第3芸能課のデビューが決まり、大喜びなのは子供達だけにあらず。あれだけのらりくらりと
した態度を取り続けていた部長や次長らも、Pを労うために居酒屋へ。余談ながらこのお店、
実在する事をTLから知りました。ただ、子供たちの扱いについてはPと上司らとでは齟齬が
あるようで、耐えかねたPはその場で言葉を荒げてしまいます。後日課長から大人にならなきゃ
やってけねーぞ。とたしなめられますが、これはPのみならず、本題であるありすの件とも
絡んできます。そう思えば今回のサブタイトル、これまでにない程重い意味を持つものだと
言えるでしょう。
先の酒席でもユニット名について語られましたが、大人の事情はさて置き、ユニット名を
U149とする事が発表されました!語るまでもなく皆の身長が149cm未満だからな訳ですが
皆成長期真っ只中!超えてしまえば引退か卒業、という誤解を生んでしまいます。
すぐにその誤解は解けるものの、デビューに向けて皆のテンションが上がる中、依然ありすは
沈んだ表情のまま…。ありすの様子がおかしかったのは10話のラストからでしたが、
お伝えしていますようにその伏線は1話の時点で張られていました。ここまでの間、とりわけ
一人一人のお当番回があまりにも明るすぎた為、俺はそれを完全に失念していたのです。
なので先日改めて第1話を見直した上で、ここから先を書いてまいります。
デビューが決まったことで、メンバー全員の保護者を交えた面談を行うことに。三者面談って
なんだか学校みたい。大事なお子さんを預かるからこそ、というPの心遣いが垣間見えますが
薫の言う通り、まさにPはせんせえ、だよなぁ。
その三者面談の期日がただ一人決まっていないありす。聞けばまだこの件を両親に話して
いない模様。話していないのか、話せていないのか…?両親が忙しいという事以外の理由が
ある様子も垣間見えました。恐らくデビューの件も…。ようやくその夜、面談の件はありすの
母親に伝わり、両親ともに来て貰えることとなりますが…。
そもそもこの面談において、ありすの両親はPとどんな事を話すのか、Pからどんな話を
聞かされるのか、何よりありすが今置かれている立場だとか、そういう事をありすから
一切聞かされていないように見えました。恐らくそのあたりは第1話の段階から何も変わって
いないのだと思います。面談の席において初めて、Pからデビューの件を聞かされた。
ここはそう捉えても間違いではないでしょう。
ここにいる筈のありすがいない!そのありすは晴らに面談に行くと言っていたにも関わらず…!
ここまでの流れだとこの場をすっぽかすようなありすだとは誰もが思わない筈。
面談の席にいる筈が、逃げるようにひとり雨の降る街を彷徨うありす。ここでのin factは、
まさにその心理を映しているように聞こえました(そのあたりは後述します)。
ありすを捜しに出る第3芸能課メンバー。7話でもそうでしたが、ここはまさに劇場版の再現。
可奈の時のそれと、非常に近しいモノを感じます。両親にとっても青天の霹靂だったでしょう。
ありすが辿り着いたのは配信ライブの為にみんなで作ったステージ。…っていうか、まだ
残ってたんだ…。ここで一人歌っていたドレミファクトリー、その歌詞通り、ありすは皆と
デビューしてステージに立ちたい。最早その気持ちに嘘はつけないところにいます。
されどその障壁になっているモノは何なのか。この場に辿り着いたPとのやり取りで、
漸くそれが明らかになっていきます。
やはりありすはデビューの件を話せていなかった。話すことで自分の夢を否定されること、
それで自分が嫌われてしまうことが怖かった。そんな事はないと返すPの台詞をカウンターの
如く適当な事言わないでください!と返すありすの言い分は正論だと思います。
恐らくPもそこまでありすの両親とは話していないと思われますから。
ここから続くありすの台詞はPにグッサリ突き刺さります。
じゃあ、どうして適当な事ばかり言うんですか!
大人のくせに!!!!
夢を諦める所なんて、見たくないから…
ここまで頼りないところも、カッコ悪いところも散々見せてきたP。ですがこの台詞に込めた
想いが今まで彼を突き動かしてきたのも事実。ありすを含む第3芸能課メンバー全員が、
その想いに応えるように今まで突っ走ってきたのもまた事実です。
幼い日々を思い出すありす。ここで賢治さん(余談ながら多くの岩手県民は宮沢賢治を
賢治さん、と呼びます)のよだかの星が出てきましたが、残念ながら自分にはその接点を
見出すことはできませんでした…(元々ないのかも知れませんが…)。
自分の前でPが涙を流した。その姿に圧倒されたのか俺なりに、一生懸命考えるから!という
台詞にも、いつもの夫婦漫才的なツッコミを入れる余裕もなかったありす。
程なく両親と第3芸能課の面々がこの場に駆けつけます。ありすの行く先は勿論母親のもと。
その晩、ようやくありすはデビューの件や将来の夢を両親に語ります。勿論反対などする筈も
なく、ありすの決めた道を応援することを約束するのでした。
橘ありすという子は学校の成績という一面のみならず、とても頭のいい子であり、それだけに
両親から見れば手のかからない子供だったことは想像に難くありません。それは両親にとって
有難い存在ではありますが、それ故に甘え下手な子供になってしまい、自分の事は自分でできる
「大人」に早くなろうとしていた。そんな中で次第に親子の会話は少なくなっていった。
第3芸能課に入り、レッスン漬けの毎日。デビューなんてずっと先の事だと思っていた。
しかし、ありすが思う以上にその時は早く来てしまい、多忙な上にお互いが遠慮する形に
なっていた現状ではそれを話す事はできなかった。ありすが言う通り、それを話すことで
両親に反対され、自分の夢を諦める結果を見るのが怖かった。ですが両親は、ありすが
何を考え、何をやりたいのか。それを話してくれるのを待っていたのだと思います。
ただ、母親自身もありすに嫌われているのではないか、それ故にありすと向き合うのが
怖かった、と言ってました。奇しくもありすと同じような事を考えていた訳です。
久しぶりに向き合ったありすは、第3芸能課での活動を通して驚く程の成長を遂げていた。
恐らくありすはデビューが決まったことで今まで以上に仕事が忙しくなり、学業が疎かに
なってしまう、という理由でアイドル活動を辞めさせられるのが怖かったのでしょう。
ですが両親も実際にPや第3芸能課メンバーと直に向き合ったことで、ここならありすを
任せられると判断したでしょうし、今のありすならそれで学校や勉強を疎かにする事など
ないとも判断したのでしょう。何より家中にありすの写真を飾っている。そんな家庭なら子供を
想わない両親でいる筈などありません。もっと甘えていいし、もっと甘え上手になっていい。
第3芸能課での日々は、それをありすに気付かせてくれたと言っていいでしょう。
…ここまで見てきて、そして色々な事を書いてきて、実生活では二人の娘の父親である自分(桜井)。
本当に自分の子供らとしっかり向き合えてきただろうか?とも思ったりしました…。
ここまでが、まさにin factの歌詞とリンクした橘ありす像と言えるのではないでしょうか。
付け加えてありすがここまで、Pに夫婦漫才的なやり取りやツッコミをしていたのは、
この人ならある程度強い態度に出ても自分を嫌ったりしない、と潜在的に判断していた。
それ故両親に対してもできない(できなかった)ような態度を取っていたのかも知れません。
プロデューサー、ありす、でいいです!
…一夜が明け、ありすに大きな心境の変化が!ありす、と呼ばれる事に抵抗を抱いていた
嘗てのありすは姿を消しました。成長というべきか、ブレイクスルーというべきか。
子供っぽくたっていい、自分は自分のままでアイドルとして輝いていく。その決意を
感じさせるひとコマでした。これまでありすは精神的な意味でひとりぼっちだったと言えます。
ですが今はPも両親も、第3芸能課のメンバーもいます。そして大人の先輩アイドル達も。
困った時には皆を頼っていい。それを悟った今の姿が、先のin factと対になる形の
to you for meなのでしょう。そして、この2曲から描かれた今回のエピソードが、
アニメ版U149において描きたかった橘ありす像だったのかも知れません。
…いや、本当に長くなりました。最終回からだいぶ経ちましたが、多忙かつ疲労困憊の為、
掲載が大幅に遅れてしまいました。なおかつ今回はそんな中でも妥協のないよう、書ける事は
書いていきたいとも思いましたので…。次はいよいよ最終回。次も思う所は沢山あるので、
おつきあい頂ければ幸いです。それでは今回はこの辺で!今回もお読みいただき、
まことにありがとうございます。












