スポーツとは不公平だ。

 例えば、バレーやバスケ・・・一般的に身長がものを言う世界である。

 自らの体格については、努力次第で克服できるものではない。

 ならば、体格で不利な者はそれを補えるように工夫するしかない。

 

 ドラゴンズの山本拓実投手・・・

 関西の有名な進学高の出身であり、随分と話題になったが身長は167cmである。

 ここまでのスペックなら、大抵の大人はプロ入りを勧めないのではないか。ポジションが投手なら、なおさら・・・

 プロ入り前から山本拓実投手に関心を持ったのは、かの小関順二氏が「ドラフト2位」候補としてリストアップしていたからである。

 高く評価する人がいるならば、小柄な山本拓実投手には「何か」があるのだと・・・

 

 さて、一年目オフの個人的トレーニングにおいて、ドラゴンズのルーキーは思い思いのスタイルで臨んだ。

 自主トレというと、少人数のグループで、あるいはパーソナルトレーナーと一緒に、そして単独で行っている者もいる。

 一年目ならば、オフの過ごし方は試行錯誤であり、先輩のトレーニングに参加することが順当だと思う。

 単独でのトレーニングでは、自らに「甘え」が出てしまうような気がする。

 さて、同期入団の石川翔投手、清水達也投手は柳裕也投手とともに吉見一起投手の指導を受けオフを過ごした。

 一方で、山本拓実投手は阪神の才木投手と自主トレを行った。チームメイトと過ごすことなく・・・

 

 体格で劣る者は、何か「他で勝るもの」を得なければプロの世界では生きていけないだろう。

 自分よりも上背が勝る同期生と一緒にトレーニングを行わなかった理由の一つには、人と比べることなく、いや、自分にないものを求めるのではなく、自分自身で「他で勝るもの」を見つけたかったのではないかと思う。

 

 今シーズン、山本拓実投手は3勝をマークした。

 この成績に満足はしてはいまいが、自信を深めたのではないか。

 このオフには、新しい変化球(スラッター)を試すとともに、トラックマンでその球質の精度を確かめているという。

 来シーズンは、一年を通してローテーションを守りたいとの決意だ。

 

 小柄な投手が小気味いい投球で、大きな打者たちをきりきり舞いさせる。

 想像するだけでも、山本拓実投手の登板が今から待ちきれない自分がいる。