私は貴方の沼に溺れていた。


残されたのは貴方を愛している私とそこに残る愛の証だけだった。


君との思い出にそっと蓋をしよう。


そっとじゃないと貴方への愛が溢れてしまうから。













その日はデートをドタキャンされて少し落ち込んでいた。









守「"体調が悪いから今日のデートはキャンセルでいい?ほんとにごめんね😭"」






れなはいつも絵文字をつけてくる。

そんな可愛げのある子だった。






藤「"分かった。夏鈴のことは気にせんでいいから早く良くなってな。"」






そう返信をしたものの、やはり恋人と言うだけあって彼女の容態が心配だった。


よし、コンビニでスポーツドリンクでも買って届けよう。


夏鈴を見れば、きっと喜んでくれるはず。


れなの喜ぶ顔が見たくて急いで財布とスマホを持ちコンビニへ駆け込んだ。






藤「よしっ、」






買い物を終えた私はれなの居るマンションへ向かった。


ピンポーン


インターフォンを鳴らす。しかし出てくる気配はない。







藤「れな?開けるで?」







ガチャッ


玄関の扉を開け、靴を脱ごうと目線を下に降ろした。







藤「は?」







そこには普段見覚えのない男の靴があった。

急いで部屋に駆け込む。






藤「れな!」


守「あれ、?夏鈴ちゃん。」







そこにはれなしか居なかった。


でも私には分かる。慌ててれなの首筋に顔を埋めると知らない男の香りとキスマークが付いていた。


れなの顔は火照っていて、服も下着しか身に付けていない。

ベッドの下にはれな以外の衣服も散乱していた。

きっと、急いで下着を付けたんだろう。左肩の紐が二の腕まで下がっていた。







藤「体調、大丈夫?」


守「うん。それより連絡してよ~びっくりしたじゃん!」


藤「ごめん…あれ、なんで下着なん?」


守「熱くて……夏鈴ちゃん、?どうしてそんな悲しそうな顔してるの、れなが居なくて寂しかった?」


藤「…」







ギュッ


下着のまま抱きつかれ胸の柔らかさが伝わる。

私はその真っ白な肌に涙を落とした。








守「泣かないでよ、」

藤「ウゥ、」







視線を横に向けるとクローゼットが目に入った。

その隙間から見える高身長の男。

バレてないと思ってるんやろうな。








藤「夏鈴のこと…好き?」


守「ん?大好きだよ。」


藤「じゃあ今から夏鈴に抱かせて。」


守「なに?今日はやけに積極的だね。」


藤「別に。」








れなを強引に押し倒し、身体中に噛み跡を付けた。

どう?クローゼットから覗き見する気分は。

見られているのを恐らく知っているれなはいつもよりも少し興奮しているようだった。







守「夏鈴ちゃん、っ、好きだよ?」


藤「…夏鈴も。」







お互いの舌が入り込み長い長いキスを交わす。


このキスも私の知らない男の唾液が混ざっていると思うと鳥肌が止まらない。


それでも彼女を求めてしまう。


夏鈴は馬鹿や。


彼女が果てる最後の最後。


私は彼女の鎖骨付近に思い切り噛み付いた。







守「っ、!!」








鎖骨からは血が滲み、さすがのれなも顔が歪んでいる。


いいんよ、これで。


この傷が一生消えませんように。


この先どんな男に抱かれようがその傷の呪いからは絶対に抜け出せない。


そしてこの過ちにいつか気が付いて一生の後悔をすればいいんや。


愛してるで?


この苦しさも全部引っ括めて貴方を愛してる。