今回から複数回に分けて、特別編その6として、第3のヒロイン(?)である梅澤真輝奈について考察したいと思います。

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最初にざっくりと概観として紹介した上で、作中の言動について列挙し個別的に考察した後に、性格等について考察したいと思います。


概観

梅澤真輝奈は4巻第5話で初登場しました。一人称は「アタシ」です。渡直人の中学時代の部活(陸上部)の後輩であり、華々しく活躍していて地元(信州)の新聞が取材に来るなど有名人的な存在でした。推薦でスポーツの超名門校である東京の「聖ソラリナ女子学院」に進学しました。

渡直人とはバイトの面接で再会し、以後、何かと絡んで来ています。

可愛いらしい容姿であり、5巻第1話では渡直人に対して同級生達が「あんなかわいい後輩いる」と羨んでもいました。胸のサイズは館花紗月によると「A」らしいです。勝気で目立ちたがり屋な反面、実は男性と交際したことはないなど、ギャップのある面を見せることもあります。渡直人のことを見下している反面、気になっているような態度を示しています。


作中の言動

作中の記述は青字で、個別的な考察は赤字で記述します。

4巻第5話にて、バイトの面接前の応接室のシーンにて初登場。渡直人が応接室に入った時、梅澤真輝奈はソファに腰掛けたまま眠っていた。

(初登場)

渡直人はどこかで見たことあるよな?と思い顔を近づけて覗き込もうとしたところ、梅澤真輝奈は目覚め、驚いて絶叫し、そして「、キスしようとしましたよね?」と問いただす。そこへバイト先の店長が駆け込んで来たので、梅澤真輝奈は「寝てる間にこの人に襲われそうになりました!」と告げ口する。

梅澤真輝奈、初登場です(この時点ではまだ名前は明かされていません。謎の美少女です)。渡直人も顔を近づけ過ぎであり、梅澤真輝奈が驚くのも無理はないと思います。しかしながら、以後の展開では彼女の自意識過剰さや思い込みの強さ、そして過剰とも言えるアピールの強さが見て取れます。「顔を近づけるキスしようとする」ってのもやや強引な解釈であり、男子がすべからく自分に興味を抱いているという思い込みの表れかなと思います。襲われそうになった、というのも一種の被害妄想的な印象を受けますし、また、思い込む癖の強さを感じます。 

店長が事情を聞くと渡直人を別室に連れて行った後、店長が落としていった履歴書を見て、驚いた様子で、「渡直人?」と言う。

自分に迫った(?)男子が中学の部活の先輩であった渡直人だと気付いたのでしょう。

4巻第6話にて、渡直人の高校の正門にやって来る。居合わせた男子から連絡先を聞かれて快諾するも、「その前に、2年の渡直人をここに呼んでください。」、「後輩の梅澤真輝奈がわざわざ会いに来たって、渡先輩にはそう伝えて下さい。」(黒塗り台詞)と言う。

(わざわざ来たよ)

連絡先を聞かれたときの対応に慣れているような様子から、自分が男子の興味を惹くことを当然だと思っているのでしょう。そして、「わざわざ会いに来た」という言い方から、渡直人を見下している態度が見て取れます。黒塗り台詞であることから、何らかの穏やかならぬ底意もあるのでしょう。

梅澤真輝奈は、学内食堂で渡直人、館花紗月、そしてクラスメイト達の前で自己紹介をし、中学の時は渡直人と同じ陸上部だったことを言う。クラスメイト達は感嘆し、一緒に写真を撮らせてなどと頼み、梅澤真輝奈は快諾する。渡直人は梅澤真輝奈の中学時代の活躍ぶり(足が速いことで有名人であり、テレビや地元の新聞も取材に来ていて、「陸上長距離の女王」と呼ばれていたなど)などを説明する。渡直人は「もともと勝ち気で目立つ子ではあったけど、高校デビューで一層派手になったような。」と内心で思い、また、「女子は皆、月日が経つと変わってしまうものなのか」と館花紗月のほうを見ながら溜息をつく(館花紗月は「何?人の顔見て溜息ついて」と問い、渡直人は「なんでもない」と答える)。

自己紹介です。性格は以前から変わらず、そして中学の時と比較して見た目は随分と派手になったようです(渡直人的には館花紗月も随分変わってしまったってことなのでしょう。「昔はもっとだんまりで大人しくて」と1巻第2話で館花紗月に述べていました)。梅澤真輝奈は他人にチヤホヤされるのも当然だみたいに思っているようです。

梅澤真輝奈はクラスメイト達に渡直人の高校に来た理由を尋ねられ、渡直人とはバイトの面接で再会したと答え、そして「アタシも先輩もバイト合格ですって。今朝、店長から連絡ありました。」(黒塗り台詞)と渡直人に告げる。

(吉報)

また、店長が渡直人と連絡が取れず困っており、梅澤真輝奈的には「こーゆーことは少しでも早く知りたいかなって。アタシ今日ヒマだったし。」と言う。

黒塗り台詞です。笑顔というよりもドヤ顔に近いのかな?と思います。重要な情報をわざわざやって来て知らせてあげたことの自慢に近いような感情を抱いていたのかな?そして、わざわざ教えに来たんだから感謝して、といったような底意もあるような気がします。店長が連絡に苦慮していたの下りは、連絡一つ付けるのに面倒な渡直人への見下し的な気持ち、そして店長に代わってわざわざ伝えにきた私って偉いでしょアピールのような気がします。

なお、部活もあるはずなので本来はヒマではないのでは?と思ってしまいます。

梅澤真輝奈は、渡直人が「これで夏休みバイトできる。」と喜び、館花紗月が「おめでと」と祝福しているのを見、「」と考えてから、「アタシ、いいこと思いついた!!」(やや光のない目)と言った後、渡直人の腕を取り、「これから2人でスマホ買いに行きませんか?」と誘う(館花紗月はムカッとした感じ、石原紫は呆気に取られた感じで2人とも目に光なし)。

(第1回「いいこと思いついた」)

そして、梅澤真輝奈は「迷惑ですか?もしかして先輩、特定の彼女さんとかいたりします?」(黒塗り台詞)と言う。渡直人はモゴモゴ言う。クラスメイト達が渡直人に彼女なんていないと言うと、梅澤真輝奈は満面の笑みで「ですよねー」と言い、「じゃ渡直人持って帰りますね。同郷同士、積もる話もありますので。」と渡直人と腕を組んで去って行く。

おそらく、梅澤真輝奈としては、バイトの合格について渡直人が梅澤真輝奈にすぐにお礼を言わず、館花紗月という他の女子と一緒に喜んでたのが気に食わなかったのでしょう。望んでいた反応が返って来なかったことへの反感、渡直人への興味と軽い嫉妬、そして人間関係への飢えから渡直人を独占してしまおうという考えになったのではないでしょうか。また、彼女います?質問は、館花紗月への牽制のような気がします。

(無遠慮、反発、驚愕)

梅澤真輝奈は後々も館花紗月を渡直人の彼女かと疑っています。この場で一番ダメージを受けたのは彼女(仮)の石原紫みたいですが。「ですよねー」というのも失礼な言い方です。後のシーンで口にするように、渡直人は彼女もいない「パッとしない高校生活」を送っているであろうという先入観もあったのでしょう。

場面が変わって開口一番、梅澤真輝奈は「で、渡先輩はアタシと付き合いたいんですか?」(黒塗り台詞)と渡直人に尋ねる。

(論理の飛躍)

渡直人が困惑していると、梅澤真輝奈は「だって寝ている間に唇を奪おうとしたしヒキョーです。」と言う。渡直人が否定するも、「えーっ、久々に再会した後輩が前より可愛くなって気持ちが抑えられず店って感じじゃないんですか?」と言う。

バイト面接の時に渡直人は久々に再会した梅澤真輝奈に好意を抱いたためキスをしようとした、そして渡直人は彼女との交際を望んでいると彼女の中でストーリーが作られていたようです。思い込みの強い性格、都合のいいように物事を解釈する癖、そして自分が他者から好意を向けられて当然だといった自意識の強さが感じられます。

梅澤真輝奈は「でもアタシ可愛く成長したと思いません?」と渡直人に問い、渡直人は「ああ、うん、まぁ。相変わらず?」と答える。梅澤真輝奈はドヤ顔になる。渡直人が推薦で名門校に進学したことを褒めると、梅澤真輝奈は「私の実力からしたら当然です。」と答える。

自意識過剰で、そして他者からの賞賛をとにかく求める態度が現れています。

渡直人が学年も違い接点もほとんどなかった自分のことをよく覚えていたなと梅澤真輝奈に言ったら、彼女は「」の後、「まあ細かいことはいいじゃないですか。」と遠くを見るような目で答える(目に全く光なし)。

(遠い目)

そして、梅澤真輝奈は、東京で渡直人と会うとは思っていなかったことを言い、また、渡直人が中3の時に両親が亡くなったことにより急に転校したことを述べ、そして今までの苦労の有無について渡直人に問い、そこで、「あ、もしかして私、無神経な話題振ってます?」と気付いた感じで口を押さえながら言う。

梅澤真輝奈が渡直人のことを覚えている理由は不明ですが、目が光を失っていることから、あまりポジティブな理由ではないのでしょう。渡直人が転校した時のことを覚えていますが、当時から渡直人に興味などがあったから覚えていたのか、このことがきっかけで渡直人のことを覚えていたのかは分かりません。そして、デリカシーの無さも伺えます。

10 渡直人はスマホを購入する。梅澤真輝奈は「それじゃ早速連絡先交換しましょ、アタシが記念すべき第1号になってあげます。」と言うものの、渡直人は石原紫に電話する。梅澤真輝奈は怒ったような表情で「先輩、今誰にかけたんですか?」(黒塗り台詞)で質問し、渡直人は照れながら彼女だと答える。梅澤真輝奈は「えー、さっきは彼女いないって言ってたじゃないですか」と言い、館花紗月が彼女かと疑うも、渡直人はそれを否定する。梅澤真輝奈は「ですよねー、あの人美人だし渡先輩じゃ釣り合わないですもん。」と言う。

(館花紗月彼女疑惑)

「記念すべき第1号になってあげます」など、言葉の節々に見下してる感を入れてきます。そんな見下している渡直人に彼女がいるのは意外だったのでしょう。また、渡直人の彼女が美人じゃないというのは梅澤真輝奈の願望でもあるのでしょう。パッとしない直人に美人な彼女などいたら、梅澤真輝奈のコンプレックスが刺激されてしまうのでしょう

11 帰ろうとする渡直人に「本当に帰っちゃうんですか、つまんない」と言い、「むー」とむくれたような表情をする。渡直人が去り際に「梅澤は部活との両立大変かもだけど、夏休みバイト頑張ろうな」と言う。梅澤真輝奈は完全に光のない目となり、そして「渡直先輩、なんか、幸せそう」(黒塗り台詞)と言う。

(別れ際の目)

目の光がなくなったのは、渡直人が部活の話をしたためでしょう。今の彼女にとっては、部活の話は禁句なのでしょう。最後の台詞は、渡直人はあまり幸せな生活を送っていないであろうという彼女の期待を裏切ったことへの反感含みのものなのでしょう。

12 高校の女子寮に戻った梅澤真輝奈は、女性(多分部長)から、門限に遅れたこと、ずっと部活に出ないことを叱責され、そして「お前、そろそろ本当にヤバいぞ」と言われる。梅澤真輝奈は目に光もなく無表情。女性は夏の強化合宿の話をするも、梅澤真輝奈はバイトを入れたと断る。その様子を見ていた他の部員たちは陰口を叩き、そして「やる気ないなら辞めればいいのに」、「どうせいてもいなくても同じなんだから」と言う。

(孤立)

梅澤真輝奈の窮状が描かれています。スポーツ推薦で進学したはずなのに、タイムが伸び悩んだことによりやる気を失い、部活にも出なくなってしまったようです。推薦で入学したので、現状のままだと退部や退学などといったことにもなり兼ねないのではないでしょうか。そして、人間関係においても孤立しているのでしょう。何より問題なのは梅澤真輝奈の態度なのでしょう。叱責を受けている時も全くの無表情であり、また、強化合宿の話もバイトを理由にすぐに断るなど、ある意味開き直りとも取られかねない態度です。 

13 梅澤真輝奈は部屋に戻り、服を脱ぎ捨ててベッドに横たわり、「でも意外だったな、渡先輩が彼女持ちだなんて。」、「あの渡先輩のことだから、もっとパッとしない高校生活送ってると思ったのに。」、「彼女って言っても、どうせ大したことない女でしょ?」とゴロゴロしながら考え、そして「そうだ、またいいこと思いついちゃった!!」、「渡先輩には今カノとさっさと別れてもらって、アタシの暇潰しのオモチャになってもらおーっと。」と、目に光は無く、笑ったような表情で言う。

(第2回「いいこと思いついた」)
先ほどの女性(部長?)からの叱責に関しては何も考えず、渡直人のことを考えています。渡直人のことは現実逃避のネタなのでしょう。そして、相変わらず渡直人を見下した態度を取っています。わざわざ渡直人の高校に行ったのも、渡直人が冴えない高校生活を送っているのを確認しようと思ったからではないでしょうか。「あの渡先輩」と言っていますので、元々中学の頃から見下しバカにしていたのでしょう。言い方は悪いかもしれめせんが、自分が追い詰められた状況であり、自信を喪失して状況であるので、安心して見下せる相手欲しさに渡直人に接触してきたのではないでしょうか。そして、見下せると思った渡直人に彼女がいることが面白くなかったのでしょう。せっかく自分が出向いたのだから、渡直人はもっと自分に興味を示し、魅了され、そして交際を求めるなどすべきだなどと思っていたのかもしれません。また、渡直人に彼女がいることに一種のコンプレックスを抱いたのかもしれません。そのコンプレックスを払拭するため、自分の魅力を見せつけて今カノと別れさせようなどと考えたのかなと思います。 

梅澤真輝奈が抱えている挫折感、孤立感、そして自己無価値感を、見下せる相手である渡直人との関わりで紛らわそうとしているように思えます。


総括

梅澤真輝奈は一見すると、明るく活動的で屈託のない性格のようであり、また、バイトの合格をわざわざ知らせに来たのも親切故のように思えます。しかしながら、5巻第1話終盤で描かれている彼女の状況を鑑みると、全く異なる様相が見えてきます。部活において思うように活躍ができなくなり、熱意を失い、そのため推薦で入学したという立場が危うくなりつつあり、そして人間関係についても孤立しています。何よりの問題は、梅澤真輝奈がその状況に正面から向き合おうとせず、現実逃避してしまっていることでしょう。渡直人への接触は、彼女がコンプレックスを抱かない、彼女にとって安心な相手であるといった歪んだ動機に基づくものであるように思えます。

悪い言い方になってしまいますが、今の自分より不幸な相手、今の自分が見下せる相手欲しさに渡直人に接触してきたのではないでしょうか。


以下、私の主観です。あんま気にしないで下さい。作品を読んでても梅澤真輝奈に対し、何故か嫌悪感は湧いてきません。彼女の態度の底には渡直人への仄かな好意があるから?とも思えます。好意を好意として認めたくないが故の態度なのかもしれません。また、彼女の直面している現状の辛さというものも伝わってきます。中盤までの騒がしさや明るさが、終盤で描かれている彼女の窮状を際立たせ、彼女の抱いている遣る瀬無さもまた感じられます。


長くなりましたので、今回はここまでとさせて頂きます。


最後まで読んで頂きありがとうございました。