昨年11月、奈良県桜井市にある川口由一さんの田畑の見学会に参加させてもらった。
荒れ放題になっていた畑を再生するために「自然農」を知り、興味をもったからだ。
待合せ場所の駅まで自ら迎えに来てくださり、初めての私にも「どこから来られましたか。ご苦労さまです」と声をかけてくださった。
また参加したいと思ってウェブサイトを見て、訃報を知った。
今年6月9日に永眠されたとのことだった。
見学会の中で参加者の一人からの「自然農を始めたが上手くいかず、親戚や近所の人から<そんなことをしていてはダメだ>といわれます。どうしたらいいですか」との質問に対し、ニコニコとほほ笑みながら「放っておきなさい」といわれた言葉が印象に残る。
温かいまなざしの奥に、長年、周囲の批判を受けながらも苦労され、試行錯誤を繰返し、いのちの営みに添う「自然農」の栽培技術とその理を確立された重みを感じた。
川口由一さんが切り開かれた道は、「自然農」を目指す者たち、そして、こころ平和に美しく豊かに生きていこうとする人々にとっての希望である。
ご冥福を祈る。