菜奈美は罪を犯してしまった気持ちのまま、
目を開くと、無防備な菜奈美の顔を見ていた、孝志の思い詰めた目と目が合った、
孝志のその目を見て、菜奈美は犯した罪の重さを分かってくれている、そう感じて、安心をし、罪の意識から解放され、
心が軽くなり、
急にキスをする前の恥ずかしさや照れた気持ちに戻り、
再び菜奈美は目を閉じて、顔から火が出る思いで、
「恥ずかしーい」
と高い声でユーモラスに嘆いてみせた、
そして菜奈美が目を開くと、
孝志も笑顔で答えていて、
菜奈美と目が合うと自分の椅子に戻り、
菜奈美の息に合わせる様に一緒に笑ってくれた、
菜奈美は全身に安心感を感じ、
笑う表情で隠しながら、
この男を自分のそばにずっと置いておこうと思った、
運動公園の駐車場を離れ、
車は川沿いから住宅がまばらに建つ田舎の風景の中を走り始めた、
車を走らせながら孝志が問いかけてきた、
「バイトと教習所はそのうちに?・・・」
それで菜奈美は、
「バイトはいろいろスマホで調べているよ、教習所はお家の近所にするか大学の近所の教習所にするかで考え中」
それを聞いて孝志が、
「忙しくなるね?」
菜奈美は心の中で、大丈夫、孝志との時間はちゃんと作るから、と思い頷いた、
孝志は車を運転しながら、
菜奈美に気づかれないように、左のドアミラーを見るふりをして、
菜奈美の横顔を盗み見すると、
自分より菜奈美の方が落ち着いてシートに座っている、
着実にステップアップしている手応えを感じているが、
ちょっと気が強いと言うか、しっかりしてると言うか、
でもこっちが上手に扱えば、なんとかなりそうだ、
十八で若いのに大人っぽくて、姉御肌、
綺麗な顔立ち、
でもこんな非の打ち所がなさそうに見えて、
絶対コンプレックスの一つや二つくらい持っているもので
意外とその自分の気性がコンプレックスだったりして、
そう孝志は思い、心の中で苦笑いをして、
女性イコール母性とか優しさと言う、世間の認識くらい菜奈美も知っているはず、
なのに自分は気が強いとなれば、コンプレックスになり得る、
孝志はふと自分をかえりみて、自分もコンプレックスがある、
誰だってコンプレックスくらい持っている、
そのコンプレックスを忘れさせてくれる人、ここ大事!
ハマるってそう言う事でしょう、
と孝志は思っていて、
三人の女性と付き合って、孝志が得た答え、
菜奈美をゆっくり観察して、菜奈美のコンプレックスを見つけて上げよう、
彼女にしたい女性のコンプレックスに気付いてあげた方が、
男も徳だし、相手の女性も楽できるでしょう
孝志はそれくらいしないと、菜奈美をずっとそばに置いとけない気がしている、
自分は高卒だし、高給取りでもないし、顔も美男子、イケメンでもないど、
なんとかして菜奈美をずっとそばに置いておきたいその一心。
つづく。