4回に分けて、5巻第3話における館花紗月と渡直人との関係性について考察します。今まで本エピソードは重要性の割にちゃんとした考察をしていませんでした。今更すみませんm(_ _)m

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最初の3回はエピソードの考察、最後の回はそれを受けて関係性の考察を行ないます。

今回はエピソード考察の2回目になります。



エピソード考察

青字が作中の記述、赤字が考察です。

番号は前回からの続きになります。ご了承下さい。

11 渡直人は顔を真っ赤にし、目も見開いて非常に狼狽した表情となり、「いや、いいって!!」と館花紗月に言うも、彼女は「何?別にやらしーことするわけじゃないんだから、変に意識しないでじっとしててよ。」と言い、渡直人は「~~~~っ」と館花紗月にやり込められた時の反応をする。

(いつものようにやり込められる)

渡直人としては性的な雰囲気を感じ取ったのでしょう。しかしながら、それを館花紗月に見透かされ、言葉巧みに動きを封じられてしまいました。

12 渡直人は館花紗月から足マッサージをされながら、「もしや新しいバイトはこういう仕事なのか!?」と考える。館花紗月が強く足の裏を押し、渡直人は「痛っ」と絶叫する。館花紗月は「ゴメン、いつも自分の足やる時の強さでやっちゃった。力加減弱くするね。」と言い、足マッサージを続ける。館花紗月はせっせっと汗を滴らせつつ渡直人の足を揉みながら、「私もバイト始めたばっかの頃は足にキて辛かったけど、しばらくしたら慣れるよ。」と渡直人に向かって言う。胸の膨らみや太ももの内側が渡直人の目に入るような姿勢であり、渡直人は顔を赤らめ「……」と目をそらす。

(足裏からふくらはぎへ。遡る手先。そして見せつける肢体)

館花紗月は渡直人の劣情を刺激しようとしているのでしょう。胸元を強調し、そして太ももの内側を見せるなど、明らかにそのように振舞っています。絵ではよく分かりませんが、渡直人の足先は、館花紗月の胸の柔らかさを感じていたのかもしれません。

13 館花紗月は渡直人のズボンの裾をたくし上げ、ふくらはぎを揉み始める。そして、「少しは楽になってきた?」と渡直人に問いかける。渡直人は怯えに似た表情を浮かべ、無言で目をそらす。館花紗月はふくらはぎを揉みながら、上気した表情で渡直人の顔を見上げ、「直くん、気持ちいい?」(普段と異なり可愛いフォント)と問いかける。渡直人は完全に赤面し、汗を滴らせつつ、怯えたような表情で館花紗月を見る。

(快楽とは?そして怯え)

館花紗月の行動は徐々にエスカレートしています。当初は足裏のマッサージだったのが、今やズボンの裾をたくし上げてのふくらはぎマッサージになっています。

「直くん、気持ちいい?」の台詞は、フォントの形から察するに、艶かしい声で発せられたものではないでしょうか。赤らみ汗ばんだ表情や雰囲気と相まって、渡直人にその先のことを想像させよう、そういう気分にさせようとしているのでしょう。渡直人は怯えの表情を浮かべつつも制止することも忘れ、魅入られたかのように為すがままにされています。館花紗月の態度に圧倒されているのでしょう。

14 館花紗月は渡直人に「どうしたの?黙っちゃって。私に何か聞きたいコトあったんじゃないの?」と問いかける。渡直人は赤面し顔を逸らす。

(危険な質問、そして太ももへ)

この質問は、おそらく館花紗月の罠なのでしょう。渡直人が何か質問しようものなら、言葉巧みな館花紗月に更に追い込まれていたでしょう。

(以下、あくまで私の妄想です)

例えば渡直人が「どんなバイトしてるんだ?」などと聞いたら、「どんなバイトしてると思った?いやらしいことだと思った?直くん、どんな想像してたの?教えてよ」みたいに逆に聞かれ、想像していたことを洗いざらい言わされて、更に身動きが取れなくなるでしょう。

あるいは、「何でアブないバイトするんだよ?」と言おうものなら、「そんなに私のことが心配なの?すごく嬉しいよ。嬉しいけど、でも私って直くんの何?そんなに心配してくれるなんて、私のことホントはどう思ってるの?」みたいに好意を吐露させる方向に追い詰められていたかもしれません

(以上、忘れて下さい)

15 館花紗月はふくらはぎのマッサージを終え、「次 太もも」と言い、渡直人の太ももにまたがろうとする。館花紗月の目は光を失いつつある。渡直人は「!!」となり、そして、「おい、ちょっと待って、これ以上は明らかにダメだろ!!」と言い、続けて「オレは今、石原さんと」と怯えたような表情で言う。それに対し、館花紗月は「そういうの、よく分かんない」と返す。表情は虚ろになりつつある。

(困惑、苦悩)

足裏から始まった館花紗月の渡直人へのマッサージは、ふくらはぎを経て、太ももにまで遡ってきました。行動がエスカレートするにつれ、館花紗月の気持ちも昂り、そして表情にも徐々に本音が現れてきているのでしょう。目に光のない虚ろな表情は館花紗月の渡直人への断ち難い想い、彼に受け入れられない悲しみと葛藤、そして幼なじみと言いつつも、明らかにそれを踏み外し館花紗月に期待を持たせてしまう渡直人への引き裂かれるような気持ちを示しているのではと思います。

渡直人に彼女のその身を委ね、彼に彼女を愛させることにより、その想いを、その葛藤を一気に精算し、心を引き裂かれるような苦しみから解放されたいとの願いが彼女を突き動かしているのではないでしょうか。部屋に入る時の渡直人の態度、そして彼女の最も欲するものをちらつかせるような渡直人の言葉、それらに確信を得たからこそ館花紗月は行動を起こしたのでしょうから、今更、石原さんが、などと言われても「そういうの、よく分かんない」のでしょう。体勢も危うさを増しつつあります。彼の太ももに跨ることにより、渡直人をもう逃げられないようにするとともに、密着することで彼女の身体を身近に感じさせ、彼の劣情を引き出そうとしているのかな?とも思います。最早、行為に近い体勢を取ることで彼女の切実な気持ち、彼女の火照りを伝えようとしているのかもしれません。心だけの火照りだけではなく。

そして、一線を超えることへの館花紗月の覚悟も伝えているように感じます。

16 館花紗月は渡直人の言葉に対し、目に光のない表情で、「そういうの、よく分かんない。」と言う。そして、渡直人に密着するまで距離を詰め、「距離の取り方?とか。前に直くん『そばにいていい』って言ってたし。」と言う。渡直人は「言ったよ、言ったけど」と力なく答える。

そして館花紗月は言う。

「安心してよ。ギリギリのトコまでしか近寄らないから。」

(ギリギリとは?)

館花紗月の発言から伝わってくるのは、渡直人と身体を重ねることへの期待や喜びなどではなく、彼との関係に対する苦悩、そして戸惑いです。

館花紗月は切実に知りたいのでしょう。「幼なじみ」としての彼女はどこまで彼に近づいていいのか、を。渡直人にとって「幼なじみ」とは一体何なのか、を。

「ただの幼なじみ」と言いつつも、態度の節々には好意を滲ませ館花紗月と一緒に居ることに拘りを見せる。石原紫との交際の始まりに嬉々とした態度を見せつつも、館花紗月の事を心配し遅い時間に訪れて愛の告白と取られても仕方のない言葉を口にする。その態度に館花紗月が覚悟を決めて彼を誘うと怯えたような態度となり、石原紫との関係を口にする。

そんな渡直人の態度に館花紗月は引き裂かれるような気持ちを抱いていたのではないでしょうか。

ギリギリのところまでしか近寄らない、と言いつつも、館花紗月は手を緩めません。渡直人が明確な態度を示さぬ限り、事を進めるつもりなのでしょう。

彼女の手は、渡直人の足の付け根に差し伸べられています。

17 館花紗月は渡直人の太ももに両脚を開いてまたがり、上気したような、そして目に光のないどこか虚ろな微笑みを浮かべ、その右手を渡直人の足の付け根に差し伸べながら、あたかもうわ言のように言う。

せっかく直くんにもらった今の関係壊したくないもん。

だからちゃんと教えて

何をしたら壊れる?

どこを過ぎたら壊れる?

(最早、隠さぬ願望。そして誘惑)

「安心してよ。ギリギリのトコまでしか近寄らないから。」と館花紗月は言いました。しかしながら、彼女の行動は完全に相反するものです。体勢は危うさを増しています。

館花紗月の顔は上気し、潤んだ瞳で渡直人を見つめ、そして両腕で挟み込むようにして彼女の胸の膨らみを見せ付けています。渡直人の左太ももに跨り、両脚を大きく広げて内股を見せつけいます。広げた両脚の間は、最早正視に耐えぬ、際どく危うい状況なのでしょう。

言葉に出さないだけで、館花紗月は最早、彼女の意図、願いを隠すつもりはなく、渡直人を行為へと誘っているのでしょう。その態度に最早躊躇いは見られません。伸ばしつつある手の先は、太ももではないのでしょう。

もし、渡直人が少しでもその気を示せば、瞬く間に均衡は崩れ、館花紗月はその身体で彼を感じようとするのでしょう。


館花紗月の言う「今の関係」とは何でしょうか。関係の基礎となるのは、4巻第4話で渡直人が語りかけた「幼なじみ」なのでしょう。しかし、その後、そしてこのエピソードでの2人の関係は、それまでとは明らかに異なります。館花紗月が言う「今の関係」として考えられるのは、以下の4つのうちのいずれかと思われます。

①幼なじみ

3巻以前の関係です。

②幼なじみ+家族より心配する関係

4巻第4話での渡直人の発言による関係です。


③幼なじみ+家族より心配する関係+好意

4巻第5話や、5巻第2話などで見られる好意混じりの関係です。

④幼なじみ+家族より心配する関係+好意+本エピソードでの言動

本エピソードでの関係です。


館花紗月のコミュニケーションのスタイルは、キスなど突出した行動を取るときもありますが、基本的には自分から踏み込むことなく、相手から許された領域におそるおそる踏み込んでいくようなものだと思われます。いわば、「鏡の論理」です。「鏡の論理」とは、『貴方が右手を差し出すならば、私も右手を差し出しましょう。貴方が私を抱きしめるならば、私も貴方を抱きしめましょう。貴方が私のもとから去るなら、私も貴方のもとから去りましょう』といった行動パターンです。自分から先に相手に踏み込むのは関係を壊しそうで怖いから、相手の行動に合わせて自分も相手に踏み込む、という行動パターンです。あたかも鏡に写る相手の影のように。

館花紗月がここまでの行動に出たのは、渡直人の言動から、最早、彼は恋人として彼女を求めているとの確信を抱いたからではないでしょうか。

夜遅くに一人で女性の部屋を訪れ、帰りは遅くなっても問題なく、他の女性のことも気にせず、そして取りようによっては求愛どころか求婚とも取れる発言をする。「幼なじみ」への態度というには過剰過ぎると思われます。だからこそ、館花紗月も夜遅くに訪れて愛を囁く「恋人」に対しての愛情表現をしているのではないでしょうか。彼に恋い焦がれ、より深いつながりを求める「恋人」として振る舞うことが彼の行動からみて釣り合いが取れると思ったのではないでしょうか。ですので、館花紗月がこの時点で認識している「今の関係」とは、④なのかと考えます。


せっかく直くんにもらった今の関係壊したくないもん。」とは、渡直人がこの夜に示した態度に釣り合った、館花紗月の踏み込める範囲とは一体どこまでなの?と訪ねているのでしょう。

だからちゃんと教えて」、「何をしたら壊れる?」、「どこを過ぎたら壊れる?」とは、端的に言うと、恋人として貴方と愛し合っていいの?との確認なのではないでしょうか。

この夜、渡直人が館花紗月に示した態度は、彼女が渇望していたものだったのでしょう。得難いその関係を彼女はもう失いたくない、そして、それが「恋人」を意味するのならば、これから「恋人」同士になりたい、それでいいんだよね?と確認したかったのではないでしょうか。


18 渡直人は館花紗月の問いに答えることはなく、彼女の態度に圧倒されたかのように、怯えたような表情で赤らめた顔で彼女を見る。

渡直人の表情には、喜びや高揚感、あるいは欲望の高まりなどは見受けられません。渡直人の心に去来する感情は、驚き、戸惑い、そしてただならぬ館花紗月の様子に対する怯えなのでしょう。うわ言のような館花紗月への質問にも、最早どう答えたらいいのか判断もつかない状態なのでしょう。

19 館花紗月は渡直人に息のかかる近さまで顔を近づけ、悲しそうな、そしてどこか追い詰めらたような必死な表情で渡に問いかける。


「幼なじみの境界線はどこ?」


(哀願)

館花紗月の表情からは、愛しい男性と距離を詰めつつある喜びも、身体を重ねることへの期待も、そして高揚感も感じられません。感じられるのは切実さであり、悲しみであり、そして混乱です。館花紗月を受け入れる素ぶりを見せず、怯えと混乱の表情を浮かべるばかりの渡直人に困惑し、そして彼女を受け入れてくれないことに悲しみを抱きつつあるのでしょう。

幼なじみの境界線はどこ?」、この問いかけは、館花紗月の悲しみ、苦しみ、混乱、そして渡直人への愛おしさなど、様々な想いが詰まった、絞り出すような言葉なのでしょう。感情を露わにすることのない館花紗月にとっては精一杯の表現なのでしょう。色んなことを尋ねたいのでしょう。


   どうして私を受け入れてくれないの?


   私は恋人じゃないの? 


   私のことを一体どう思ってるの?


   恋人じゃないなら、何であんなこと言うの?


そして、渡直人に哀願しているのではないでしょうか。


   私を愛して、と。




長くなりましたので、今回はここで終わらせて頂きます。


最後まで読んで頂きありがとうございました。