『心にしまってある秘密』とは何か?

これは、すでにオフィシャルに明らかにされていることですが、それでも歌詞からは色々な世界観が広がるのが本作の魅力ではないでしょうか。



「どんな 言葉に変えて
君に 伝えられるだろう
あれから いくつもの季節が
通り過ぎたけれど」

私は、この曲をラブソングとして見たいと思います。

「君」と「私」との物語です。

このような題材のとき、冒頭で二人の関係性が読み取れる歌詞が多いと思います。

この二人の歴史も長そうですね。

ここに出てくる「あれから」とは、『出会った時』ではなく、

『自分の気持に気づいた時』

でしょう。

長い時間をかけて形作られた感情…それに気づいてからさらに秘密を抱え続けているんですね。

今「私」が抱いている気持ちはズバリ『君が好き』だと思うのですが、そんな簡単な言葉では言い表せない(もったいない?)というような葛藤があるのか…躊躇いかもしれません。


「いつも 傍で笑ってる
私にも言えないことが まだ ひとつだけある」

近くにいるからなお苦しい心情が「傍で笑ってる」という正反対の歌詞からグイグイ伝わります。

そして秘密は「ひとつだけ」

どんなことでも話し合える『信頼関係』のある二人

そんな「私」の「ひとつだけ」は、私には『君が好き』以外思い浮かばないです…。


「Secret of my heart 疑ってもないね
いつだって少しの未来があれば
真実は 手に入れられるはず
I can't say もう少しだけ I'm waiting for a chance」

「疑ってもないね」には二つの目線があります。

『「君」は、「私」が「君」に恋していることなんて気づいてもいない』

そして

『「私」は、「私」が「君」に恋していることを確信している』

です。

もしかしたら、相手は自分のことを恋愛対象としては見ていないかもしれない…

自分の気持に素直になりたいけど、「君」との関係を大切に思うがあまり前へ進めないでいる…

この気持をコナンのEDでは蘭が歌うので、見ている側からすると『大丈夫だよ!両想いだよ!』ともどかしい気持になりますが、この一言から痛いほど「私」の気持ちもわかるわけです。


そして、続く歌詞に登場する「未来」と「真実」という言葉。

「未来」=『君と過ごす明日』
「真実」=『君の気持』

と言い換えることができると思うのですが、少し違和感がありませんか?

「真実」があるから「未来」がある…ではないんですね。

『今まで通り君と過ごしていれば、君の気持もわかるはず…』
だから、「今じゃない…もう少し待ってみよう」と。

少し、『弱さ』を感じるサビでした。


「こんな 穏やかな時間
もっと 繋がっていたい」

一番の『心の弱さ』から繋がる部分です。

このまま浸っていたいと感じさせる「君」との時間。

二番では、次第にその心境にも変化が見えてきます。


「全てを見せるのが 怖くて
少し離れて歩く
君の横顔がなぜか
壊れそうで 守りたい もっと近づきたいよ」

「君」の心が計れなくて弱気になっているくらいですから、怖がり、少し離れているのは「私」の方でしょう。

しかし、その自分の姿が「君」にも重なったのでしょうか。

それとは自覚していないにせよ、もしかしたら「君」も秘密を持っているのではないか…。

また、過去に何かの記事で、この部分は「幼少期の自分と母の姿を歌っているのではないか」と読んだ記憶があります。

そう考えると「君」が秘めているのは陰か…

自ら置いている物理的な距離から、「君」の心が俯瞰して見えたのか、「私」はハッとしたようです。

君の『弱さ』を守りたい…

均衡を保っていた心が徐々に動き出します。


「Secret of my heart 理解ってくれるよね
誰だって 逃げたい時もあるけど
それだけじゃ 何も始まらない
I can't say きっと必ず I'm calling for a chance」

一番とは打って変わって、自分に心の変化を促しているような歌詞ですね。

「私」の『弱さ』、「君」ならわかってくれるよね…不器用な接し方しかできないけど、逃げているだけじゃだめだ…と。

一番でも同じ「I can't say」が登場していますが、指すものは違って聞こえます。

最初は『好きだという気持』

ここでは『諦めの言葉』

ただただ受動的に待っていたチャンスを、自ら掴みにいくぐらい前向きな心に変化している「私」。

自分の心の内へ内へと向いていた考えが、「君」へとパッと向いたようです。


「Can I tell the truth?  その言葉言えず 空回りする唇に
Feeling in my heart 隠せない これ以上 'Cause I love you 
I will be with you  Wherever you are  Can you feel my heart ?」

ここは、大野愛果さんがセルフカバーした際の英語詞が、ちょっと違ったニュアンスを与えてくれます。

「言葉なんてちっとも心に浮かばない…唇からこぼれて雲の上へ逃げていってしまう」

これはもう経験値でしょうか…笑

伝えたい、伝えようとはしているけれど、でも言葉が出ないんです。

口を開くと、「君」に届く前にどこかへ消えてしまうんです。

親しい「君」だけど、どこか遠くに感じる部分もある。

その距離を埋めるには、「私」の言葉は弱々しい。

この気持を伝えるのは言葉じゃないのかもしれない。

「君がどこにいようと、私は一緒だよ」

「君はどこにいても、私の気持、感じてくれる?」

と、このCメロ部分には、自分の気持への強い確信と、君への包み隠さない愛情が表現されています。


「Can't you see, you're my dream 失いたくないよ
大切な 君と過ごすこの時間
あきらめる位なら 信じて
I just wanna say もう迷わない」

「Can't you see, you're my heart どんな作り物も
簡単に壊れてしまう 日が来る
だけどまだ いつまでも変わらない
Secret of my heart  Our future is forever」

そして最後の大サビでは、自分なりの答えが。

ここでははっきりと「君との時間を失いたくない」と書かれていますが、そこから続くのは「君を信じて、もう迷わない」です。

かつての心の弱さは薄らいだように感じます。

ここで気になるのが「どんな作り物も」という歌詞。

高校生年代の恋愛における相手への信頼って、今、歳をとってから思うと結構脆いものだったな(もちろん例外もありますね)と思うのですが、それを当時の倉木麻衣が感じていたかはわかりません。

でも、もし同じ意味でこの曲での二人の関係性を「作り物」と言い放っているのだとしたら、それはすごいことだな、と思うわけです。

ここへ来てすごい冷静、というか。

そうした上でたどり着いたのは最後の「Our future is forever」というフレーズ。

矛盾しているようですが、「私の秘密」の部分、つまり「君」を大切に想う芯を持っている今なら、どんな君との未来も受け入れられる…そう言っているのではないでしょうか。


この曲の中で、二人の物語に進展はありません。

「私」の『心の整理』に終始するのがこの曲だと思います。

はっきりとしたメッセージ性があるわけではないですが、心の幼さや不安定さを感じられる…そんな等身大の人間味を感じられる部分が、当時の私たちに刺さったのかな…。


デビューしたことを周囲の友達にも伝えることができないでいた、当時の気持も込められているといいます。

そういった背景も知ることで、ラブソングというテーマに色々とエッセンスが加わり、複雑で奥深い感情を感じとることができます。

自分の感情を、そして「君」を信じると言う結論に至った「私」。

この『信じる』と言う気持ちが、長い時を経てあの曲へ繋がるわけですね。

というわけで、次回は倉木麻衣の初提供作品、all at once の「JUST BELIEVE YOU」を取り上げたいと思います。
(もうOAは終わってしまうけど!笑)



※蛇足

こちらは2002年1月10日に発売されたUS逆輸入盤アルバムのジャケットです。

皆様よくご存じのピンクとスカイブルーが印象的なシングルジャケットとはまた違い、クールな印象ですね。

アレンジもそうだったかなーと気になって最近無性にこのアルバムが聴きたい次第です…。

ただ、実家に置いて社会に出てきてしまったため、またこのご時世なのでこのために帰省するわけにもいかず、もんもんと過ごしている今日この頃です…。

こんなところにもコロナ禍の影響が…違うか。

早く元の生活に戻れますように。


※蛇足②笑

皆さんはコナンのテーマ曲投票はされていますか?


私はずっとSecret of my heart に投票しています♪

もうすぐ結果発表ですね!
楽しみ!


歌:倉木麻衣
作詞:倉木麻衣
作曲:大野愛果
編曲:Cybersound