01 梅雨
肩が重い、頭も重い、気まで重くなる。
リビングから見える空は「どんより」の4文字がよく似合う灰色の雲に覆われていた。
幸い、今日は仕事が休みだ。いつ雨が降り出してもおかしくないこの空の下に出なくて済む。
台所で水を一杯飲み干すと、もう一度寝室へと戻ることにした。
「こんな時は寝るにかぎる、と」
豪快にベッドに飛び込んだ。
若干古くなった愛用のベッドが少し、軋んだ音を立てる。
薄く開けた窓から、ほのかな雨のにおい。
しっとりとした空気と、独特のそのにおいはふと、中学生頃の自分を思い出させる。
濡れた廊下、湿気を含んだ机と椅子、うねる自分のくせ毛。
くせ毛を気にする私をからかう、男子。
けんか腰の自分。
「あれからもう、10年以上」
くふっ、と鼻を鳴らして笑った。
馬鹿みたいな毎日、楽しかったあの頃はいつの間にかいい思い出。
うねるくせ毛も今は、ストレートになってきちんとおさまっている。
中学生の頃、肩の痛みや頭痛とも無縁だった。
あの頃の痛みはもっぱら恋愛絡みで、人並みに可愛い中学生だったと思う。
自分をからかったアイツとは、もう中学卒業以来一度も会っていないし連絡も取っていない。
元気にしてるのだろうか?
『相合い傘でもしてくか?』
懐かしい声が頭に響いて目が覚めた。
いつの間にか眠っていたらしく、頭が少しぼうっとする。
窓からしとしと雨音が聞こえてきて、もう一度目を閉じて耳を澄ませてその音を聴く。
体のだるさは不思議と楽になったようで、雨の音が心地よかった。
それにしても相合い傘なんて、漫画みたいな話だ。
あのときの自分もそう思ったし、今でもそう思う。
アイツはあの時傘のなかった私にニヤッと笑いながらそう言った。
『やだよ、友達と一緒に帰るもん』
『あっそ』
実はその時すごく嬉しくてたまらなくて
だけど、中学生の私には素直にありがとうと言えなくて
わざと素っ気ない振りをした。
アイツも笑って、かわいくねえ!なんて私に言ってた。本当だね。
あの時素直になれたら、どんな今があったんだろう?
ふと枕元にある携帯が光っているのに気づいた。新着メール1件。
送り主は中学の時から仲のいい女友達。
【○○中学 同窓会のお知らせ】
まるで、漫画だ。ひとり、声を出して笑った。
アイツは来るだろうか?
ほのかな期待を胸に、私は出席の旨を伝えるメールをすぐに送った。
いつの間にか雨音は小さくなり、青空がうっすらと見えている。
梅雨が明ける日はもう、近い。
◆「夏で10のお題 02」

