「おはよう!」


朝になり…リビングのソファで寝てた僕をまーなが起こしにきた。

まるで何もなかったかのように…。

昨夜の出来事を夢の中だったと思えばいつもと変わらない朝だった。

まーなの笑顔。洋風な朝食。テレビから流れるお天気や占い…。


でも、確かに昨晩の出来事は現実。

僕は一生懸命の作り笑顔をしながらも…かなりぎこちなかった。

ただ…まーなはいつもと変わらない。まったく。


一体何を考えてるの?思っているの?感じているの?ねぇ…まーな…。


僕にはサッパリまーなの心理状況を悟る事ができずに仕事へ…。

もちろん、ぎこちのない「行ってきます」の言葉を残して。

職場についてからも全然仕事が手につかずまーなの事ばかりが頭にあった。

明日は週末で仕事も休みだからまーなととことん話そうって思った。

今までも何だって二人で乗り越えてきた。今回だってきっと!


仕事が終わり、まーなの待つおうちへ一直線。

走った。久しぶりに本気だして走った。ハァハァって息切れしながら。

かなり汗だくだった。人にもぶつかった。転んだりもした。

僕は少しでも早くまーなに会いたかった。


「ただいま!」


いつも通り。いや、いつも以上に大きく元気な声で帰宅した。


…返事がない。

ある事が頭に浮んだ僕はなだれ込むようにリビングへ。


「やっぱり…」


置き手紙。僕はしばらく怖くて読めなかった。リビングで座り込んだままで。

1時間…2時間…やっとの決意で手紙を読む事にした。


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はるかりんぇ


お仕事おつかれさま。

ゴハンはテーブルの上です。温めて食べてね。

冷蔵庫の中にはフルーツケーキがあるから食後に食べてね。


ね、はるかりん…

あたし、やっぱりこのままじゃ嫌だよ。駄目だよ。

久しぶりに独りぼっちでベッド。淋しかったよ。そして…眠れなかったよ。

あたしには、はるかりんしかいない。愛してるのははるかりんだけ。

いつもそばにいてほしいの。体も心も。あたしのもの。あたしだけのもの。


誰にも渡さない。


だけど、あたしのこの気持ちは今のはるかりんには迷惑なのかな?

正直な気持ちを聞きたいけど恐いよ。もしはるかりんが男の子を好…。


でも。


はっきりさせてきて。


今の気持ちをメールの男の子に会ってはっきりさせてきてほしいの。

女の子のはるかりんとして…。

あたし今週末は一人旅行に行ってきます。色々考えたい事もあるし。

だから心配しないで。はるかりんは彼と会ってきてね。

どんな結果になるかわからないけど貴女からの連絡待ってます。


素直な気持ちでとか言っておいてこんな事いうのは卑怯だけど…

必ずあたしの所へ帰ってきて。お願い。


愛してます。

心から貴女を。


まーな

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2枚の手紙を読み終えたあと…単細胞な僕はなぜか元気になった。

てっきり「さようなら」って手紙だと思ってたから。でも「愛してる」って文字。

これほどこの時の僕にとって心強い言葉はなかった。


よし!!!


僕はすぐに携帯電話から直樹くんへメールをした。

誘ってもらってたドライブに行く為に。もちろん、彼に好意なんて持ってない。

ただ会って伝えるだけ。


「愛してる人がいます。」「結婚してます。」


って。


だけど…このドライブが僕の気持ちを混乱させるきっかけになるなんて…

そして…一人旅行中のまーなが旅先である出会いをしているなんて…


この時の僕にはまったく予想する事すらできなかった。