正体不明のその男は、北緯38度にある朝鮮半島の
軍事境界線を飛び越えてソウルとピョンヤンを
行き来し、あらゆるものを3時間以内に配達する。
荷物は、離散家族の最後の手紙やビデオ
メッセージ。
北朝鮮製の煙草“豊山犬”を吸うことから、その男は
“プンサンケ”と呼ばれていた。
ある時、韓国に亡命した北朝鮮元高官の恋人
イノクをソウルに連れてくるという依頼が舞い込む。
いつものように北朝鮮に潜入したプンサンケは、無言のまま
イノクを連れ出すと、38度線へ向かう。
凍てつく寒さに耐えながら、裸で川を渡り、体に泥を塗って
身を隠す2人。
幾度も命の危険にさらされるうち、互いに言葉にならない感情を
抱くようになっていた。
しかし、無事イノクを引き渡したプンサンケは、依頼者の
裏切りによって拘束されてしまう。
彼らの正体は韓国の情報員だった。
“おまえは北と南、どっちの犬だ”。
卑劣な拷問にも決して口を割らないプンサンケに、韓国
情報員はある危険な提案をする。
それは、北朝鮮に捕らえられた情報員の1人を
救出する代わりに、イノクと共に国外脱出の
チャンスを与えるというものだった。
そんな中、亡命した元高官を暗殺するため、ソウルにいた
北朝鮮工作員が介入。
イノクに危険が迫る。
北と南の思惑に利用され全ての道が閉ざされたプンサンケは、
ある決意を秘め、韓国情報員と北朝鮮工作員を一人また一人と
密室に閉じ込めてゆく。
密室で対峙する北と南。
そこに投げ込まれた拳銃。
欲望、偽善、不信、憎しみが絡み合い、予測不可能な衝撃の
展開が幕を開ける……。
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