2007年3月26日に発生した市川市福栄における英国人女性殺人・死体遺棄事件(リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件)の犯人の市橋達也が書いた手記を何度か読みました。自宅に警察が訪れた直後に逃走し逮捕に至るまでの彼の行動や考えていたことなどが詳しく書かれています。彼は感受性や物事に対する執着心がとても強くそれが良い方向ではなく悪い方向に向いてしまった結果、殺人を犯して逃走するという最悪の事件に発展してしまったんだと感じます。

人は追いつめられることにより現実を変えるために行動を起こすことがあるが、彼は逃走生活の中でお金がないと生きていけないことから今まで一度も働いたことがなかったのだが、沖縄や大阪などで仕事をしている。犯罪を犯して追われるという極限状態で何度も整形を繰り返しながら、日本列島を転々とするという凄まじい行動力を見せている。なかでも印象的なのは沖縄のオーハ島に約三ヶ月間、潜伏していたことだ。食料を島に持ちこみ、岩場やコンクリートハウスの中で暮らしていました。

魚や貝を取るために釣りや海にもぐったり、蛇を捕まえては焼いて食べたりしていたそうです。台風の中で一夜を過ごした時はコンクリートハウスまで波が迫って来て怖い思いをしたと書かれています。そして、大阪の西成で仕事を探し、住み込みで土木や解体の仕事をしながら整形のための資金を貯めて少しでも通報や警察の可能性を感じ取ると姿を消していたと手記に書かれています。彼は麻酔なしで自分の鼻を縫い、唇を切断するという想像を絶する痛みよりも捕まる恐怖から逃れる選択をして、凄まじい行動力と忍耐力で2年7ヶ月に渡って逃走しました。

その力を犯罪を起こさずに社会で発揮していたら素晴らしい人生になっていたのだろうか?いや、切羽詰まった状態での行動であるので、普通に生活していたら仕事もせずに怠惰な人生を送っていた可能性は高い。その後、裁判で無期懲役が確定し、現在は刑務所で罪を償いながら生きているのだが、人の命を奪ってしまった代わりに自分の自由を奪われて終わりの見えない、いや、30年以上経っても仮釈放の可能性が極めて厳しい刑務所の中で一生自分の犯した罪と向き合いながら生き続けていかなくてはならない。

私たちもいつ犯罪者になるか分からない紙一重の状況にあるということを忘れてはならないのだ。