今回は、3巻第1話序盤における館花紗月と渡直人との関係性について考察します。



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エピソード概要

渡直人と館花紗月は徳井の企画で石原紫や他のクラスメートと一緒に海への旅行に行く。

海に着いて水着に着替え、そして渡直人は石原紫との仲を深めようと奮起したところ、館花紗月がナンパしてきた男性と揉めていたため、渡直人は彼女を引っ張るようにしてその場を離脱する。

(強制離脱)

波打ち際まで退避した後、渡直人は館花紗月に対し、「あーいう時は、逃げるなり助けを求めるなりしろよ、迎え撃つな!!百害あって一利なしだぞ!!」と説教をするも、館花紗月は説教など何処吹く風といった風に「あのね、水着これにしたんだ。どう、かわいいい?」と甘えた感じで渡直人に聞く。渡直人は「話聞けよ!!」と怒り、館花紗月はしょんぼりとなる。

そして、館花紗月は渡直人に背を向けながら、不機嫌そうな口調で石原紫のところに行けば?的なことを言う。渡直人はそのつもりだと言いつつも、館花紗月に他の女子と泳ぎに行かないの?といったことを尋ねたところ、彼女は海に来たことは初めてであり、泳いだこともないと告白する。渡直人は驚き、家族と行くとか、あるいは学校行事で行くことなどなかったか聞いたところ、ないと答える。そして、以前は学校にもあまり行っておらず、水泳の授業も休んでいた、とも話す。その話を聞き、渡直人は自分自身が館花紗月のことを知らな過ぎること、また、彼女がこの6年間どうやって生きてきたのか、そもそも6年前に出会った時の彼女のこともほとんど知らないことに気付いてしまう。

(今更…)

渡直人は「でも、せっかく海来たんだからちょっとは入りたいなあ、気持ち良さそうだし」という館花紗月を見ながら何やら考える。館花紗月の「直くん聞いてる?」との呼びかけに渡直人は「お、おう!」とハッとしたように答え、そして「初めてなら一人で泳ごうとすんなよ危ないから」と照れたような感じで言う。そこへ徳井がやって来て、渡直人に石原紫と買い出しに行くように言う。渡直人は去り際に「あ、あのさ、紗月」、「後でちょっとだったら一緒に海に入ってやるから」と申し訳なさそうな表情で言い、館花紗月はそれを聞き、驚いたような表情をした後、頰を赤らめ、とても嬉しそうな表情でコクンと頷く。

(お誘い、驚き、至福の笑顔)

お互いの意図・目的等

館花紗月 

館花紗月の意図としては、前半は渡直人に甘えたかったのでしょう。渡直人に気に入ってもらえるような水着を頑張って選んだので、可愛いなどと褒めて貰いたかったのでしょう。

(甘える館花紗月、怒る渡直人)

しかし、渡直人は説教するばかりで彼女の話に耳を傾けてくれなかったので館花紗月としてはむくれ、そして渡直人に嫌味も言います。しかし、身の上話をしてきるうちに渡直人の態度が変わりつつあるのに気付いたのでしょう、ハッキリとは言わないまでも、渡直人に一緒に海で泳ぎたいとの態度を見せています。「でも、せっかく海来たんだからちょっとは入りたいなあ、気持ち良さそうだし」の発言、そしてそれに続く「直くん聞いてる?」は、明言こそしないものの、きっと、一緒に泳ぎたいなとの渡直人へのお願いだったのでしょう。

(きっと精一杯の自己主張)

館花紗月がここまで露骨に自分の要望を伝えることも珍しいです。渡直人と海に来ることがよほど楽しみだったのでしょう。そして、去り際に渡直人が後で泳ごうと言ってくれた時の態度は本当に嬉しそうです。石原紫と買い出しに行ってしまうことになってしまったので、一度は諦めたのでしょう。しかし、渡直人は戻ったら泳ごうと言ってくれたので彼女としては予想もつかぬ展開だったので驚いたのでしょう。「コクン」と何も言わずに頷く様は6年前の彼女のようです。これがおそらく館花紗月の「素」の状態なのでしょうし、思わず「素」に戻ってしまうほど嬉しかったのでしょう。

渡直人

渡直人の本エピソード当初の感情は、館花紗月に対する心配なのでしょう。クラスメイトたちが助けに入るのを躊躇してしまうような柄の悪そうなナンパ男達から反射的に館花紗月を救出したのですから、彼としても館花紗月のために無我夢中で行動したものと思われます。そして、説教も心配に基づくものだったのでしょう。甘えてばかりの館花紗月にイラッとするのも仕方ないと思います。

しかし、館花紗月の話を聞いているうちに見る見る態度が変わっていきます。只事ならぬ館花紗月の境遇が心配にもなったのでしょうし、そして幼なじみと言いつつも、館花紗月のことをほとんど何も知らない自分自身に愕然ともしたのでしょう。海に来たのも初めてという彼女の境遇に同情にも似た感情を抱いたのかもしれません。そして、館花紗月を一人で海で泳がせてしまうことが心配にもなったのでしょう。

(心配)

館花紗月の事を何も知らなかった申し訳なさ、境遇に対するある種の同情、そして、海に入ったことのない館花紗月を一人で泳がせてしまうことへの心配、これらの感情が渡直人に館花紗月を後で一緒に泳ごうと言わせたのではないでしょうか。また、渡直人の表情を見るに、嫌々という感じではありめせん。心配が好意を呼び覚ましたのかな?とも思われます。


関係性の変化に関する考察

このエピソード前半においては、2人の気持ちは実に見事にすれ違ってしまっています。渡直人は館花紗月の言動に対する不安に突き動かされているのに対し、館花紗月は渡直人に甘えたい気持ちで一杯でした。お互いの気持ちの方向性がまるで違うので、渡直人は不機嫌になり、館花紗月はむくれてしまいます。しかし、館花紗月の海に来たのは初めて、といった話を聞くうちに渡直人の態度はどんどん変わって来ます。理由としては前項で述べたとおりですが、館花紗月を一人で泳がせることの心配が、程度はまだ少ないかもしれませんが、彼の中の館花紗月への好意を呼び覚ましたのかもしれません。後で一緒に泳ごうという彼の言葉を聞いた館花紗月は作中屈指の幸せそうな表情をしています。

作中でようやく2人の気持ちが噛み合ったシーンと言えるのではないでしょうか。


しかし、結局渡直人は戻って来ず、約束は果たされることはありませんでした。館花紗月としては大変悲しかったのでしょうし、そして落胆もしてしまったのでしょう

(約束は果たされず…)

最後まで読んで頂きありがとうございました。