再会してまだ間も無い頃のこと。

彼が未だ警戒心、或いは猜疑心を拭い切れぬ頃のこと。


一緒に電車に乗り込んだ三人は、並んで座ることはありませんでした。

彼女はひとり、兄妹と向かい側の席に座ります。


「こっちに座ればぁ?」と誘いをかけられた彼女はこう答えます。



「私はこっちでいいよ」


「見ているだけでいい」


瞳が湛える色は優しげでありながら、寂しさや諦めが入れ混じったかのようにも感じられるものでした。




向かい合いつつの応酬を経て、彼はこう思います。


「今の関係だって、

 いつ壊れてもおかしくないくらい

 脆いものなのに」





この頃のことを思い出すと、

もう泣くしかないのです。



ありがとうございました。