「べ・・・しょ、くん・・・」
「・・」
事務所の前には、すごくびくびくしながら声をかけてきた一抹麻衣子が立っていた。
返事はせずに、立ち止まってやった。
立ち止まるだけでも、俺って偉大じゃない?
「え・・っと、怒って・・る、よね??」
腕組みをして、首を傾げてやると、一抹はまた、びくっと縮まる。
「・・・・さあね?」
でもさぁ、教えてあげといたほうがいいかもしれないから言うけどさ。
「俺、自分勝手なやつって、嫌いなんだよね」
俯いて、黙る一抹。
これぐらいで、いいか。めんどくさいし。
「もう用はないでしょ?、俺、忙しいから」
そう言って、事務所に入っていこうとすると。
「待って!!」
必死な声。
次の瞬間。
カチリ。
小さな、・・聞きなれた音が聞こえた。
ついに、きたな。
頭の中でそう思いながら。
急いで、拳銃を取り出すと。
響いた銃声。
「・・・・・やっぱりね」
拳銃を構えて、振り返れば、拳銃をこちらに向けている、・・一抹。・・・いや。
「急に、幕を下ろしたな。一抹・・・いや、前田」
俺の言葉にびくっとするものの、さっきまで、びくびくと俺の顔色を窺っていたのとは、百八十度違う顔。
「バレてたのね」
「あぁ、いつ、こうなるかと思ってた」
「いつからよ」
「・・・・・そうだな、これをくれたときかなあ?」
拳銃をお互い向けあったまま。
片手で、今日はつけていない、金色の十字架を、ポケットから出して、見せる。
「・・」
「何が目的で、一抹になりすましてたんだ?」
「・・・・・その、“一抹”のお願いだったからよ」
「・・」
前田の構えている拳銃は少し震えているように見えた。
「俺を殺せっていうお願いか?」
「違うわ」
視線を宙に彷徨わせてから、前田は言う。
「ずっと前から、お願いされてたの。・・麻衣子から」
「・・何をだ」
また銃声。
