ケナリの花が便りが

南の方から聞こえ始めた

春まだ浅い日

 

養成所四期生のサノは

寮の部屋の荷物を片付けながら

一抹の寂しさを感じずには

いられなかった

 

都の暮らしも

養成所の暮らしにも

離れがたい魅力があった

 

最初は嘘で固めたチェ侍医との

兄妹の偽りの縁も

もしかして本物ではないか?

と思えるくらいに

この二年の日々は充実し

チェ侍医には

色々と気にかけてもらってきた

 

最初に出会った頃は

強欲な父親の思惑に乗って

妹だと偽って

チェ侍医を騙そうとしたが

医仙様やチェ侍医との

交流の中で

そんな過去の自分の行いを恥じ

悔い改めて医学の道に目覚めた

 

養成所の試験に玉砕しても

どうしても医官への道を

諦めきれずに勉学を重ね

二度目の挑戦で養成所の

入学資格を得た時には

天にも昇るくらいに

嬉しかったものだ・・・

 

そうして希望を胸に

入学した養成所を

去る日が近づいている

 

チェ侍医の思い人が

あの医仙様だということは

初めからすぐにわかったから

横恋慕する気も起きず

振り向かせようと思う気も

まったくなくなった

だから立派な医官になるための

勉学に情熱を傾けられた

 

けれども

いつの頃からか

心の中に芽生えた恋心を

止めることはできなかった

それはチェ侍医の義理の息子

イサに対する思い

日に日に大きくなる恋心

彼を思うとサノは

胸の奥が今もキリキリと疼く

 

人を好きになるのは

理屈ではないのだろう

あれほど憧れていた

チェ侍医のことは

すぐに諦めがついたのに

イサのことは

いつ好きになったのか

わからない

気がつくとあの笑い顔に

心をときめかせていた

困った時にはスッと

声がけしてくれる優しさに

勘違いをした

 

それは養父であるチェ侍医の

立場を慮っての彼の行動だと

わかっていても

きつい修練の中

イサの存在に何度も救われた

 

たまにチェ侍医の屋敷に

遊びに寄らせてもらう夜を

どれほど心待ちにしたことだろう

養成所に縫合の指導に来る彼を

どれほど熱い視線で見つめた

ことだろう・・・

 

だけど

彼の視線の先に

自分はいない

それはよくわかっていた

 

心に蓋をすればするほど

苦しく切なくなる思いは

深くなる

 

だから

ここを離れる決心をしたのだ

 

これ以上都にいたら

イサにつきまとう

嫌な女になってしまいそうで

そんな自分が怖くて

卒業後は故郷に帰る決断をした

 

 

夕餉の支度ができたって

ソア様がおっしゃっているわよ

下に降りてきたら?

 

 

アン・ジェの親戚筋に当たる

アン・ズがサノを呼びに

部屋を訪れた

 

 

あらまあ

すっかり片付いたのね

勉強道具以外

もう箱の中に??

 

 

紫の間と言われるサノの部屋には

壁にかかった衣と

机の上の医学書だけが置かれ

あとは木箱の中に収められていた

 

 

ええ 医官の試験に

落ちても受かっても

故郷に帰ることにしたから・・・

でも正直 医官の免状は

持って帰りたいわ

 

 

そうよね

あれだけ頑張って来たんだもの

私たち・・・

 

 

アン・ズは典医寺志望よね?

 

 

うん 

アン・ユ(アン・ジェの息子)が

指導医だから

ちょっとやりづらいかなぁとも

思うけど・・・

将来的には王家の皆様を

お支えしたいなと思って・・・

アン家はもともと武士の家系で

王家をお支えして来た家柄なの

私も幼い頃から

そう言われて育ったわ

でもアン・ユは本家の嫡子なのに

父親の後を継がず

医官になったってわけ

それってすごい決断だと思うのよ

だから私も彼の後に続いて

医者の道で王家をお支えしたい

って思っている

 

 

アン・ズはまっすぐな瞳で

サノを見つめて答えた

 

 

アン・ズなら

きっと大丈夫だよ

 

 

そうかなぁ

進路は成績順だっていうし

試験が終わるまでわからないわ

ホ・トマもイ・ジウも典医寺狙い

三人とも採用されたらいいけど

例年一人か二人だし・・・

 

 

ユチェとオルは

菊花診療所分院を

希望しているのよね??

サクラは実家のお花屋さんの隣に

薬房を建てるって言ってたし・・・

都を離れるのはあたしだけか

 

 

そうね

寂しくなるわ・・・

サノももう少し都で

頑張ればいいのに・・・

 

 

色々あって

そうもいかないの

 

 

少しばかり顔を曇らせたサノを

慰めるような優しい顔で

アン・ズは微笑んだ

 

 

どんな道を選んでも

応援するって

医仙様もおっしゃっていたわ

私もサノのこと応援している

 

 

あたしもみんなのこと

故郷から応援しているわ

 

 

うん・・・

さ もう下に行かなくちゃ

みんなが待っているわよ

 

 

は〜い

 

 

サノはから元気を出すように

大きな声で返事をした

 

春はもうそこまで来ている

それぞれの旅立ちの日も近い

 

 

*******

 

 

『今日よりも明日もっと』

光陰矢の如し

時の流れは待ってはくれない

一歩踏み出すか

ここで踏みとどまるか?

 

 

黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花黄色い花

 

 

今日からリアル三月

春は卒業シーズンですね

ご卒業の皆様

おめでとうございます!

 

そして養成所虹の

四期生のみんなも

それぞれの進路に向けて

動き出す時です

昨年は「虹色グラフィティ」

として描いたのですが

今回は本編の中に組み込んで

養成所の皆さんの物語を

ご披露できればと思います

 

それにしても

もう三月??

早すぎない???

 

 

またおつきあいくださいませ

 

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