で あ い・・・
タクシーの運転手も三年間の修業の中で現場から学ぶことはほぼ身につけ、いよいよ介護タクシーの開業の現実化に向かおうとしていたさなか、以前に教育委員会に打診しておいた養護学校の非常勤講師の話が巡ってきました。実際の教育現場で障がいについて勉強することは自分のスキルアップには絶好の機会なので、2009年4月より1年間だけのつもりでありがたくお引き受けすることにしました。
配属されたのは高等部1学年。ちょうどうちの長男と同い歳だったこともあり、また以前教職に就いていた頃の知り合いも多かったので、すぐに現場に溶け込むことができたことがありがたかったです。
ここで彼らと出会い、接して、もうすぐ1年が経とうとしています。この一年間で自分の中で一番変わったのは「自身の生命の奥のほうにあった差別の感に気付き、それがやっと取り払われた」ということでした。
それまでの私は、自分自身の中にある「差別の感」というものを全く意識することすらできませんでした。たぶん「自分には差別する意識などはない」と思っていたのでしょう。42歳の春までは・・・。今はその恥ずかしい自分がはっきりと自覚できます。
それまでの私の目には、全く映りませんでした。
今の私は、「世の中にこんなにたくさんいるのか」と思うほど、町中で、障がいを持つ人に多く出会います。
それまでの私は、心を置き去りにしていました。彼らに出会っても、彼らの人生の背景を想像する心がありませんでした。考えてみようともしていませんでした。自分自身のことではなく、どこまでいっても他人のことでしかありませんでした。
今の私には、真心とまではまだまだいきませんが、何か困っているのではないか、何か自分にできることはないかと、心から彼らを見守ることができるようになりました。
みなさんは「日本理化学工業」という会社の名前を聞いたことがありますか。
この会社は1973年に設立されたチョークの会社で、1960年(昭和35年)にはじめて知的障害者を雇用して以来、一貫して障害者雇用を推し進めてきました。1975年には知的障害者多数雇用モデル工場を建設し、現在74人の社員のうち、53人が知的障害者です。障害者雇用率は約70%で製造ラインはほぼ100%知的障害者のみで稼働できるよう、工程にさまざまな工夫を凝らしています。
この工場の敷地内にある「働く幸せの像」にはつぎのように言葉が刻まれています。
導師は人間の究極の幸せは、
人に愛されること、
人にほめられること、
人に役に立つこと、
人から必要とされること、
の四つと言われました。
働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。
私はその愛までも得られると思う。
彼らと接する中でひとつの大きな質問にあたりました。それは「彼らの幸せとは何なのだろう」ということです。今の時点でたどり着いているとりあえずの答えは「私自身も含めた周りの人たちを感動させてくれたり、成長させてくれたりすることが、彼らがこの世に生まれてきた意味であり、それが幸せだと言えるのか」ということです。
しかし、それはやっぱりまだまだ以前の私の「どこまでいっても他人のこと」の域でしかないことであるような気もします。
今は、自分が介護タクシーの仕事をしながら、彼らの幸せな人生をコーディネートするお手伝いが少しでもできないものであろうかと、様々な現場の人の話を聴きに行くことを繰り返しながら試行錯誤しています。
もしも可能ならば、彼らが卒業するまでの三年間は、ここで働かせていただき、この養護学校で多くのことを学んで、彼らと一緒に卒業したいと思っています。
参考文献 「働く幸せ」(仕事でいちばんたいせつなこと)
日本理化学工業(株)会長 大山泰弘著