私は蝶

この世で一番長く生きた蝶

あなたに恋をした蝶


あなたが目覚めるまで

この柔らかな羽で 優しい風を呼ぼう

暗い顔で水面を見つめてるなら

笑ってくれるまで僕は踊る様に

水面を跳ねるサカナになろう

帰る道を忘れたならば

鷹になって迷いの森さえ導きましょう

探しても 探しても

見つからない物を探す旅に出たならば

白馬となって あなたを背に

どこまでも駆けていこう


やがて

時間があなたを変えて行くなら

春がくる度に

満開の花となり

ココロを鮮やかに染めましょう

あなたの時が

終わりを迎えた時は

老いた神父となり

この命尽きるまでともに居ましょう

もし

最後の願いがあれば言ってください

私がきっと叶えましょう




やがて

時は過ぎ


年老いた神父が、しっかりと老婆の手を握り、最後の願いを彼女に問う。

その問いに、老婆はかすれた声で

「あなたはあなたのままでいいよ」


蝶にかかった魔法は解け、ボロボロになった羽の老いた蝶に戻った。

「やっと会えたね…」


静かに息を引き取った老婆の胸に、羽を休める蝶もまた、その生涯を閉じた。

ボロボロの羽の蝶と年老いた少女は、なぜかとても幸せそうに見えた。その日、夜空には二つの星が、寄り添うように浮かび、いつまでも輝き続けていた。



恋をして

全てを捧げた蝶は

最後の願いで 本当の自分に戻った。
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