姉上は息災であろうか?
国に戻るのは十年ぶりのことゆえ
さぞかし都の様子も
変わっておるのであろうな
姉上はますます
お綺麗になられたであろう
隊長は最近姉上に会ったのか?
まだあどけない顔をした
王位継承者のワン・ギは
期待に胸を膨らませる表情で
護衛の男に話しかけた
いえ
男は無愛想にポツリと告げ
ふいっと顔を背けると
隊列を見渡した
二台の馬車の前後を
王家の親衛隊ウダルチの精鋭が
麒麟の紋様の鎧を身にまとい
ガッチリと脇を固めて
警護をしている
隊長の鋭い視線に気づいた
後方 副隊長チュンソクが
何かあったのかと身構えるが
男はわずかに顎を引いただけで
また真っ直ぐ前を向いた
先頭の馬車にはワン・ギ
後続の馬車には元から嫁ぐ
ノグク公主が乗っている
王となられるお方は
帰国を心待ちにして
期待を膨らませているが
男にしてみればいい迷惑だった
民は新しい王に期待など
まるでしてはいない
高麗は隣国の言いなりで
まだ若い大君に王位を継がせ
元国の姫を嫁がせることで
傀儡政治を狙っているのは
明らかだった
国内も政権争いできな臭く
後宮も正室と側室の諍いが
絶えない
それなのにこの大君と来たら
呑気に姉を案じている場合か
そんな呆れにも似た感情が
男の胸の奥に湧いていた
大君は現状を
何もわかっておられぬ
思わずため息が漏れた
ワン・ギは相変わらず
上機嫌で男に姉の話を
振ってくる
これから若き王を待ち受ける
過酷な運命など
まるで気にならないような
能天気ぶりで・・・
ようやく
国に帰れます
姉上・・・
ワン・ギが姉のウンスと別れ
元国に人質として向かったのは
まだ十歳にも満たない
幼少の頃だった
人質になる不安よりも
二つ年上の
大好きな姉との別れが
何より辛かったことを
今でもはっきり覚えている
正室の子として生まれた姉と弟は
支え合って生きてきた
他にも側室の兄弟姉妹はいたが
どれも足を引っ張り合うような
敵対関係で
同じ母親から生まれた
姉ウンスの存在はワン・ギにとり
特別だったのだ
引っ込み思案で臆病で
優柔不断な弟は
何事にも物怖じしない
凛とした姉の姿が眩しく見えた
王位継承第一位の弟は
周りから
意地悪をされることが多かった
が 弱気な性格の彼は
言い返せずに俯くばかり
窮地を助けてくれるのは
いつも
しっかり者の姉ウンスだった
姉上に
早くお会いしたいものじゃ
目を輝かせて呟く
ワン・ギの言葉に
男は返答しなかった・・・
姉上・・・か
あの方は何をどうしても
お元気であろう
男はクスッと口元を緩め
慌てて顔をしかめた
若き君主の姉上とは
旧知の仲
幼い頃は三人で
一緒に遊んだこともある
しかし
公主と親衛隊の隊長
と言う立場が
いつしかお互いを疎遠にした
彼女は幼い頃から
白黒つけなければ
気が済まない性格で
それが時にわがままと
評されていたが
本当は心根の優しい人だと
言うことは男にも
よくわかっていた
何事にも真っ直ぐに
向き合いすぎる性質は
危なっかしくて
心配になるくらいだ
大君のお迎えに
元国に出立する前
一度 王宮の庭園で
ちらりと見かけた
何が楽しいのか
女官たちと笑いながら
黄色の花を見つめていた
綺麗な瞳の女人
そんなことを
ぼんやり思い出していると
後ろから馬が近づいて来た
部下のチュソクだ
隊長 不穏な影が・・・
ああ
警戒を怠るな
雨・・・か・・・
男は空を見上げた
しとしとと雨が
隊列に降り注ぐ
このまま国境を
越えたいものだが
そうもいかぬな
男は後ろの馬車に
目をやった
一気に道中を駆け抜け
もうすぐ日暮れどきを迎える
王妃となられる姫君は
強行な旅程に
文句ひとつ言わなかった
気丈なお方だと感心するが
これ以上馬車を走らせるのは
酷と言うものだろう
ひたひたとついてくる影の集団も
気に掛かる
仕方がない・・・
陣を取りやすいように
宿で休むとするか
男はふうと息を吐き
チュソクに告げた
宿屋の検分を
はっ!
チュソクは心得たとばかりに
馬に鞭打ち
急ぎ宿場町に向かった
大君 雨がひどくなる前に
宿屋で休息をいたします
馬車の中に向かって
声をかけると
うむ
と 短い返事が聞こえた
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
![]()
お久しぶりでございます
ゆるゆる更新でミアネヨ
実は悩んだ末に
とうとう
パソコンを入れ替えました
前のパソコンはWi-Fiに
反応しなくなってしまいました
長く使っていたパソコン君は
同志のような存在で
別れを告げるのは
とても悲しかったのですが・・・
背に腹はかえられぬ
と言うわけで
まだ新しいパソコンに慣れず
右往左往?しております
サクサクお話が
書けるようになるまで
どうぞ今しばらく
生あたたか〜い目で
見守ってくださいませ
初夏から一気に真夏到来
体調に気をつけて
今週も
安寧にお過ごしくださいませ
またお付き合いくださいね