8月2日(金) オフ

 

 

 

泥のように寝た。

布団に入って目を瞑るやいなやの就寝だったはず。

 

完全に体の電源が切れていた私は、朝5時に足が攣った痛みで目が覚めるまでの6時間ほどの睡眠が、わずか一瞬の出来事のように感じた。

 

長い時間攣った足の鈍痛は、なかなか回復しない。

水を飲んでも、伸ばしても、さすって温めても。

仕方がないので言い聞かせる。

言い聞かせる、とは我流だが【ただ歩く】だけ。

いたって普通に歩く。

そうすることで、足に「今は平常時だ」と言い聞かせる。

重い負荷もないのだから、攣る理由などはどこにも無いだろう?と足を宥める。

 

夜明けらしい空を見上げつつ、タバコを燻らしながら外へ出て散歩のように歩く。

すると、歩くごとに攣った箇所の強張りが緩やかになっていく。

さまざまな負荷をかけられて悪夢を見ていた足が、安心して緩んでいく。

そして何事もなかったかのように治まっていく。

 

これは足が攣って飛び起きた時の、いつものルーチンだ。

 

 

◇◇

 

 

思わぬ早起きを、普段なら楽しむこともある。

しかし、今日はもう少し回復の為の睡眠が欲しい。

まだ早朝と言って良い時間だったので、もう一度布団へ戻った。

 

それから3時間後。

 

どうやら本体の私まで悪夢を見たようだ。

2度寝は浅い眠りだったようで、内容はすっかり忘れたがずっと夢を見ていたのはわかっている。

どうにもならない事柄が次々に押し寄せる、そんな心境になる夢だった。

目覚めてから夢だと気付いて安心する、というやつだ。

 

 

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今日はオフ。

 

猛暑の中での配達がないというだけで、どれだけホッとしているのか。

最近は、「暑い暑い」 「重い重い」 とグチをこぼすばかり。

昔の自分はこんなにも精神的にヤワだったかな?と感じないでもない。

 

そして何よりイラついている事が多い。

減車が実行されて、ついに以前の3分の一に配達員が減ったというのもある。

その影響は言わずもがな。

そこに猛暑が追い打ちをかけてくる。

 

どうやら私だけではなく、マツヤマも産廃業者と路上で揉めて警察を呼ぶ事態になったと言っていた。

そこらじゅうでイライラが渦を巻いている。

人の話を聞くと自分は冷静になったりもするが、私も苛立ちが外へ出てしまう事はある。

 

配達エリアでは、様々な邪魔というか障害がある。

ヨロヨロと車道にハミ出す高齢者の自転車、世代に限らず横暴に飛び出す歩行者。

殺気立って走るトラックやミニバンに、左側の死角から猛スピードで抜いていく原付バイクや電動自転車。

スマホを見ながらよそ見をして走るフードデリバリーなど、挙げればキリがない。

 

 

時には目の前にいるデカいヤツに、思わず文句を言っていたりする。

 

 

偉そうに突っ立ってんじゃねえよ

どけ、このやろう

 

 

 

 

 

 

まだ8月になったばかりだというのに。

 

たとえ倒れても「こんなものなんでもねぇ」と起き上がるような、私はそういう男だった気がするが気のせいか。

腰痛が悪化して救急車で病院に担ぎ込まれた夜も、翌朝の仕事に行けるように「痛みだけでも消してくれ」と医師に懇願した熱量はどこへやら。

 

もちろん嫌だという思いが仕事で大変だからというだけではない。

この配達の仕事というか業界の、これを構成する要素の中で【物事を決定する立場にいる一部の心無い者】に対する忌避感が感情的に頂点に達する。

 

部屋に一人で無音で佇むと、思うことはいろいろある。

そしてあまり良い思考ではない。

なまじ時間があるとアホなことを考えてしまうという典型。

犯罪を含め、世の中の騒動を起こすアホな輩の大多数は【ヒマ人】なのだと実感する。

 

そんなことを考えたり、熱ダレ気味の私の頭の中は国のシステムや法律のことから今日食べるメシのことまで、ゴチャゴチャにとっ散らかっている。

 

 

――――― 脳内アナウンスです

 

 

深呼吸をして落ち着きましょう。

まずは、カーテンを開けてお布団でも干しましょうか。

いつも常温のコーヒーに、今日は氷も入れちゃいましょうか。

 

 

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サーモスタットが不調になっている配達車両に必要な部品は1万円と少しかかるそうだ。

工賃を入れても3万円ほど用意しておけば足りるだろう、ということで発注済み。

来週のオフには交換が完了する。

修理工場は長い盆休があるので、その前に修理が完了することは僥倖。

夏の車両トラブルは本当にご免だ。

 

今日は出かける用事が今のところ、無い。

買い物は済んでいるし、路面販売のひしゃげた変なキュウリも安かったので買った。

塩漬けでポリポリやろうと思って、今は冷蔵庫で冷やしてある。

 

 

ならば今日も家事を頑張るのみ。

 

複数回に分けて回す洗濯機。

敷布団はフカフカになったし、風呂掃除もツルツルになるまでこすり洗いした。

加齢臭が気になる枕も洗ったら容積が増えた。

暗くなる前には完全に乾くだろう。

トイレにもさぼリングなど作らせはしない。

 

生存確認のための、両親への連絡も済んでいる。

相変わらず私の心配ばかりしていたが、大丈夫であることは伝わっているのでヨシとする。

 

 

 

あとはギターか食事か晩酌か。

楽しいことはいくらでもある。

その場しのぎでもなんでもいい。

この夏を乗り切る精神と体力の回復のため、だ。

今日の休みは今日しかないのだ。

 

先日弾いたT.REXをもう一度やろう。

ジャキジャキに弾きまくるのだ。

指が痛くなるまで。

 

そうしたら腹が減って、食事がきっと美味いはずだ。

 

 

 

 

 

 

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【前の日の残り】というものは便利だ。

作り置きともまた違った扱いになるものの、1品作る手間が省ける。

 

ひとつひとつは簡単なものでも、皿がたくさん並ぶと嬉しくなる。

 

【ワサビ漬け、納豆、生卵、冷奴、サラダ、煮物】

 

 

2連勤だろうが3連勤だろうが、疲れるものは疲れる。

そして、疲れると欲しくなる食べ物の一つにニンニクがある。

 

まるまる一つ、全部を使って揚げ焼きにしたあと鶏肉とネギを入れた。

味付けは塩コショウと醤油だけのシンプルなもので、ニンニクを存分に味わう。

 

【ニンニクと鶏肉のネギ炒め、薬味乗せサラダチキンにポン酢かけ】

 

 

 

 

生ハムあれば、結構幸せ。

 

何かに乗せても良し、マヨをちょいと付けてそのままで良し、ビジュアルもなんだか上がる気がする使える奴だ。

ただ、メロンに乗せようと思ったことは一度もない。

 

 

【生ハムとレタス乗せトースト】

 

 

◇◇

 

 

自炊に反し、昼間はほとんどコンビニフードばかりだ。

 

カロリーはあっても栄養価は低いものが多い。

美味しいものが多いが味はまた別の問題だ。

腹は膨れてもカラダ作りにはあまり良いとは言えないだろう。

おにぎりだって得体のしれない油が使われていることがわかったし、手っ取り早くカップ麺など食べたりもしている。

きちんと選べばそんなこともない食べ物はあるのだろうが、正直じっくりと選ぶ余裕と知識がない。

 

なので休みの日くらいは、せめて自炊でちゃんとしたものを食べたい。

そう考える。

 

 

◇◇

 

 

オフの時間は早いもので、すでに夕方だ。

 

今は晩酌用の煮込みを作っている。

野菜を余らさずに使い切るためには、煮込みは非常に都合が良い。

 

前回のオフも煮込みを作って過ごしていた気がするが構わない。

今回は味噌煮込みだ。

しかもナメコが入った特製だ。

 

見た目はどうであれ、前回とは味わいが別物だと思って良い。

 

それを肴に飲み飲み、3連勤前の夜が更けていけばいい。

 

夏は暑さにクダ巻いて、休みにガス抜きをする。

そんな日々でいいじゃないか。