初めまして、かなり個性の強い空想物語です、貴方の趣味に合わないかも知れません、注意!、この物語は現実、実情を無視、逸脱して想像、妄想、した娯楽、エンターテイメント物です。
正雄は着岸した渡し船から降りると港で待っていたその他の鬼衛集の人達に会釈した、
年に数度、鬼ヶ島に援助物資を運んでいる、
この援助物資を集めるのが一苦労で、
特に島の鬼達が使う燃料の確保が難しい、
島に生えている木々を燃料に使うと、
木を枯渇させてしまうかもしれないし、
木がなくなると山の保水力がなくなり、
島の唯一の川が枯れてしまうかもしれない、
それに大きな木だとそれを燃料に使える様に加工する為の道具が必要になる、
畑を耕す道具や枝をはらう程度の道具は与えてある、
主な燃料は人間が着ていた古着、
勿論鬼達は自分が着る服を確保した上で、
その他の物、
水のペットボトルや使い終わった段ボールの箱も燃料にしていると思う、
そして食料は援助しない方針だ、
正雄はその他の鬼衛集と談笑している太一に近付きみんなの会話に耳を傾けた、
鬼衛集の殆どがそこそこの年齢の人達で、
日本社会の中にある後継者不足がここにもある様子、
正雄がその一団の外側に立っていると、
鬼衛集のおじさん?おじいちゃん?が話しかけてきた、
彼は岡山治(おかやまおさむ)、
鬼衛集の発足当時から代々、世襲で鬼衛集に参加している古参中の古参、
古株中の古株、
正雄も正確には知らないが六十を回り七十前くらいの年齢に見える、
以前にも世襲が途切れそうだとボヤいていた、
岡山が微笑みながら問いかけてきた、
「鬼の様子はどうだった?」
正雄は鬼衛集に入って十ヶ月、
物資の搬入は二度目の参加、
「はい、前回と同じでしたけど、今回は鬼に話しかけてみました」
岡山は若い鬼衛集に微笑んで、
「君は社交的だからな、でも鬼はそんなに社交的じゃないだろう?」
と言ってきたので、正雄は大先輩に、
「それが、話しかけても無口な鬼もいますが、一言、二言返してくれる鬼もいましたよ」
そう言って正雄は、
「鬼と一度ゆっくり話しがしたいですね」
すると岡山は微笑んで言った、
「私には、鬼は治安の守り神みたいなものだから・・・」
そう言って言葉を探している様な間合いがあって、
「若い人達にとっては宗教もファッションみたいなものなのかな?」
正雄は治安の守り神、と言う言葉を父方のお爺さんも言ってたなと思い出し、
お年寄りには、鬼って宗教的な存在なんだと改めて感じた、
でもそうなると鬼に対するズルいと言うイメージと矛盾すると思い、
「あの、気になっている事があるのですが、
本物のツノは桃太郎に成敗されて、ペタだけになったのに、ペタの中から自称ツノが出てきたのは何故ですか?」
すると岡山はしばらく正雄の目を見て、
少し考えて言った、
「いろんな解釈があっていいと思う、君が納得のいく解釈を考え出せばいいと思う」
正雄は自分の解釈が正しいか判断するために、岡山の解釈を聞いて参考にしようと思っていたので、
「岡山さんの解釈を聞いて参考にしようと思っていたのですが」
と言ってみると、岡山は答えた、
「私自身、今も解釈を捻り出そうとしているところだからね」
正雄は人生の大先輩の岡山にそう言われて、
解釈を甘く見ていたと思い、
自分の考えの浅さを思い知らされ、
「勉強になりました」
と頭を一度下げてお礼を言うしかなかった、
すると、岡山が
「でも私も鬼を人間と同じ動物と思っている人がいるのは知ってるよ」
と正雄からして見れば、正雄に歩み寄ってくれた様に見える、
「現に鬼達は島の中で、完全じゃないけど自給自足をしている訳だから、食料を調達する為の組織的な動きをしないといけない、良くも悪くも力を使って動かさないといけない、人間の社会もそう言える部分あるよね」
正雄はズルい鬼がいると思っていたが、
岡山の話しを聞いて鬼の見方が変わった、
組織の作り方、組織のルールはいろいろあるが、
統治する側、される側に分かれてしまうものなのかと感じた、
すると、
港で待っていた鬼衛集の人達との談笑を終えた太一が、
正雄とおじさんの間に入って来て、
正雄に、
「ちょっといいか?」
と太一は正雄に用事がある様だ、
正雄は何の用だろうと太一を見た、
太一はまず岡山に、
「実は、ツノが教えてくれたのだが」
と言って次は正雄に視線を移して続けた、
「鬼の掘建て小屋なんだけど、老朽が激しい物があってなんとかして欲しいらしい」
そう言って太一は少し勝手の悪そうな顔をして、
「一度物を見てみないと、段取りのしようがない、島に行って確認したいのだが、あまり予算をかけられない、そこで真中君、ジェットスキー持ってたよね?それに乗せていってほしいんだ」
正雄は俺の出番だと察して、
「僕のジェットスキーは二人乗れますよ」
と正雄は嬉しい気持ちで返した、すると太一も良い反応が返ってきたと思ったのか微笑み、
「君のなら入江に入れるだろう?」
正雄は島に行く気が満々にある事を表情に出して、
「入江の浜だったら大丈夫です、お手伝いできますよ」
太一は嬉しそうな笑みを正雄に見せて、
「じゃお互いの都合を合わせるのに連絡をするよ、実費の事はその時に」
実費と聞いて正雄は遠慮の気持ちを伝えたが、
太一も鬼衛集の長で引っ込めるわけにもいかない様子、
そんな事より、
正雄は鬼の村まで入れると思うと、
楽しみな気持ちを押さえきれなかった。