渡直人の館花紗月に対する言動は、基本的に高圧的です。巻を経るに従って拒否的な反応こそ減りはしていますが、ぶっきらぼうな態度で接するというスタンスは基本的に変わりありません。


↓リンク先↓↓

「渡くんの××が崩壊寸前」作品紹介

考察項目・計画

しかしながら、時折、館花紗月に対して好意的な言動を取る場合もあります。

「館花紗月への好意的な言動」においては、渡直人の館花紗月に対する好意的な言動に関し、事例を抽出し、その傾向や要因等について考察したいと思います。事例が多く、また考察の要もあるため、前編・中編・後編に分けて投稿します。

今回は前編ということで、4巻半ばまでの事例の列挙及び個別的な考察を行います。

5.28:更新


好意的な言動の列挙及び個別的な考察

青字が作中の事例赤字が個別的な考察になります。


1巻第3話にて、石原紫とのホームセンターでの買い出しから帰ってきた渡直人を館花紗月が「直くん、お帰り」と出迎えた時、渡直人は一瞬、6年前の彼女が目の前にいるような錯覚を覚える。館花紗月から「デート楽しかった?」と聞かれ、何故か言い訳をし、「私も直くんとデートしたいな」と頰を赤らめながら言う館花紗月に顔を赤らめ汗を流しながら「はっ」とする。館花紗月が「なんてね」と茶化したため、自分を立て直し、「危ない、妙な感傷に引きずられるところだった。そうだ、もう紗月に何か言われても何されても、絶対踊らされるものか。もうあんな思いは二度とごめんだ。」と心の中で決意する。

(言い訳、そしてお誘い)

渡直人の館花紗月に対する基本的なスタンスが説明されています。この時、彼の心では館花紗月への好意が頭をもたげたのでしょう。また、「デート」の言い訳も館花紗月に嫌われたくないという感覚を心の奥底に抱いているためなのでしょう。しかし、6年前の辛い思いを繰り返したくないため、好意を力づくで封じ込めています。別の言い方をすると、こうして意識しないと、館花紗月への好意が膨らんでいってしまうということでしょう。


1巻第4話において、庭で館花紗月を押し倒しているのを渡多摩代に見られて強制退去を申し渡される。そのことについて、館花紗月を責めなかった。

好意的な行動か否かについては、このエピソードだけでは微妙ですが一応取り上げました。渡直人は館花紗月に色々と迷惑をかけられても、他人に対して館花紗月のことを悪く言うことはありません。この時点でも渡多摩代に館花紗月のせいだとは言っていませんし、館花紗月を責めてもいません。後に見られる配慮がこの時点からあったのかもしれません。


館花紗月から求められた状況ではあったが、渡多摩代の家で暮らすようになった経緯を彼女に打ち明ける。その後、館花紗月から渡多摩代と仲直りするためのアドバイスを受ける。

半ば無理やり館花紗月が打ち明けさせた状況ではありますが、彼女のアドバイスのお陰もあり、引き続き渡多摩代の家で暮らせるようになりました。以後、何か困ると渡直人が館花紗月に頼るシーンが見られますが、その契機になったのかもしれません。


引き続き渡多摩代の家で暮らせるようになった翌朝の登校途中、館花紗月に何かを聞こうとしたが、質問を止める。

多分ですが、6年前の好意の有無を聞こうとしたのではないでしょうか?6年前は果たして相思相愛であったのか?ということが気になっているのかと思われます。


2巻第1話において、渡直人に傘を貸したため、濡れて帰っていた館花紗月に自分の上着を着せ、そして送って帰った。

作中、渡直人が初めて館花紗月に明確に親切に振る舞ったシーンです。ただ、好意と言うよりは、自分に傘を貸したために館花紗月が濡れてしまったことへの埋め合わせといった意味合いが大きいと思われます。


館花紗月を部屋に送って行った後、彼女があっさりと別れを告げ部屋に入ろうとした時、意表を突かれたらしく「え」と言い、「帰んないの?」という館花紗月の問い掛けに対し、俯いて沈黙したままその場に留まる。

((多分)館花紗月に話を聞いてもらいたい渡直人)

雨に濡れていた館花紗月を見つけた時に、渡鈴白との間でトラブル(?)があったことを彼女に見抜かれていたため、それについて話をしたかったのだろうと思われます。渡直人としては、誰かに話を聞いてもらいたい状況だったでしょうし、館花紗月には「2」で話を聞いてもらった実績もあったため、頼りたいと思ったのでしょう。少しづつ信頼感が醸成つつあったものと思われます。この後、館花紗月の発言に反応して彼女に掴みかかり、そして荒い言葉を投げかけてしまいますが、これも一種の「甘え」なのではないのでしょうか。館花紗月は渡直人にとって、自分の感情の深い部分や弱さなどを露わにできる相手なのでしょう。


2巻第2話において、渡直人が風邪を引いてしまい、学校を休んで寝ていたところ、目が覚めたら館花紗月が布団に潜り込んでいた。何をし来た!?出て行けと文句を言うも、館花紗月が「ごめんね直くん、風邪ひいちゃったの私のせいだね」と言うと、焦ったような表情となって「!」となり、俯き加減で視線を館花紗月からずらし、なんか申し訳なさそうな表情で「別にそれは俺が勝手に」と答える。

一瞬でトーンダウンする渡直人)

渡直人は結構な剣幕で怒っていたようですが、館花紗月が申し訳なさそうな態度を示すと一瞬で大人しくなり、そしてモジモジした感じになってます。館花紗月が謝罪したり引いた態度を示すと、すぐに、ごめんなさい的な態度になる傾向が見て取れます。


石原紫が見舞いに来たが、館花紗月に帰れとは言わない。

石原紫との関係を深めるには館花紗月がいたら明らかに困る訳ですが、変なことするなと注意するに留まっています。仮にも見舞いに来てくれたので、理不尽な対応はできなかったのかもしれません。酷い扱いをする時はあるものの、一定の節度は弁えているのかもしれません。


2巻第4話にて、渡直人が徳井とラーメンを食べていると、いつの間にか館花紗月が渡直人の隣に座っており、2人の話に入ってくる。徳井から「直人の元カノか何か?」と問われ、渡直人とハモる感じで「ただの幼なじみ」と答える。渡直人は汗を何滴か垂らしつつ「」って感じで館花紗月のほうを見る。

(事前のネタ合わせの内容と違くない?的な)

渡直人の反応を見るに、館花紗月が彼との関係を「ただの幼なじみ」と言い切ったことに対して意表を突かれた可能性があります。彼女には幼なじみ以上の関係であると言ってもらい、それを渡直人が否定するという、一種の予定調和を想定していたのかもしれません。


10 2巻第5話において、石原紫と試験後に遊ぶ約束の話をしている最中であるにも関わらず、館花紗月のスカートが風でめくれるのを防ぐために後ろから抱き着く。

寝不足でボーっとしていたり、館花紗月の服を濡らしてしまった責任を感じていたこともあったのかもしれませんが、館花紗月がピンチ的な状況になると、つい思わず彼女を守るために行動してしまうのでしょう。しかも、石原紫からデートを提案され喜びに打ち震えている時に、です。


11 2巻第5話において、水着を買いに行った時、渡鈴白と間違って館花紗月の試着スペースを覗いてしまう。試着スペースを出、無言で歩み去ろうとする館花紗月に謝りながら彼女の腕を掴んだところ、館花紗月は恥ずかしそうに赤面しており、渡直人も赤面する。モヤモヤした感じを抱き、なんだこれ?となる。

(恥じらう館花紗月、動揺する渡直人)

館花紗月が動揺している作中でも珍しいシーンです。渡直人としては館花紗月の見たことのない表情に動揺もしたのでしょう。モヤモヤとは照れなのでしょうか。この後、電車の中でも最初のうちは顔を赤らめています。


12 2巻第6話において、電車の中で館花紗月から、「直くんってさ、全部私が悪いって周りの人には言わないんだね。」などと言われ、それに対し「別にそれはオレらの問題だし」と答える。

渡直人としては、いかに館花紗月のせいで石原紫との関係が進展しないなど迷惑を被ろうとも、館花紗月を悪く言うことはしたくないのでしょう。また、この時は館花紗月がいつになく落ち込んだ様子でもあったのでフォローの意図もあったのでしょう。


13 3巻第1話において、ナンパしてきたヤバそうな男性とやりあっている館花紗月を連れ去る。

同級生が「ヤバそう」と言っている相手から館花紗月を救出しています。館花紗月がピンチ的な状況になると思わず行動してしまうのでしょう。


14 海に入ったことがないという館花紗月に対し、石原紫との買い出しから戻ったら一緒に海に入ってやると言う。

(渡直人の誘い、喜ぶ館花紗月)

幼なじみと言いつつも、実は館花紗月のことを何も知らないという事実に愕然としたのでしょうし、海に一度も入ったことがないという彼女の境遇に何か思うところがあったのかもしれないし、一種の申し訳なさも感じたのかもしれません。


15 3巻第2話において、クラスメイトが館花紗月を軽い女呼ばわりしていたため、それに猛然と反論、皆、呆気に取られる。反論したあと、はっと我に返る。

(渡直人の反論、呆気に取られる同級生)

館花紗月を悪く言われることは我慢ならないのでしょう。しかも考えてとかでなく、我を忘れての発言です。館花紗月のことになると無我夢中になってしまう傾向が段々と明らかになってきてます。


16 3巻第3話において、昔と比べて日和っちゃったねとからかう館花紗月に対し、「半分はお前のせいでもあるんだからな」、「勘違い拗らせて痛い目見んのはもう懲り懲りなんだよ」と答え、館花紗月に「直くん、それって、前は、私のこと」と質問されかける。

この時は好意的な態度って訳ではありませんが、以前の好意をついつい暴露してしまいました。


17 3巻第4話において、藤岡先輩と別れた後、行方が分からなくなっていた石原紫の居場所が判明し、徳井に迎えに行くよう言われるものの、不安になり、つい館花紗月のほうを見て、一緒に来て欲しい素振りをする。

不安になったため、館花紗月を頼りました。困ったらついつい頼ってしまう訳であり、何だかんだ言って信頼しているのしょう。


18 3巻第6話において、夕食を食べてなかったと館花紗月に買ってきたおにぎりを渡し、一緒に食べる。

ごく自然に親切にしています。一度は断る館花紗月に対し、「ただでさえ細っこいのに」などと気遣う言葉もかけています。


19 3巻ラストでの言動などに関し、「何考えているのかハッキリせてやる」と考え、4巻第2話において、館花紗月の部屋の前で、まず「何で朝来なかったんだよ?」と問うも、館花紗月の怒ったような態度に気圧され、すぐにしどろもどろになる。

直接的に好意を表す言動ではありませんが、2人の関係性を表す好例でもありますので取り上げました。強く出ようと思っていても、館花紗月が不機嫌な態度を示すと、すぐにビビって弱気になり、最初の勢いは消失します。そしてその後は完全に館花紗月のペースになります。1巻第2話などでも見られる状況です。


20 館花紗月がキスの話をし、そして、落ち込んだ様子で「私のこと嫌なヤツだと思ってるのに」、「ずっと」と発言したことに対して渡直人は非常に驚いて「!」となり(黒目もやや小さくなってるので相当に衝撃を受けています)、館花紗月が畑荒しをしたことには怒っていないこと、彼女が突然に姿を消してしまい会えなくなったことが嫌だったこと、そのことを6年間ずっと引きずり続けていたことを述べる。

(落ち込む館花紗月、慌ててフォローする渡直人)

館花紗月が見る影もなく落ち込んでいる様を目の当たりにしてしまい、また、渡直人が館花紗月を嫌なヤツだと思っているとの誤解を与えてしまっていることに、半ば反射的に反応してしまったのでしょう。今までの畑荒し呼ばわり路線をいきなり放棄しましたし、6年前には好意を抱いていたこと、そして6年間ずっと館花紗月のことが脳裏から離れていなかったことも告白しています。まさに大サービスです。館花紗月が落ち込んでいるのを目の当たりにするのは渡直人として耐えられないのかもしれませんし、自分が館花紗月に良くない感情を抱いてるなんて絶対に思って欲しくないのかもしれません。


21 4巻第2話において、館花紗月が徳井と一緒に話しながら登校してきたのを目撃して挙動不審となり、しかも石原紫の呼びかけ(告白しようとしている)も全く耳に入らず、落ち込んだ様子で足早にその場を去って行く。

朝に喧嘩別れした状況ではありますが、館花紗月が他の男子と普通に接しているだけでこの狼狽振りです。館花紗月のことで頭が一杯になってしまったため、石原紫の呼びかけも耳に入らなかったのでしょう。嫉妬じみた感情もあったのでしょうし、また、館花紗月の「もう関わらない」宣言が余程応えてもいたのでしょう。


以上、前半部分の事例の列挙及び個別的な考察でした。

好意的な言動の事例は意外と多く、アメブロの文字制限に達する可能性が高いため、前編・後編に分けて投稿させて頂きます。ご理解の程、よろしくお願いします。


最後まで読んで頂きありがとうございました。