「Natural」は、2003年3月5日に15枚目のシングルとして発売された「 Time after time ~花舞う街で~」のカップリング曲として収録されています。 

その後、アルバム収録はなく目立たない楽曲かもしれませんが、自分の内面を語った歌詞が印象的な佳曲だと思います。


歌詞リンク 



「誰にも好かれようと思っていたのが 
間違いだったかも知れない 
Ah 「イイ子でいよう」 なんて 
やっぱり私は私でしかいられない 
そう気付く Don't you know 」

一見、若者たちが人付き合いで陥りそうなジレンマのようにもとれるのですが、自身の音楽活動についてこれまでどうだったか、そしてこれからどうしたいか、というのがストレートに語られているんじゃないでしょうか。 

歌手を生業にする以上、どうしても付きまとうのが商業的なプレッシャーですよね。 

当時まだ二十歳そこそこの女性にとって、それはとても厳しいものだったというのは想像に難くありません。 

倉木麻衣の場合、デビュー戦略がバチッとはまり、一躍時の人となりました。 

そこから常にヒット作を求められる日々…。 

ここの歌詞にあるように、必死に期待に応えようとしていたのでしょう。 

でもそれは少し自分のやりたい表現、なりたい姿ではないんじゃないか。 

『倉木麻衣』というある種のコンテンツの中にある、歌手としての自我がより強くなり始めた時期かもしれませんね。 

ここからセルフプロデュースの道を辿って行くわけですが、それはまだ先の話…


「認めてくれるあなたがいれば
それだけで十分 
人生の中で落ち込む事 
たくさんあるけど 
Never give up! 」 

やりたい音楽をやって、それが心に届く人が一人でもいれば…どんな困難も大丈夫…あきらめない! 

デビューから20年以上経った今この歌詞を読むと、本当に信じてやってきたんだなぁと感じることができ、尊敬の念しかありません。 

「人生」という歌詞には、『音楽活動』の意味が込められているように感じてなりません。 

作詞した当時、本人が意識していたかというと違うかもしれませんが…。


「不安に心を支配されそうな時
目を閉じて 明日を待とう
それも通り雨のように
いつか過ぎ去っていく
そして 強く ナチュラルに」 

そして、胸が締め付けられるようなサビの歌詞です。 

繰り返す不安から得た処世術でしょうか。 

積極的な解決策ではありません。 

じっと耐えて「過ぎ去っていく」のを待つわけですから。 

それでも、様々な評価の嵐を耐え抜いた後には、自分らしく立っていられる。 

そう信じて言い聞かせているような、まだ弱々しい、不安一杯の顔が見えます。


「誰もが指さしてる あの子は誰なの?と
それでも戻るわけにはいかない
Ah 「私はここ」にいるの!!
かけがえのない存在でいれるようにと
そう思う Don't you know 」

この当時、「あの子は誰なの?」と倉木麻衣を見て思う人はそうそういなかったはず。 

それは本人にも自覚はあったと思います。 

それでもこういった歌詞が出てくるのは、『今の私は作られたもの』といった気持ちがあったのではないでしょうか。 

そんな自分に、自ら「誰なの?」と自問自答しているように感じます。 

それでも、歌い続けることで「かけがえのない存在」になれるよう決意をしているんです。 

Bメロの歌詞もあわせて、この部分の歌詞もとてもパワーがこもっていますね…。


「すべてが崩れ落ちるその時 過去の自分を
抱き締めて 「サヨナラを言う」
揺るぐことのない気持ちに
変わっていけるように
だから 強く ナチュラルに」 

でも、当時の『作られた私』も否定しているわけではないんです。 

「すべてが崩れ落ちる時」とはネガティブな表現に感じますが、 

願いが叶って『自分らしさ』を手にいれたとき 

そう言っているんじゃないかと。 

何かを手に入れるために何かを失う 

そういう感じです。 

失うものが素晴らしいものだからこんな表現なんでしょうね。 

そして、ここの「サヨナラ」は限りなく『ありがとう』なんだと思います。 

自分の強い意思で変わっていこうとしている時、過去の自分に甘えたくない。 

自分のかけがえのないものに別れを告げて、誰かの「かけがえのない存在」になりたい。 

そんな覚悟の表れです。 

変われた結果の自分が「ナチュラル」なんだと信じて。



どんな姿になりたいのか。
強い意思を感じる作品でした。 

自分にとって「ナチュラル」な状態が何なのか。 

試行錯誤しながら自分の音楽人生を歩んで行きます。

次回は、最新作「unconditional L♡VE」より 

「It's never over」 

を取り上げたいと思います。 

アルバム全体を通じてですが、私はここが倉木麻衣が到達した境地なんじゃないかな、と思うわけです。


歌:倉木麻衣
作詞:倉木麻衣
作曲:大野愛果
編曲:Cybersound