菜奈美は次々出てくる孝志の質問に答えていた、

菜奈美自身お喋りが苦手だが、孝志は上手に自分の相手をしていると、菜奈美は感心している、

答えにくい質問に菜奈美が沈黙しても、こだわらずに話を進める、

そう言う頭の切り替えの早い人は助かる、

すると孝志が質問をしてきた、

「お父さん、お母さんはどんな人?」

菜奈美は本気で答えると、一言や二言では済まないと思ってどう答えようか考えていると、

「差し支えのない範囲でいいよ」

孝志がそう補足した、

菜奈美は自分の元を成している両親を少し話しておこうと思い、

「父親は建設会社に勤めています、生真面目な父です、職人気質的な部分があって、厳しいです」

孝志は菜奈美の親の話を運転しながら真面目に聞いている、

菜奈美は続けた、

「母親も厳しい人です、母親の両親は芸術家で・・・」

菜奈美はそう言って言葉を止めてしまった、

母親の話から外れていると思っていると、

孝志が、

「芸術家って?」

孝志の会話に関する反応は感心するほど早い、

菜奈美はそれを人の話をちゃんと聞いている証拠と思っている、

「母親の話から外れるかなと思って」

菜奈美がそう言うと、孝志が、

「そうですね、それはまた今度で、お母さんも厳しいの?」

菜奈美はその孝志の話を戻した問いかけに、ちょっとイメージの悪い言い方をしてしまったかなと思い、

「厳しいって言うのは、罰を与えるとかそう言うのじゃなくて、考え方とか生き方とか信念とか」

菜奈美はピッタリの言葉を探しながら話していると、孝志が、

「観念的な事?」

菜奈美が言いたい事を孝志が確認してきた、

菜奈美は頷き、

「そうです、でもジェネレーションギャップみたいなもので、親子だから仕方ないですよね?」

菜奈美は両親のイメージを孝志に誤解させたくなくて車の運転をしている孝志の横顔を見て続けた、

「厳しいと言っても、親は子供に常識を教えないといけないから仕方ないでしょう?」

すると孝志は菜奈美の視線を感じたのかチラリと菜奈美を見てから、

「うん、僕もそう思うよ」

と同意してくれた、

すると孝志は前方を見ながら、

「じゃ、子供から見て、どんな夫婦?」

菜奈美はいい質問をしてくれたと思い、両親の名誉回復するために

とっておきのエピソードを披露しようと思うと、菜奈美自身そのエピソードを思い出し笑顔になり、

「そう言う両親なので、夫婦で意見が対立する事が時々あって、でも子供の前なので激しい事はできないから、様子がいつもと違う時があって、見ているこっちが呆れると言うか、またやってるみたいな、大体父親はダンマリを決め込んでますね、男の人ってどうしてあんなに頑ななのかなって思います」

菜奈美はそう言って伏せられた意味に気付いて欲しくて、少し話し方をスローにして続けた、

「でもね、いつのまにか仲直りしているんです」

そう言って孝志を見ていると、孝志は菜奈美の視線を感じたのか、話の内容に動揺したのか、

運転しながら菜奈美をそっと見て、でも運転中なのでゆっくり視線を前方に戻し、

孝志は呟く様に言った、

「どうやって仲直りしたのか、聞いてないの?」

菜奈美はその孝志の問いかけに、自分が伏せた言葉の意味を理解していると感じた、

そして孝志は何気なく言った、

「男と女って面白いね」

菜奈美は頷いて話を終えると、

少し沈黙があって、

何の前触れもなく、孝志が遠慮気味に、小さな声で問いかけてきた、

「菜奈美さんは」

菜奈美は久しぶりに名前にさん付けで、孝志の問いかけが慎重だと思い、その続きを聞いた、

「エッチはまだ?」

菜奈美はとうとう本題が来た!

と思い満を持して答えた。


つづく。