足の長いCAがメッチュ(麦酒)を3本もくれたので、高度が下がって来たことに気づかなかった。着陸態勢だ。下に韓国の山が見える。

東京ソウルは本当に近い。離陸して、メッチュを飲んで食事して、すぐに入国カードを書かねばならない。せわしない旅だ。CAたち、スタッフもさぞ忙しかろう。まだ免税品のやり取りをしている。これは船旅の名残りである。船の上ではどちらの国からも税金を徴れないないからだ。

 

仁川国際空港は大きい。ターミナルビルも大きく扇型になっており、はじからはじまでを無料バスが循環しているほどだ。成田空港もこうすればよかったのにと言っても、今更しようがあるまい。

通関は日本のおばさんたちの興奮の場だ。さあこれから買い物に行くぞ!なのか韓流ドラマのスターに会いに行くぞ!なのか知らないけれど、のもすごくテンションが上がっている。グループばかりなので話し声が大きい。

こっちは仕事があるので個人旅、うらやましい限りだ。

並ぶ人を振り返って見ると、遊びの人半分、仕事の人半分だろうか。顔つきでわかる。

 

韓国朝鮮語の表記にハングルと呼ばれるものがある。15世紀に李王朝の世宗セジョン王が考案した表音文字である。

日本の「かな」と同じで、身分の低いものが使った。身分の高いものは漢文、漢字を使った。これも日本と同じだ。

この王世宗セジョンはインテリで、前述のように文字を作ったり、詩を書いたり、教育制度に力を入れたりした王様で、韓国の一万ウォン紙幣に描かれてもいる。

 

セジョン王の頃の日本は、武士が政権を握りはじめた頃なのだが、多くの武士たちは文盲だった。漢字もかなも読めなかった。

そこで考えられたのが花押である。あの漢字のような平仮名のような不思議な模様は、字がわからないからこそ発案されたサインなのだ。今の日本の政治家は、大臣になると花押を考えるという。法律などの公文書には本人の直筆毛筆サインと共に、花押が描かれている。おかしな習慣が残っている。多分明治期、出自が武士ではなかった政治家の発案だったのではなかろうか。

 

ハングルは今の言葉で、かつてはオンモンといった。身分の低いものが使う文字を指した言葉だったので、今日では使われなくなった。ハングルという。北朝鮮ではチョソングルという。

女も使う仮名を使って文章を書こう、といったインテリがかつて日本にいたが、日本朝鮮韓国ではインテリは漢字を使うのが常態化されていた。

 

この三十年位で近代韓国は漢字を捨て、ハングルのみを表記に使うようになった。韓国の若者に君の名前は漢字で書くとどうなるの?と聞くと、知らない、と答えることが多くなってきた。もっと聞くと、最初から漢字のない名前をつけるのが今の流行りのようだ。韓国版キラキラネームなのだろう。名前は時代とともに変化する。

 

ハングル表記は世界中の言葉を音表記できる文字だそうだ。だから耳で何かを聞いて、それを即座にハングル表記している。

アルファベットより表記が便利だという。特に詰まった音に対しては、細かい表記ができる。

 

その典型的な例がマッコリだ。

このコと、リの間に小さくル、という音が入るのだが、これはカタカナでもアルファベットでも表記できない。フランス語のRに近い音もこのハングルだと表記できる。

ただ、このマッコルリは発音がむずかしい。

 

しかし酒の方は美味しく、いい居酒屋だと自分のところで作っている。自家製マッコリだ。ちょうどコンビニのアイスクリームをいれるような大きさの金属の箱の中で作っている。

マッコリを頼むと、ちょうど日本の駄菓子屋のおばさんのように、そこから汲み上げて、アルミのヤカンに入れて持ってくる。飲む器もアルミだ。その給食に使うくらいのアルミの器を、指を三本使ってマッコルリを入れて飲む。これが作法らしい。度数はかなり低い。さわやかな味だ。かなり飲んでも酔わない。当たり前だが、作るところによって味が異なる。好みが色々ある。

日本でもマッコリは手に入るが味が違う。生酒なので味が変化するのか、酸化防止のものが入っているのだろう。

 

飲み屋では、酔っ払ってくると先ほどのヤカンを叩いて歌を歌い始める。だからヤカンには多くのヘコミがある。

 

つまみはこれまたどの国も同じで、店店によって違ういいものがある。魚介類が名物のところもあれば、スルメ(ハンチという)が名物のところなどなど。これもどこの国でも同じだ。じゃがいもの千切りを鉄板で焼き、コチュジャンかお酢か何かをつけてつまみにするのがどこにでもある。これは安価で美味しい。

 

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