日本の敗戦から八十年。いまだ、日本と韓国朝鮮との間には、深刻な歴史の溝があり、解消されていない。
さらに、朝鮮半島、韓半島は依然として国境はない。こちらは、休戦から六十年。幅4キロの休戦ラインが北緯38度を、半島を東西にまたぎ、中には誰も入れない。入ると射殺される。
韓国が今の体制になったのは1970年代の半ばだ。アメリカ軍の撤収により、軍事政権が終わり、初めての大統領選が行われた。その選挙のまえに、革新系の大統領候補が東京九段のパレスサイドホテルで拉致された。縛られ、目隠しをされ、ホテルの地下駐車場から極秘のうちに東名高速を抜け、海を渡り韓国で解放されている。この辺りの裏話は昨今のさまざまな書物によって明らかされている。当事者たちがいなくなったからだ。
この候補者の暗殺の中止司令が出たという。その経緯についても、かなり明らかになった。
そして、その大統領選は多くの予想通り、軍事政権時の指導者が当選した。が、この大統領はのちに政権幹部の内紛により射殺されている。一体誰がこの大統領の娘が、のちに大統領になると思ったことだろう。この娘が、醜聞によって大統領を追われ、監獄に入ったのは、つい最近のことだ。
だから韓国の国民は、いまだに政治に熱い。投票率もしばらくは100%が続いていたが、昨今はやや下がってきて、それでも70%台である。
平和が続く隣の国の地方選での投票率はいまや30%台になっている。
日本と韓国が普通に行き来できるようになったのもそのあたりからだろうか。映画や歌謡曲などの文化日本の輸入が解禁されたのはそのずっと後になる。
したがって韓国は若い国だ。出来立ての国だ。そのことを知る日本人は少ない。
韓国の玄関は仁川国際空港インチョンコッチェコンハンだ。ここはアジアの最大ハブ空港となっていて、アジアに行く多く飛行機はまずここにくる。地球を半周して仁川にきてそこから東京まで来る便も多くある。仁川国際空港は出来たばかりなのに手狭になり、巨大なターミナルビルをさらにもう一つ作ったほどだ。
ソウルにはもう一つ金浦空港というのが古くからあって、こちらの方がソウル市内には近い。ここは昔の羽田空港のように国内線専用のような使い方をしていた。今は、日本からだと仁川行きよりも金浦行きの方が便数が少ない。
ちょっと前は、羽田からは金浦、成田からは仁川のような住み分けがあったが今はなくなった。
韓国に行くなら、到着の空港は仁川でも金浦でもどちらでもいいが、韓国の飛行機を使うと楽しい。
KOREN AIRとASIANA AIRの二つが大きな会社だ。JALとANAの関係と同じで、かたや元国営国際便、かたや元私営国内線だった。
東京・ソウルはわずか三時間ほどのフライトなのに、食事が出る。東京・那覇とほぼ同じなのに。
この機内から韓国本場料理の始まりになる。
まずここで韓国のビールを味わうことができる。
CASSというのとHITEというのが韓国の大きなビール会社で、機内でもこの二つから選べることになっている。ビールは韓国語で麦酒メッチュという。だから食事の時にCAにメッチュという。丁寧な言い方だとメッチュジュセヨ ビールをください、になる。
すると足の長い韓国美人はニッコリしてCASS? HITE?と聞き返すはずだ。
そして缶メッチュをコップとともにくれたら、もう一言コチュジャンジュセヨと言うといい。コチュジャンをください。と言う意味だ。これは完全オプションなので言った人にしかくれない。
すると足の長いCAはどこか秘密のポケットから怪しいチューブをそおっとくれる。旅行用の歯磨きチューブよりはやや小さいものだ。韓国の人が機内食にチューブから出して料理につけているので見た人は多いはずだ。あれをくれる。
このコチュジャンがいい。
CAとなんとなく気が合えば二本くれるかもしれない。
このコチュジャン、みかけは赤く辛そうだがさそど辛くない。洗練された辛さだ。ビールによくあう。
コチュジャンは日本語では唐辛子味噌と言う。甕の中に唐辛子を入れて発酵させてつくる。
どこかの山の中でそれをみた。大量の瓶が山の斜面にびっしりと並び壮観な眺めだった。
機内食のおかずにこのコチュジャンをたっぷりつけて韓国ビールを飲み、韓国料理旅行は始まる。