Unnamed story

この物語には、まだ名前がない。


名前はおろか、ストーリーさえも決まっていない。


何も決まっていないけれど、


一つだけ決めていることがある。


この物語には、必ず幸せな結末を用意しておくということ。



今の僕には、それしか決めることが出来ない。


まるで誰かが組み立てたドミノの最初の一つを倒すみたいな気持ちだ。


全てのドミノが無事に倒れきった時、


この物語には名前が付されるのかも知れない。



そう思って、


今日という個人的な2度目の記念日に、


幸せな結末に向かう最初のドミノを倒そうと思う。



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7番目の死

その写真家が亡くなったのは、冬の最期の朝だった。


それは、僕にとって7番目の死だった。


25年という人生の中で、

7人の死というのが多いのか少ないのかは分からない。


それまでの6人の死は、その度に僕を傷つけたし、

出来ることならばいつもこれでお終いにして欲しいと思った。


死はいつも突然僕を深く傷つけ、

やがてゆっくりと僕の中から消えて行った。

そして、後にはいつも諦めだけが残っていた。


けれども、春と共に訪れた7番目の彼の死は、

一つの季節が過ぎても、2度目の春が訪れても、

僕を諦めさせてはくれなかった。


眠れない夜に僕はよく彼のことを考えた。


かつて僕と酒を飲みながら話した時、

彼は写真の限界というものに絶望したんだと言っていた。


大学を卒業して本格的な写真家への道を歩み始めた頃、

彼は貪欲に世界を駆け回ったらしい。


彼は写真によって、

素晴らしい景色の中に自分を溶け込ませ、

それをファインダーの中に封じ込めようとしたのだ。


「気づくのが遅かったよ。そのことに気づくのに10年も掛かったんだ。」


「見上げれば自分の上に想像もつかないくらいの大きな美しさがある。

ミツヤさんは夢中でシャッターを切る。

何度も何度もシャッターボタンを押し、満たされた気持ちで家に帰る。」


それで?というような顔で彼は僕の話の続きを待っている。


「数日後、ミツヤさんの中にはまだその美しさが残っている。

そして、それをイメージしながら一枚一枚大切に現像をする。

でも、手元の写真には決定的な何かが足りない。」


「それが何か分かる?」と彼は訊く。


「大きさ。規模。」僕は確信を持って答える。


「凄いね、君こそ写真家になるべきだよ。

僕よりずっと素晴らしい写真家になれる。」と彼は言い、

「僕にはそのことに気づくまでに10年かかったんだ。」と力なく笑った。


「でも、気づいた。」と、僕は言った。


「もっと早くに気づくべきだったんだよ。君のようにね。」と、彼は言った。


「僕は気づいてなんかいないよ。ただ、頭で考えてそうだろうなと想像するだけ。

ミツヤさんだって、そんなことは想像していたんでしょう?

ただ、ミツヤさんは、それを乗り越えられると信じていた。」


「過信してたんだよ。若かったんだね、きっと。」と言って、残った






まるで彼の写真のように、時間軸を切り取られた哀しみの中にいるような気分だった。