これまでのお話
夫のお気に入りの本棚をテコを使ってロープで2階まで運んだものの、それは私たちのベッドルームのドアを通り抜けられず、そこから他の部屋に移動ができないことが分かった
夫はしばらく腕組みして考えていたが、ついに次の言葉を発する。
「捨てましょう。」
え〜〜
せっかくここまでやって捨てんの〜~
ちょっと気まずいザワザワした雰囲気になる。
でも、ちょっと考えて思う。
あ・・、でも、それが一番いいかも知れない
だって、そんな大きな本棚、
他に置くところなんてないんだもの。
もう20年くらいは使ってきたし。
本棚はその家に合った新しい物を買えばいい。
そうして結局、
その本棚は捨てることになった
再び2階の窓から本棚をロープで下におろす。
引き上げた時と違って、
あとは捨てるだけの物は扱いが違う。
むしろ破棄する時には分解した方がいいくらいだから、ベランダから少し下まで下ろして、50cmくらいの高さから地面に落とす感じになった。
バーンという音と共に本棚がちょっと壊れる
今の今までで、大切に使い続ける予定だった本棚が急に粗大ゴミになる。
なんか悲しかった
というわけで、大量の本を収納するはずだった本棚を失い、本は段ボールに入ったまま、まっさらな洋間に積み上げられる。
せっかくキレイな新築なのに、その大量の段ボールはしばらくそこに積み上げられたままとなる事が決まった。
む、虚しい・・
本棚は、粗大ごみで破棄する予定だった食器棚や洋服ダンスと共に、庭の片隅に放置された。
か、悲しい・・
その頃、私は自分の担当の食器を開梱し始めていた。
私の所に来たスタッフさんが言う。
「食器はここで全て出していただいて、
食器ケースは私どもが持って帰ります。」
え〜〜
そんなこといったって食器棚は破棄したし、新しいキャビネットの設置は年明けになるそうだし・・。
それまでこの大量の食器、どうするの
どこに置けっていうの
仕方がないので、運び入れたばかりのダイニングテーブルにひたすら食器を出して並べた。
せっかくきちんとケースに入っていた食器たち。
備え付けの収納棚に収まらない分は、また段ボールに入れて保存する感じになる。
二度手間だな・・
そうして、キッチンにも段ボールが山積みになる事が決定する。
せっかく新築なのに・・・。
段ボールの山ばかりじゃん
か、悲しい・・
まあ今までも経験しているから、
分かっていたけどさ
その時は間もなく年末だったから、その時にゆっくり片付ければいいと思っていた。
夕方近くなってエアコン2台の移設が終わった。
工事の人が言う。
「17万円です。」
え〜〜
引っ越し業者さんが出してくれた見積もりに、エアコン移設の工事代は含まれてないの~~
知らなかった
明細、そこまで良く確認していなかった
そこで、安いと思っていたこの会社の引っ越し代は、相見積もりを取ったS引越センターと殆ど変わらないことに気がつく。
ここで初めて、引っ越し代は総額44万円ほどかかることが判明した。
そんな現金用意していないので、夫が近くのATMに車を走らせる。
夫が工事の人に工事代を現金でお渡しする。
ちょっと打ちのめされた・・
引っ越しって
イレギュラーなことがたくさんあるのね
でも、エアコンは設置された
嬉々としてリビングの一番大きなエアコンのスイッチを入れる。
部屋中に暖かい風が流れ始めた。
わ~~、暖かい
冬は、やっぱりこれよ~
これ、これ~
家族全員が幸せな気分を一瞬味わったところで、
バチン 急にブレーカーが落ちる。
なんで
動揺する私達。
夫が棟梁さんに問い合わせる。
棟梁さんが言う。
「ああ、新築住宅は最初は展示用なので、
アンペア数の設定が低いんですよ。
通常、お宅の場合40アンペアなんですが、
新築時は10アンペアで設定してあるんです。
でも、大丈夫です
もう引き渡しの時に東電に連絡は済んでいますので、おそらく1週間ほどで設定は変更されると思います。
あ、でも、もうすぐ年末ですね。
東電の設定が間に合えば、
12月28日か29日には40アンペアになると思いますが、間に合わなければ、年明け1月4日から通常の電力を使うことができます。」
え〜〜
少なくともあと6日、ヘタしたらあと2週間も、
エアコンなしで過ごせと
この引っ越しの片付け真っただ中の2週間を、
極寒で過ごせと
おそらく、誰かがドライヤーを使って同時に電子レンジを使ったらブレーカーが落ちるだろう。
炊飯器はどうするの
電気ポットは
結局、母の部屋の6畳用のエアコンだけは使えることが分かった。
ご飯は鍋で炊こう。
お湯もやかんで沸かそう。
なんとか12月29日までに
通常のアンペア数に戻りますように
もう、祈るしかない
夜になったので途中、コンビニ弁当で夕食を済ませた。
ただエアコンがなく寒いので、ダウンジャケットを着て足に毛布を巻いて食べた。
寒さに耐えかねた母が、
数十分おきに大声で訊いてくる。
「ねえ、建設会社さんが、電気のこと忘れちゃってたんだっけ これって、ずっと寒いの」
「そうだよ。年末には暖かくなるかもだよ。」
と私は答える。
でも母はすぐに忘れてしまい、また訊いてくる。
「ねえ、建設会社さんが、電気のこと忘れちゃってたんだっけ これって、ずっと寒いの」
「だから、さっきからそうだって言ってるじゃん。
あと1週間くらいは待ってよ。」
それでも母はやっぱりすぐに忘れてしまう
寒くて忙しくて気が狂いそうな中、
母とこのやりとりを延々と繰り返す。
引っ越しはなんだかんだで夜の10時半までかかった。
スタッフさんたちもとても大変だったと思う。
お疲れさまでした。
本当にありがとうございました。
なんか、引っ越しって色々あるね
引っ越しが終わり、温まるためお風呂に入った。
キレイなお風呂で気持ち良かった。
その後、母の部屋だけエアコンを入れ、私達は寝具を暖かい物に替えて就寝することになった。
ベッドに入り眼を閉じてしばらくして、私はふと、ある問題点に気がつく。
え
あれって、大丈夫だったけ
極寒の新築の家の中、私は確認のため階下に走っていった。