その3に引き続き、今回は第4巻に関し、作中の石原紫の主要な言動について抽出し、それらに対して個別的な考察を行いたいと思います。


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なお、番号についてはその3からの続きになります。ご了承ください。

作中の記述が青字個別的な考察が赤字になります。


33 4巻第2話において、石原紫は登校してきた渡直人を人目に付かぬ場所に連れて行き、旅行でのお礼を述べ、そしてモジモジしながら「聞いて欲しいことがあるの、突然でビックリするかもしれないけど、私ね」と告白しようとするも、石原紫は突然現れた男子たちに連れて行かれてしまう。

(告白しかけるも拉致られる石原紫)

旅行での館花紗月への予告通り、渡直人に告白しようとしたのでしょう。

34 石原紫は渡直人に声をかけるも、渡直人は館花紗月が徳井と一緒に登校しているのを見て心そこにあらずといった状態であり、石原紫の声は耳に入らなかった。

石原紫の告白はなかなかうまく行きません。

35 放課後、渡直人に一緒に帰ろうと声をかけるも、その日の放課後は美化委員はプールサイドの清掃だったため、また後でと撤退する。

告白のことで頭がいっぱいになっており、気もそぞろです。

36 石原紫は間違って男子更衣室で着替えを始めてしまい、そこに渡直人が入ってくる。他の男子も入って来ようとしたが、渡直人がドアを押さえて何とか阻止。渡直人は更衣室を出ようとするも、石原紫は着替えるまでの間、話を聞いてくれと頼む。初めて会った時のことを話し、そして、「あの時よりずっと渡くんのこと」まで言ったところで教師(?)が更衣室のドアを開け、渡直人は石原紫に覆いかぶさるように押し倒してしまう。石原紫は小さく「好き」と言い、そして更衣室から走り去る。

(告白)

告白のことで相変わらず頭がいっぱいだったのでしょう、石原紫は男子更衣室で着替えを始めてしまいました。そして、渡直人が入ってきて、初めて出会った時の状況の再現となりました。石原紫は勢いで告白してしまったものの、教師(?)が入ってきたこともあり、中途半端に終わってしまいました。

37 4巻第3話において、渡直人は下校時、校門で待っていた石原紫と会う。石原紫は更衣室でのお礼を言い、渡直人は「あの、それじゃ」と言って去ろうとする。石原紫はあっさりと帰ろうとする渡直人の態度に意表を突かれ、「そ、それだけ?」、「つ、つき合うとかそういうのは」と仰天した様子で言い、渡直人は驚いて交際する方面の好きなのか?と尋ね、石原紫は頷いて、「返事はすぐじゃなくてもいいから」と言い、去ろうとする。去り際に校門に頭をぶつけてしまう。

渡直人としては、更衣室での「好き」を、1巻第3話のような、人として好きといった意味で捉えていたようです。何とか誤解は解けましたが、石原紫も何かと慌てまくりです。

38 4巻第3話ラスト~4話の冒頭において、渡直人は石原紫を呼び出し、前日の告白への回答として、「ごめん」と言う。今の状態では石原紫の気持ちに応える自信がない、今、考えていることがあるから返事は少し待って欲しい、と言う。それに対し、石原紫は「待てないよ。」、「私、やっぱり渡くんがいい。そうやって何でも真剣に考えてくれる渡くんがいい。」と言い、自分の気持ちが迷惑でないのならば、夏休みの間でも「お試し」でもいいので付き合って欲しいと言う。渡直人はお試しだなんて失礼ななどと言うが、石原紫は「お願い、ここで引いたら私には何もなくなっちゃう。私は渡くんの家族でも幼なじみでもないから、私と渡くんをつなぐもの 何もなくなるのは嫌なの。お願い。」と言う。

(必死のお願い)

渡直人が何故、すんなりと交際の申し出を受け入れなかったのかの考察は後に譲ります。しかし、石原紫は必死です。何でそんなに必死なの?ということについてですが、やはり館花紗月のことが頭にあるのでしょう。館花紗月に対しては、旅行の時に渡直人に告白すると宣言した手前、やはり焦りもあるのでしょうし、そもそも館花紗月は渡直人とキスしてしまってるのですから、遅れを取っているという意識もあるのでしょう。「幼なじみでもないから」という発言には、館花紗月への対抗意識がにじみ出ているように思えます。

39 4巻第5話において、石原紫は徳井から渡直人がバイトの面接だと教えてもらい、帰る途中の渡直人と駅で会う。一緒に帰る途中、翌日にどこか行かない?と誘い、そしてデートってことだよねと頰を赤らめながら言う。

交際を始めたことの喜び、そして関係を深めることに相当に積極的な様子が見て取れます。

しかし、気になるのが徳井との関係です。翌日の動物園デートもですが、渡直人に関するやり取りを2人の間で交わしているのは正直謎です。

40 動物園デートに渡直人が鈴白を連れてくるのを快く受け入れる。また、お弁当(大部分を母親が作ったとは思われるが)も持ってきており、渡直人はホントいい子だよな、オレなんかには勿体ないなどと考える。

石原紫の心の広さ、優しさなどが描かれている場面です。

41 館花紗月と徳井が3人を付けていたことが発覚する。石原紫は「館花さん」(黒塗り台詞)と館花紗月に話しかけ、館花紗月は「デートの邪魔してごめんね。もう帰るから。」と申し訳なさそうに言い、そして渡鈴白に徳井がアイスおごってくれるってと言い、渡直人と石原紫を2人きりにする。2人になった後、石原紫は渡直人に「ねぇ、館花さんとはもう」と言い、渡直人が「え?」と聞き返したことに対し、「ううん、いいの。気にしないで」と答える。

(抗議、謝罪、そして気遣い)

館花紗月への台詞は黒塗りだったことから、やはり愉快ではなかったのでしょう。そして、館花紗月も申し訳ないと思ったのでしょう、素直に謝り、そして鈴白を引き離して2人きりにしました。石原紫は館花紗月に対する懸念を口に出しかけますが、渡直人の反応はきわめて希薄です。石原紫の館花紗月に対する懸念を認識していないのでしょう。彼のこの手の態度は5巻でも見受けられます。

42 渡鈴白がいない間、ペンギンの檻の前で2人は手を繋ぐ。

(初の手繋ぎ)

2人がぎこちなく距離を縮めていく様、そしてじんわりとした喜びが切々と描写されています。

43 石原紫は自宅にて渡直人と手を繋いだ喜びを噛みしめるも、館花紗月と渡直人はキスまでしていることを思い出し、思いつめた表情となる。そして、後日、薬局にて男女間で何か起きた時用のものを買う(目に光なし)。そして、「はやく夏休みにならないかな」と言う。

(喜び、そして焦り)

渡直人が何度否定しようとも、結局は館花紗月との関係が気になって仕方ない様子です。拙速に渡直人との関係を深めようとしています。


4巻総括

仮とは言え、石原紫は晴れて渡直人と交際を始めました。しかし、何故にそんなに交際したがるのか、そして何故に性急に関係を深めようとするのかが謎です。恋愛に強い憧れを抱いており、そして館花紗月を警戒しているのは分かりますが、それはあくまで表層的な理由であるように感じます。

本質的な理由としては、以下のことがあるのかな?と考えます。

①石原紫の考え方の個癖

渡直人に好意を抱いて以来、ずっと見受けられる傾向ですが、石原紫は基本的に自分の考えに対し軌道修正を行うことはありません。2巻第3話にて図書館で2人で勉強していた場面において、渡直人には「純粋・誠実・優しい」が理想像であるといった発言をしましたが、彼がこれに反するような行動を取っても、渡直人を恋愛の対象から除外しようかと考えたことはありません(館花紗月と付き合ってるのなら諦めようとは思っていたようですが、そもそもそんな誤解を与えるような行動をする訳ですがら、こいつ変じゃない?みたいに資質を疑って軌道修正を試みてもおかしくないとは思います)。また、渡直人の側には館花紗月(友達がいないとかとっつきにくいなどの噂はクラスが違えど女子の間で共有されているでしょう。言い方は悪いですが、「変わった女」として噂が立てられていても不思議ではないと思います。)が張り付いていて、近付けばプレッシャーをかけてくる訳ですから、普通ならば渡直人へのアプローチはリスクがあると考えるのでは?と思います。しかし、そんなことお構い無しに石原紫は「突撃」してきます。恋愛に関しては、一度思い込んだら猪突猛進、軌道修正できず前進あるのみ、問題あったら加速するだけ、といった考え方の癖があるのかな?とも考えます。だからこそ告白後の渡直人の迷いを理解し受け入れることもできなかったのかな?とも思われます。

②自分に興味のない相手を恋愛の対象としたことの代価

そもそも石原紫が渡直人に恋愛感情を抱いたきっかけは、彼が着替え中の石原紫に遭遇しても、一切興味を抱かなかったことにあります。おそらく、石原紫は、常に周囲の男子からの好意の対象になっており、そのため、自分に興味を抱く男子には興味を抱かないという考えになってしまっていたのでしょう。そのため、そうでない渡直人は普通の男子とは違うと興味を抱いてしまったのでしょう。恋愛の始まりがそうであるからこそ、関係が深まったとしても、常に自分に興味を抱いているかなどを確認しなければならないのかな?と思います。渡直人に対して事あるごとに館花紗月との関係を問うのもその不安から来ているのかもしれませんし、関係を深めることに性急であるのも、自分は本来は興味を抱かれない相手であるという焦りに由来するものなのかもしれません。


以上、第4巻における石原紫の言動に関する考察になります。


最後まで読んで頂きありがとうございました。