自分の気持ちに嘘を付きたくない。


そう思うけど、私にとって何が嘘で何が本当なのか分からないままだった。


あの夏の日からずっと。そんな日々に終止符をつけたのは紛れもなく貴方だった。











〜8月〜








先輩達の夏が終わった。



その日の前日に振り返ってみようと思う。前日の夜22時過ぎ、私達は誰もいない大浴場の湯船に浸かっていた。













田「もうすぐ終わりだね」


森「先輩が居なくなるの寂しいです。」


田「保乃も寂しいよ、もっとひいちゃん達と部活したかった。」


森「でもこうやって先輩とお風呂入れてるの幸せです。」


田「…保乃も。」


森「……先輩。」


田「ん?」


森「私、先輩のことが…」


田「待って。」


森「っ、」


田「聞きたくない。」


森「…すみません。」


田「もう部屋戻ろ?」


森「はい。」












そう言って先輩は湯船から出た。月明かりに照らされて身体のラインが綺麗に映る。こんな姿、もう二度と見れないんだな。


先輩にとって私はただのメンバーに過ぎない。こんなことなら、恋なんてしなきゃ良かった。









ーーーーーーーーーーーーーーーーー











試合が終わり、帰りのバスで私達は1番後ろに座っていた。


無意識のうちに先輩は眠りながら私の指に自分の指を絡めている。どうにかこの気持ちを抑えなければいけないと思い私はそっと目を瞑った。


そうしている内にいつの間にか眠ってたみたいで、起きた頃には既に先輩も起きていて手も離れている。














田「着いたよ」


森「…そうですか。」


田「ひいちゃん、スマホ」


森「あ、落としてました?ごめんなさい」


田「いいよ。……じゃあ、お疲れ」


森「お疲れ様でした。」















いつもと変わらない様子で先輩は家へ帰って行った。



その日の夜、私は何気なく写真のフォルダを開いた。












森「え、」










そこには見覚えのない写真が1枚、私と先輩が恋人繋ぎをしている写真だった。どうしてこんな写真を?


もう、先輩の気持ちなんて私には分からなかった。

















田村side







帰りのバスでスヤスヤと眠ってるひいちゃんを見ると思わずキスをしてしまいそうで目線を下に落とした。



その目線の先にひいちゃんのスマホがあることに気が付く



私は考える間もなくカメラボタンを押し、繋いでいる手を写真に写した。この写真に気が付く頃にはもう私は何者でもない。



これでいいんだ。ひいちゃん、愛してたで?私にとって何が嘘で本当かは分からないけど、今はただひいちゃんだけを思ってる。













fin