冷夏1993年。失われたあの夏を保存したフロッピーディスク。 | 春田蘭丸のブログ

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願わくは角のとれた石として億万年を過ごしたい。

 目を閉じて何かを待つ。
 何もしないで何かを待つ。
 待っている間に君は乾いた。
 唇もやがて荒れてささくれた。

 本当にそれで良かったのだろうか?
 世俗の関係を拒否して
 実質のない蜜を夜に舐め、
 絵空事の愛を夢見るばかり。
 
 今なお愛犬ジョニーを「ほら!」と呼ぶ、
 君の華奢な後ろ姿が忘れ難い。
 僕にもしも度量もっとあったならば、
 君の荒野を薔薇色に変えられただろうか?

 戯れの一夜の肉体関係をジョニーに恥じて、
 君が待つ王子は白馬どころかペガサスに乗る。
 だから僕の存在は一時の気の迷いと
 君のフロッピーディスクから即削除された。
 
 とどのつまり能動的情愛は人に向かわず、
 愛犬ジョニーの無垢な佇まいだけが君の慰み。
 束の間の僕への関心は「容量を大切に!」と
 冷夏の晩夏あっけなく忘却の闇に葬られた。