ノリちゃんの家は、以前、私が母と暮らしていた時と同じように、昼間はお母さんが仕事に行っていて、夕方に帰り、ノリちゃんと一緒に夕食を済ますと、お母さんは、また夜の仕事に出て行くという生活でした。
ノリちゃんのお母さんは、大人っぽい顔の私の母と違って、童顔で快活な女子校生のようなかわいい人で、僕も初めて会った時にはノリちゃんのお姉さんと間違えて「お姉さん」と呼んだら、
「まあハルちゃん、いい子ねぇ」と喜ばせてしまいました。
その高校生のお姉さんのようなノリちゃんのお母さんが、夜の仕事に出るためにお化粧をした顔は、無理に大人の真似をした娼婦みたいで、痛々しく、妖しい女の顔になっていたことを覚えています。
その冬はノリちゃんの家で毎日のように遊んでいましたが、水曜日だけは、お母さんが家を使うので外で遊ぶように言われていて、一緒に外で話したり駄菓子屋さんに行ったりしていました。
当時駄菓子屋には、あてくじや駄菓子と一緒にウルトラマンやマグマ大使に出てくる怪獣の写真が紙袋に入って売ってました。
プロマイドのようなものですが、紙袋を破らないと中身が見えず、レッドキングやバルタン星人など人気がある怪獣やウルトラマンや、ウルトラ警備隊のダン隊員が出れば当たりのようなもの。
その他のアンヌ隊員やモルなどが出ることもありましたが、それが出ると男子友達の前では、
「ちぇっ、ハズレだよ」
と言いながら、持ち帰って一人楽しんだものでした。
ノリちゃんの家には怪獣の写真はあまりなく、アンヌ隊員やフジ隊員、キャプテンウルトラのアカネ隊員、マグマ大使のモル、サンダーバードのペネロープなど、女性隊員やヒロインの写真ばかりが段ボールの箱にいっぱい入れて持っていました。
「ハルちゃんは誰が好き?」
ノリちゃんは私の事を名字ではなく名前にちゃんを付けで呼びます。
「モル・・・かな?」
他の友達に、ガムの母親役の「モルが好きだ」等と言うのはかなり恥ずかしいものでしたが、ノリちゃんには本当の事を話せるような気がしていたのです。
「僕もモルいいよなぁ、綺麗だよね」
ノリちゃんもそう言ってくれて、何枚かのモルの写真を探して一緒に見ました。
「これは人間モドキにされたときのもの」
「これは宇宙植物ネスギラスにつかまった時の写真」
モルだけでも数種類あること自体知りませんでしたし、その他アンヌ隊員やアカネ隊員の写真もあるわけで、一枚50円としてもいくらお金がかかっているのか、それに感心してしまいました。
それからノリちゃんは怪獣映画のプログラムもたくさん持っていました。「モスラ」「キングコング対ゴジラ」「フランケンシュタイン対地底怪獣バラゴン」どれも当時放映されていた映画でしたが、僕はお金が無くて観に行くことが出来なかったものばかりです。
ノリちゃんは、みんなお母さんと観に行って、プログラムを買ってもらったのだそうです。
ノリちゃんは、そんなプログラムの中から「怪獣大戦争」という映画のものを取り出して、中に載っているX星人の写真を示して、
「これ、ハルちゃんの母ちゃんに似てるだろう?」と言います。
それは水野久美という女優さんで、怪獣大戦争以外にも「サンダ対ガイラ」「マタンゴ」などにも出ています。
どれも真っ赤な口紅と青いアイシャドウの化粧をした、大人の女性の魅力あふれる役でしたが、その中でもX星人の役は身体のラインが分かる銀色のスーツとオカッパの髪でとても綺麗で、「マタンゴ」に出てくる写真は男を誘っているような妖しいものでした。
この女優さんが私の母親に似ていると言われれば、確かに似ているかもしれません。
当時でも記憶の片隅にあった、夜の仕事に出る前の濃い化粧をした母の顔です。
そして誰か知らないお客さんに抱きしめられ、無理やりキスさせられながらも、拒否できないでいた、あの夜の母と、マタンゴの水野久美さんの写真が重なって悶々としてしまいました。
「似てないよ、母ちゃんはもっとブスだし」
私は考えを振り切るように言って、プログラムの解説やあらすじの部分を読み始めましたが、ノリちゃんは「そうかなぁ」と言って、ひとりで「マタンゴ」や「怪獣大戦争」の水野久美さんの写真を比べる様に見入っていました。
私はしばらくそのままプログラムを読んでいて、少ししてノリちゃんの方を見ると、ノリちゃんはまだ水野久美さんの写真を見ながら、ズボンの中に手を突っ込んでもぞもぞと何かを弄っています。
「ノリちゃん、何してんのよ?」
私は笑いながら言ったのですが、ノリちゃんは僕の言葉など聞こえない様子で、恍惚の表情で水野久美さんの写真をじっと見て、ズボンの中で自分のチ●コを弄っています。
「ノリちゃん、ノリちゃんってば、汚いよ」
僕が大きな声で言うと、我に返ったように気が付いて、
「あっ、ごめん、別に汚くないけどな、自分のだし」
と言います。
「汚いよ、おしっこが出るところじゃん、汚いよ。」
と僕が言い返すと、
「おしっこも出るけど、チ●コは、女の人のケツの穴に入れて、その女を悦ばすんだって、
女をいい気持にすると、その女は男の奴隷になっちゃうんだって、母ちゃん言ってたぞ」
「何それ、ノリちゃん変なこと言わないでよ。やっぱり汚いよ」
私は否定しましたが、女を悦ばして女を自分の言うことを聞く奴隷にするという言葉にショックをうけました。
それって怪獣ドラマの女性隊員が催眠術で悪の軍団の味方になるのと同じことか?と、頭の中がぐるぐると回転していました。
あの日、母がお客さんのキスを拒否できなかったのもそういう催眠術に掛けられていたのかもしれない、
お母さんはお客さんに抱かれ、
「いやっ、だめ」と言いながら、身体は全然拒絶していなかったんじゃないか、
すでに、男の人に催眠術を掛けられていたのではないか?
あの時の青いアイシャドウと紅色の口紅でお化粧した、美しい母の顔が思い浮かびます。
そして、お母さんの白いお尻に、あの大きくて強い男のチ●コを挿れられて、いい気持ちになって、あの大きくて強い男の奴隷や所有物になってしまったのではないか、考えたくない事でしたが、もし本当にそんな風になっていたらどうしよう。
私はガタガタと震えるほど不安になると同時に、自分もそんなふうに強い男に催眠術をかけられ、男の奴隷になりたいと思ったものでした。
「うちの母ちゃんなんか、、毎週お客さんにヤられてるぞ、見てみるか?」
ノリちゃんは、とんでもない提案を言ってきました。
「えぇ、見ちゃあダメだって言われてるんだろ、お母さんに叱られるよ。」
僕は、口では拒否しましたが、お姉さんのように若くて無垢に見える、ノリちゃんのお母さんが、男の人に催眠術を掛けられ、お尻にチ●コを挿れられて、その男の人の奴隷になってしまうことを想像すると、母とは違う意味で興奮しました。
ノリちゃんは、お母さんにはバレないように見える場所がある、ということで、次の水曜日に、私もしぶしぶ就いてゆくことになったのです。