について明確な基準を設けることは難しい。契約に至る経緯、契約の内容、地代、これまでの地代の改定状況等を総合的に勘案して決せられる。東京都などでは借地権価額の3ないし5%の範囲などと一義的に定められる場合もあり、紛争を未然に防ぐ意味はあると思われます。

    【参考】「借地借家の法律相談」(学陽書房)30頁