🔶球団別採点 セ・リーグ 後編

🔶広島東洋カープ   85点


🔸大学NO.1投手を一本釣り

森下を(明治大)を単独指名で獲得できたのは朗報。
ただし、ワシの評価としては「毎年いる大学トップレベルの投手」という評価だけに、大幅な加点はない。広島に当てはめるなら、ノムスケよりの大瀬良といったところか。多少スペっぽいところも見受けられるし、東大相手に打たれたりするポカもあるので、隔年で8〜11勝が期待できるタイプといったところか。

それでも現状考えれば、このクラスの投手を確保できただけ十分だと思う。今年に関しては、上位で高校生にいっている余裕はないだけに、最適の指名であったといえよう。

🔸宇草の肩について考える

2位指名、宇草の1番の武器は「足の速さ」そして大学時代に磨いた「バッティング」。懸念材料は「肩の弱さ」。

Twitterでヤバめの外野返球の動画が出回って、一気に認知されだしたが、大学日本代表の合宿でのシートノックの方がヤバイのはあまり知られていない。(気になった方は検索検索ゥー)おそらく外野に回った時点で何らかのトラブルは発生しているものと思われ、それについて4秒ほど考えてみよう。

A・肩を壊している
B・イップス
C・元々肩は弱いからあんなもの

C説に則って擁護する人が見受けられるが、いや、C説が一番ヤバいから。改善の見込みないって事だからね。あの年で、ピンピンの健康体で、晩年の金本並の肩は一番ヤバイ。そして、あの年から遠投で肩が強くなる事はないのだから、その辺はスカウトが見ていない訳がない。

A説の場合、チームによって異なるとは思うが、試合前のシートノックでも捕るだけで返球はしないなどの措置を取ることが多く、痛めてる箇所を酷使してまで練習で無理をする事はあまりない。

すると、Bなのかな?という事になる。現状は確かにあんな感じなのだが、イップスは治る。治し方がある(らしい)。カープはそのノウハウを球団で持っているのかもしれないし、外部の有識者と繋がりがあるのかもしれない。とにかく、スカウトが「それでもイケる」と踏んだからこその2位指名なのである。

【蛇足】ちなみに、この高評価はワシの評価と同じで、韮澤も3〜4位で欲しいと言っていたので、今年はカープスカウトとのシンクロ率が高かったと言える。
※気になって調べたら、今年の1位〜4位まで全て尾形佳紀スカウトの担当だとか。そんな事ある?なんや、ワシはカープとシンクロしてたんじゃなくて尾形とシンクロしてたんか。尾形くん、よう覚えてるでー。神奈川では阿部真宏(西武打撃コーチ)と双璧のショートやったなあ。かたや日本最強打線を率いる一軍打撃コーチ。かたや「鈴木誠也」を発掘した有能スカウトか。ええなあ。物語は終わらんなあ。

それだけ、宇草の持つ絶対的なスピードと、左中間に長打も打てる打撃に球団が魅せられたという事であろう。今年1年埋まりきらなかった、丸の穴をこの選手で…という強い思いがあるのかもしれない。はたまたイップスを克服させて菊池の後釜に…と考えているなら、カープやばい。豪腕すぎる。守備力【UZR】は落ちても、宇草の打撃なら【WAR】ではプラスになるかもしれない。全部うまくいけば。たらればだけど。

🔸3位以降で高校生3名

3位で、本格派右腕の鈴木(霞ヶ浦)を、4位で内野の韮澤(花咲徳栄)を、6位で左腕・玉村(丹生)を獲得。

鈴木は同校OB遠藤のスケールアップ版という感じで、前例があるだけに育てやすいだろうし、韮澤はセカンド候補なのかな?はたまた小園の対抗馬として育てるのかは不明だが、シュアな打撃を活かしたユーティリティ性のある選手として獲得したのだろう。6位の玉村は儲けもの。「良くこの順位まで残っていた」というタイプで、ワシ的には入団時の河内のフォームを若干彷彿とさせると思っていただけに、広島が獲得したか…と一人感慨に耽るワシだった。

🔸その他

5位の石原(天理大)はよく知らないが、「強肩自慢の小柄な捕手」というトレンドに沿った捕手像の選手。捕手の人数を見ても、會澤の残留を見ても、年齢構成を見ても、坂倉はコンバート待った無しなのかもしれない。

育成の高校生2人はいずれも甲子園で輝いたタイプ。持丸も木下もまだまだポテンシャルの高さを全て活かしきれていないので、育成のしがいがありますね…といったところ。持丸獲りまで含めると、ますます坂倉がなあ…となる。

🔸総括
即戦力の1位2位と、3位以降で将来の有望株を確保し育成するというスタンスは明確で穴がない。

強いて挙げれば、左打者偏重であったり、内野がまだ薄いかなという点は改善されず。外国人補強は独自ルートで強いものの、FAでの補強は期待できないだけに、それだけドラフトにかかる比重が高くなりハードルも上がる。ハードルが高いだけに、及第点も上がってしまうのは致し方ないところ。

ただ、森下を確保できた事は後々大きいと思う。

🔶中日ドラゴンズ   80点


🔸3球団競合でNO.1スラッガーを獲得

直前に指名公言した、石川昂弥(東邦)内野手を、3球団競合の末に獲得。昨年から明確になっている地元出身者中心ドラフトの目玉という選手だっただけに、ここだけの評価を切り取れば満点といったところ。

補強ポイントとしても、将来的に4番を任せられるタイプの若手人材には乏しく、ポジションはどこになるか流動的な部分はあるものの、四年後あたりにはレギュラーを張っている可能性が高いトッププロスペクトの獲得はチームとして大きいし、ドラフトのあるべき姿として正しい。

🔸問題は2位以降
2位、橋本(大商大)は典型的な評価の上滑り型の投手で、変則的なフォームを駆使し1年目からそこそこの活躍は見込めるかもしれないが、将来性を考えると疑問符がつく。

即戦力左腕が圧倒的に不足する中、今年は2〜3位相当の評価も「まあ…」というところかもしれないが、ある程度早い指名順で望めた2位で確保したのはどうだろうか。これも地元(岐阜)出身選手で「どうしても欲しかった」という理由を考慮しても、同じ年齢の小笠原もいる中で、それよりも落ちそうな左腕を2位はいかがなものか。3位以降でも残っていた気はするのだが。

3位、岡野はすぐ使える便利枠。だが、年齢もそこそこいっているだけに使える期間も短い。ナゴヤドーム以外でも通用するタイプの指名も考えていかなければ、そこまでの投手陣で終わってしまうという考えも必要だ。

4位で大卒捕手の郡司を指名したが、なら2位で捕手行っとけよという話。2位の指名時点で、佐藤も海野も取り放題だった訳で。数はいるけど、帯に短し襷に長しの捕手陣だから苦労しているのに、もう一枚そういう系(打撃型はいないのかもしれないが)を増やしてどうすんの?と。本筋は石橋で、今いる捕手は全て石橋が台頭するまでの繋ぎ…とか考えているならわからんでもないけどなあ。もう今更加藤やら桂やら木下やらがブレイクするとも思えんしなあ。

5位岡林は未だに投手として指名したのか野手として指名したのかわからない始末で、地元(微妙な)二刀流下位指名の藤嶋パターンで味をしめたのかな?球団としては外野手、本人希望は投手というところか。

6位竹内は、ナゴヤドームなら輝くかもしれないなあという期待枠で、相当時間はかかりそう。

と、下位指名には両手を挙げて賞賛できない面がある。育成の松田も、モノになれば面白いが話題性重視(と将来のフロント人材)なのかなあ、と冷ややかな目で見てしまう。

🔸総括
1位は手放しで褒められるものの、2位以降の指名に疑問。特に外野の高齢化は深刻で、ヤクルトを笑えないレベルに達してきている。広いナゴヤドームで、そこそこ守備も頑張ってもらわなければいけないのに、若手有望株は滝野か伊藤?ぐらいしか名前が挙がらないとあっては厳しい。ベテランがボロボロになってから慌てて獲っても間に合わない。アルモンテ級のド下手レフトを(打力の関係上)今後も使わざるを得ないであろう事情を鑑みても、広いナゴヤドームの右中間・左中間をサバンナのように駆け回る、俊足の有望株の獲得は必須事項だ。

投手も同様。おためごかしの社会人投手でお茶を濁していても投手王国の復活はなく、(報道の通り)ホームランテラスでも設置しようものなら地獄絵図になる事請け合い。球威があって空振りの取れる、どこの球場でも、パ・リーグにも通用する投手を揃えていかなければならない。

ただし、石川の獲得があるからこそプラス20点とした。それがなければ、セ・リーグでは最下位の印象。

🔶東京ヤクルトスワローズ    90点


🔶3球団競合で超目玉奥川の獲得に成功

「奥川獲得」もうこれだけでプラス30点は確実。

向こう10年エースを張れる逸材を獲得。どう転んでも活躍している限りは引退までヤクルトに留まる事はないであろう選手で、三十路手前での移籍を考慮してもお釣りがくる存在であろう。後は、球界の宝だと強く意識して、1年目から使い過ぎないよう気をつけてもらうしかない。それだけは本当に怖い。

🔸2位以降も連続で即戦力投手を指名する攻めの指名

2位で、ハズレ1位級の日体大・吉田を、3位で創価大・杉山、4位で大商大・大西を、これでもかと立て続けに大卒の本格派右腕を指名した事は、投手陣大崩壊からの強い再建意識が感じられ、そこは評価できる。

3人を獲り、誰か1人できれば2人、すぐに使い物になればいいという思いが伝わるが、それにしては同じタイプが多すぎやしないか?吉田と大西は180cm未満で、右投手としては小柄な部類。杉山は、3年時より直球の質が良くなく、現状変化球投手のようになっている点は引っかかるところ。何よりヤクルトのスカウトが獲る投手だからなあ…という色眼鏡は、これだけ外しまくってきた実績の賜物に他ならない。

吉田はリリーフ登板時のMAXスピードで評価が上滑りしているが、先発やらすなら特徴がなくなる覚悟を。ここは思い切って、最初からセットアッパー。良ければ石山に続く抑え候補として起用し、後ろを厚くしていくという戦略もアリかもしれない。

🔸補強するならスカウトなんじゃないか説
投手限定の話になるが「神宮で活躍するタイプ」なんて、妖精のようなタイプはこの世に存在しないのだろうが、そんな幻想を追い求めて今のような惨状を招いている気がしてならない。

ヤクルトが獲るからダメじゃない人もダメになってしまうパターンも考えられるが、ヤクルトが欲しがる人がダメってパターンの方が可能性は高そう。

そもそも獲る人が変わらなければ似たタイプを集めてしまうのが道理で、獲る人のバリエーションを増やしたり、獲る人のこだわりを変えたりと工夫をこなさなければ、結局何枚獲ろうと同じ事の繰り返しにしかならないのではないか。

こんな時代なんだから、一人頭の給料減らしてでも頭数増やした方がいい。関東や関西はカバーする選手が多いのだから、野手専用と投手専用と分けるとかね。ロクに指名されないし有望選手も少ない閑散地区は従来通り(の配置)でもいいとは思うけど。「選手を試合で見る」っていうよりも、通って練習を見たり、性格を見たりといった部分での比重が高まるのなら、人間の絶対的な頭数は必要だろう。

🔸5位6位
高卒遊撃手を2名指名。捕手と外野手はまあなんとか足りてるという状況だけに、この指名の傾向はアリ。
廣岡、太田が正遊撃手を争う中、ファームでは次の時代を見越して弾を仕込んでおきましょうか、という指名か。

名前も含め本当にタイプが似通っている2人だが、予想に反して6位まで残っていた武岡の心境は穏やかではないだろう。逆境と捉えて乗り越える力を生み出せるか。長岡は、まずフィジカル。武岡は打撃から着手といったところ。高校生も3年で切られる世知辛い風潮があるだけに、1年で土台を固めて2年目からファームでがっつり争いたい。

🔸総括
いずれにせよ、ここまで崩壊した投手陣を再建するには最低でも3〜4年はかかる大仕事。今年のように大胆な姿勢で、かつ過去を振り払うような攻めの指名を繰り返す事でしか成し遂げられない壁だ。

幸い、村上を筆頭に若手の野手は芽が出している。この機会に投手中心のドラフトでバランスを取っていく事が戦力の底上げとなるだろう。