書き散らかせど読み返す機会もなく
封印の箱に仕舞われていた古い日記。
ふと気まぐれに取り出してページ開けば、
憐れ嘘っぱちが書かれていると知る。
名も知らぬ君との疑似恋愛が記されている。
はや三十年以上の歳月を経た古日記。
濃い殴り書きだった筈の文字も今は薄れて、
そこに込められた情念も焦燥も
今は胸中に残っていないと確認するばかり。
妄想に紡いだ君との淫ら秘め事にも疼かない。
既にセピア色のストーカーめく我が狂気。
そもそも言葉すら交わしたこともない君と
「価値観が違いすぎるから別れた」と
一体なにを思って書き残したか?
二十一歳の心は青春そんなに恋い焦がれたか?
価値観が違うと気づく以前の単なる覗き魔。
誰に読ませるつもりで気取り見栄を張ったか、
「どちらも悪くなく苦笑いで別れた」と
一体そんな青春どこにあったか?
三十年の歳月を経て真実ここで浮かぶ苦笑い。