目の前のヨンファは
凛とした輝きを放っていた
以前ならば自分の生い立ちを
卑下するように
どこか翳りがあったが
今はそんな様子は微塵も感じさせない

幸せな暮らしを送っているのだろうと
ウンスは安堵する
ただ
そのヨンファの
今一番の気がかりと言えば
朔州で暮らす義母の
具合があまりよろしくないことで
足腰が弱り食が細くなり
気力も衰えがちだと
長年奥に仕える女中から
案じた様子の文が届いていた

相当いびられ
つらく当たられた日々もあったが
すべてはキム家の行く末を
案じてのことと
ヨンファにも
今となってはわかる気がした

そんな状況もあり
一度朔州に夫とともに戻り
義母の世話をしようと決めたのだ
義母の実の息子であり
ヨンファ夫婦の養子になった
後継ジェボクも都暮らしが長い
娘ハナと一緒に連れ帰り
二人の婚約を報告したら
義母の気力がまた戻るかもしれない
そのいきさつをウンスに話し
出立の挨拶に訪れたヨンファに
ポムは悔しそうな顔を見せて
言った


あんなにヨンファさんをいじめた
義母様のお世話をするんでするか?
わざわざ苦労を買って出るなんて
人がいいにもほどがあるでする
そのためにヨンファさんが
遠くに行っちゃうなんて
ポムはいやでする
オンニ    
オンニも反対してくだされ
ウンスオンニの言うことなら
ヨンファさんも聞くはずでする


ポム
気持ちはありがたいけど
夫婦で決めたことなのよ
私は今まで
都で十分羽を伸ばしてきたわ
その間
朔州のことはお母様に
任せきりにしてきたもの
それに
ジェボクがキム家の後を継ぎ
ハナと幸せに暮らすためにも
お母様に私が嫁として
認めてもらって
安心してもらうのは
大事なことだと思うの


決意の固いヨンファに
ポムは黙る


そうね
ポムの気持ちもよくわかるし
私もヨンファには
ずっとそばにいて欲しいけど
旦那様と決めたヨンファの意志を
応援したいと思うわ
だからポムも気持ちよく
送り出してあげましょうよ


ウンスオンニ


まだ不満そうなポムに
ヨンファが笑いかけて言う


ポム
そばにいられなくても
姉妹であることに変わりはないわ
私もポムのこと
大事に思っているのよ
それから医仙様
上護軍が不在というのに
お役に立てなくてすみません


何言ってるのよ
ヨンファには生まれたばかりの
三つ子がたくさん世話になったわ
私はね
ヨンファはヨンファの
進む道で頑張って欲しいわ
それが私の励みにもなるから


ありがとうございます
医仙様
私    医仙様に出会えて
本当に良かったと思います
今の私があるのも医仙様の
おかげですから


そんな大げさよ


ウンスは首を振った
チェヨンが初恋だったと
ウンスに白状したヨンファ
チェ侍医に惹かれ
その思いを遂げようとしたが
拒絶されたヨンファ
幸せに縁遠かった彼女が
夫と子供たちとともに
新しい暮らしに踏み出そうと
している


ヨンファは私の可愛い妹
元気に暮らすのよ
それに
いつでも都に
帰っていらっしゃい


ありがとうございます
医仙様


残念だけど
私はこれから王宮に
行かなくちゃならないのよ
夕方には戻るから
みんなで夕餉を一緒にどお?
ヘミやジュヒもいるし
ああ  そうだ
叔母様も誘おうかしら
楽しいひと時になりそうね


ウンスはヨンファやポムに
今宵のぱーちいを提案し
ヘジャとソクテ夫婦
ヘミに付き添われ
三つ子を連れて
タンが待つ王宮に向かった


そしてその頃
チェヨンとイサとチソンは
ホン山に向かっていた
その辺りで
ソンゲに合流する手はずだ


海が近いのかな?
潮の香りがする


イサは懐かしそうに
呟いた
今暮らす都に海はない
生まれた時から
海に暮らしたイサにとり
海は自分の原風景
海のない毎日に慣れてはいたが
かすかな潮の香りに心が揺れる
あの頃の日々が蘇る
イサのどこか苦い顔を
見たチェヨンは
わざと頬を緩めて見せた


入江が近いのだろうな
今宵は海のそばの宿に
泊まるとするか?


いいですね
それ!
魚がうまそうだ


チソンがれしそうに答える


おい
俺たちは
遊びに来たのではないぞ


チェヨンにじろりと睨まれて
「はっ   わかっております」と
かしこまって頭を下げたチソンに
苦笑いしながら


海の幸か
イムジャが喜びそうだ


チェヨンもついつい
妻ウンスに
心の中で語りかけていた


*******


『今日よりも明日もっと』
どこから来て
どこに向かうのか
まだ何者でもない自分に問う











週末暑くなりそうです
熱中症にお気をつけくださいませ
そして
なんとなくつらつらと
気づくと
本日二話目の更新となりました
おつきあいいただき
ありがとうございます

またおつきあいくださいね〜〜