それから約1年後、私達は最後の大舞台への切符を掴むための試合を控えていた。
あれから一度も先輩とは会っていない。
「試合始まるよ?」
森「うん。」
試合がある度に私は無意識のうちに先輩を探した。もし今見つけることができたのなら迷わずに気持ちを伝える。
「ひかる?」
森「ごめん、集中する。」
今は恋愛なんかしてる暇なんてないって去年の先輩と同じ立場だから気持ちは痛いほど分かる。やっぱり私は諦めるしかないのかな
森「あ、」
そんな中、私は先輩を見つけた。応援席の中に座っている先輩を。もうこんなチャンス2度とないかもしれない、よし、この試合が終わったら告白しよう。そう決めて私は試合に挑んだ。
「今日のひかる凄かったね。めっちゃ気合い入ってたじゃん」
森「先輩が見にきてくれてるからね。」
「先輩って田村さんのこと?」
森「うん。」
「あっ、そういえばさ、田村さん彼女できたらしいよ」
森「え?」
「告白されてそのまま付き合ったらしい、一ヶ月くらい前かなぁ」
頭を殴られたかのような衝撃が私の心に走った。
どういうこと?先輩はもう誰かの1番になってしまったの?
納得ができなくて、先輩の元へ駆け寄った。
森「先輩!」
田「お疲れ様。いい試合だったよ」
森「彼女、できたんですか?」
田「…うん。」
森「彼女さんのこと好きなの?」
田「好きだよ」
ああ、終わった。この一年、本当は先輩に会う為に頑張ってきたのに。もしかしたら応援に来てくれるかもしれない、そうすればちゃんと気持ちを伝えよう。そう思っていたのにその結果がこれ?あまりにも酷すぎる。
田「インターハイ、頑張ってね」
森「もうこれっきりですよね。」
田「うん。ひいちゃんの気持ちを区切る為に今日会いに来たから」
森「好きでした」
田「うん」
森「本当はあの日、先輩のこと抱きしめて気持ちを伝えたかったのに」
田「うん」
森「ごめんなさい」
田「ひいちゃんも早く幸せになってな?」
森「……」
田「バイバイ」
これが先輩との最後の会話だった。
この先、私の知らない場所で私の知らない誰かと知らない顔して生きて行くの?
そんな不幸なこと今まで経験したことがないから、立ち直る方法が分からないよ。
本当に先輩にはもう会えないの?
奥歯をぐっと噛み締め悲しみに耐える。たった一瞬で私の人生を否定された気がして、おもわず笑みを溢した。
こんな終わり方が存在するなんて、思っても見なかったよ。
空っぽの心と共に、私は今日から生きて行く。
fin