カウンターのみの寿司屋だ。六人も立って食せるのだろうか。場所は昔の数寄屋橋東芝ビル、今は東急プラザ銀座となっている。その地下二階にある。このビルの十階にも同名の寿司屋がある。そっちの方が普通の回転寿司屋の形態をとっているようだ。

この地下にある店の方は、名前の通り立ち食いだ。お店のブースのシャッターを閉めるところのすぐ外に客は立って寿司を食す。江戸時代のようだ。

 

店名には根室、と書かれているが本社は札幌となっている。食材は北海道から空輸しているのだろう。

従って、江戸前寿司ではない。オホーツク前か。

だから私の知らない魚ばかりだ。北海道でしか獲れない魚なのだろう。調理法も知らないやり方のものが多い。

もちろん鮪やら鯛やら平目やらはあるが。

 

粉茶を小さじにとって自ら湯を注ぐ。カウンターに生えているツノのようなもののボタンを押すと湯呑みにお湯が出る仕掛けになっている。ビールでも出てくるのかと思った。お湯が出てきて驚いた。セルフサービスに徹している。注文も紙に書いて手渡す。なるほどこれなら明朗会計だ。回る寿司屋はみんなこういうものらしい。

 

別の寿司屋のところで書いたが、寿司屋はもともと屋台で、客が立って食した。その雰囲気が池袋西武の地下にある、九段の老舗寿司のイートインにあるが椅子に座って食する。が、ここ銀座の地下二階で、はまさに雑踏の中で食せる現代の屋台寿司だ。気がつけば、立って食べている後ろに行列ができている。

江戸の雰囲気、あるいは「小僧の神様」の世界を銀座で味わうことができる店だ。

 

生姜は自家製ではあるまいか。