寧子と津奈木は同棲して3年。
もともとメンタルに問題を抱えていた寧子は鬱状態に入り、
バイトも満足に続かない。
おまけに過眠症のため、家にいても家事をするわけでも
なく、敷きっぱなしの布団の上で寝てばかり。
姉との電話やメールでのやり取りだけが世間との唯一の
つながりだった。
一方の津奈木も、文学に夢を抱いて出版社に入ったものの、
週刊誌の編集部でゴシップ記事執筆の日々。
仕事にやり甲斐を感じることもできない津奈木であったが、
それでも毎日会社に通い、ほとんど家から出ることのない
寧子のために弁当を買って帰る。
津奈木は寧子がどんなに理不尽な感情をぶつけても静かに
やり過ごし、怒りもしなければ喧嘩にすらならない。
そんな態度に寧子は不満が募るばかりだった。
だがお互いに自分の思いを言葉にして相手に伝える術は
持っていない。
ある日、いつものように寧子が一人で寝ていると、部屋に
津奈木の元恋人・安堂が訪ねてくる。
彼女は津奈木に未練を残しており、寧子と別れさせて
彼を取り戻したいと言う。
まるで納得のいかない話であったが、寧子が津奈木から
離れても生きていけるように、なぜか安堂は寧子の社会
復帰と自立を手助けすることになる。
こうして寧子は安堂の紹介で、半ば強制的にカフェバーの
バイトを始める。
当初は嫌がっていたものの、自分を受け入れてくれる
店の人たちへ寧子は次第に心を開き出す。
だがある日、些細な事がきっかけで、店を飛び出して
しまう寧子。
同じ頃、津奈木は入稿間際の原稿を
巡って上司と言い争っていた……。