〈あらすじ〉

タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近が、彼女の人生を一変させる。茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。蘭花の友人・留利絵の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。


〈感想〉

今年初読みは大好きな辻村深月さん!

盲目的な恋に落ちた何もかもに恵まれた美しさを持つ一瀬蘭花と盲目的な友情に落ちた友人の留利絵。二人の一人称で前後半描かれる。同じ出来事も立場が違えば全く異なるのが秀逸。
恋に執着するのも怖いが女友逹の執着心の方がもっと怖かった。でも読んでるうちは留利絵の気持ちにも共感出来ることも多くて、女性同士ならこんな経験は誰しもあるのではないだろうか。
山本文緒さんの解説まで、素晴らしく、さらさら読める文章なのに、気持ちは抉られた。ブラックな辻村深月好きには堪らない!